幽霊の掟  岩城裕明『煉獄ふたり』
4062195445煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる (講談社BOX)
岩城 裕明 スオウ
講談社 2015-05-13

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 幽霊を主人公にしたファンタジーはままありますが、この作品ほど、物理世界に囚われた幽霊も少ないのではないでしょうか。岩城裕明『煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる』 (講談社BOX)は、幽霊の探偵コンビの活躍を描く連作短篇集ですが、幽霊や、彼らが属する世界が細かく設定されており、その設定が物語の重要な伏線にもなっているという、丁寧な作りの作品です。

 この世に未練を抱いて死んだ人間は、煉獄に幽霊となって残ります。幽霊たちは、それぞれ死ぬ直前に肉体から持ち込んだ「現世の欠片」と呼ばれる品物を持っています。それは指であったり、目玉であったりといろいろ。それらを使うことによって、一時的に現実世界に干渉できるのです。また「欠片」を集めれば幽霊は生き返ることができるという噂もありました。
 噂を信じる幽霊キリンは、コンビニに探偵事務所を開きます。霊を見ることのできる生者の友人イツキの協力も得ながら、連れの少年アオバを生き返らせるため、幽霊たちの問題を解決し、その代わりに「欠片」を集めようとするのですが…。

 各話の最初に、客観的な視点からの霊的事件が描写され、本篇ではそれが幽霊たちのどんな行動によるものかが解き明かされる…という体裁になっています。
 幽霊たちの人間くさい側面が描写される、ユーモアファンタジー的な味わいが強いのですが、煉獄や幽霊のルールが細かく設定されており、それが上手くストーリーを盛り上げていくのが面白いところ。
 例えば、煉獄は、幽霊にとっての世界であり、見た目は現実世界と変わりません。幽霊たちは、物理的なものを動かすことはできず、物質をすり抜けることもできません。部屋に閉じ込められれば、誰かが開けてくれるのを待っているしかないのです。
 現実世界に干渉できず、普通の人間には見えない幽霊たちが唯一、現実に影響を与えられるのは「欠片」と呼ばれるアイテム。それは幽霊たちによって様々なのですが、指であれば、それを使い人に触れることができ、目玉であれば、それを生きた人間にはめこむことにより、幽霊たちの姿を見せることができるのです。
 恨みを残して死んだ女の霊を演じる幽霊の劇団の話、いじめられている少女の「守護霊」になり、少女を助けようとする男の物語、トンネルと一体化し、他の霊を取り込む女の霊の話など、ひねったストーリーが多く楽しめます。
 話が進むにつれ、探偵キリンがなぜアオバを生き返らせようとするのか、霊を見ることのできるキリンの友人イツキが、なぜアオバだけ見ることができないのか、などの疑問も解消されていきます。伏線が綺麗に回収されていくので、読んでいて爽快感がありますね。
 どこかとぼけた味わいの中に、ハートウォーミングな展開もありと、読後感も非常によい作品です。

 同じ作者の『牛家』(角川ホラー文庫)や 『三丁目の地獄工場』(角川ホラー文庫)が非常に面白かったので、この作品にも手を出してみたのですが、期待にたがわぬ面白さで、ちょっと追いかけてみたい作家の一人になりました。
怪奇幻想読書倶楽部 第5回読書会 参加者募集です
 「怪奇幻想読書倶楽部 第5回読書会」を、下記の日程で開催します。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、連絡をいただきたいと思います。 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2017年3月19日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:1200円(予定)
テーマ
第1部:リドル・ストーリーと結末の定まらない物語
第2部:ブックガイドの誘惑

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※個人の発表やプレゼンなどはありません。話したい人が話してもらい、聴きたいだけの人は聴いているだけでも構いません。
※基本的には、オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも、安心して参加できると思います。

 第1部のテーマは「リドル・ストーリーと結末の定まらない物語」。リドル・ストーリーとは、作品中の謎が解かれないままに終わってしまう物語のこと。代表例としては、フランク・R・ストックトン『女か虎か』、クリーブランド・モフェット『謎のカード』、スタンリイ・エリン『決断の時』、芥川龍之介『藪の中』などがあげられます。
 今回は、狭義の「リドル・ストーリー」だけでなく、「結末の定まらない物語」として、結末が複数あったり、解釈が複数可能な物語についても、語り合いたいと思います。
 例えば、ミステリとも幻想小説とも解釈できる、ジョン・ディクスン・カー『火刑法廷』、あらかじめ2つの結末が用意された、フェルディナント・フォン・シーラッハ『テロ』、3通りの結末が選べるという、ジャンニ・ロダーリ『羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳』など。
 そもそも物語には一つだけの結末が必要なのか? そのあたりも含めて話し合えたらなと思います。

 第2部は「ブックガイドの誘惑」として、本好きなら必ずお世話になる、ブックガイドやリファレンスブックについて話したいと思います。ミステリなら、瀬戸川猛資『夜明けの睡魔』や小鷹信光『パパイラスの舟』、SFなら福島正美『SF入門』や石川喬司『SFの時代』、ホラーなら、風間賢二『ホラー小説大全』や尾之上浩二編『ホラー・ガイドブック』など。
 初心者の手引きとして、または玄人を唸らせるセレクションで、誰にでもお気に入りのブックガイドがあるはず。ミステリ、SF、ホラー、ジャンルは問いませんので、自分の愛読書になっているガイドを紹介してください。

※3月17日追記
第5回読書会の参加は締め切りとさせていただきたいと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

夢と眠りの物語 その3
●人生は夢
 夢が現実になる。または現実が夢になる。夢は、現実は同じぐらいの重みと意味を持っています。


400327251X人の世は夢/サラメアの村長 (岩波文庫 赤 725-1)
カルデロン 高橋 正武
岩波書店 1978-11-16

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ペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカ『人の世は夢』(高橋正武訳『人の世は夢・サラメアの村長』岩波文庫)
 占いで暴君になるとされた王子は、父王の命令で、生まれながらに幽閉されて育ちます。王は薬で王子を眠らせ、玉座に連れてこさせます。目を覚ました王子は自分がいつの間にか王になっていることを知り驚きますが…。
 自分の境遇が魔法のように切り替わるのを体験した王子が、人生が夢なのか現実なのかわからなくなるという、夢幻的な劇作品。



4488070752ハザール事典 男性版 (夢の狩人たちの物語) (創元ライブラリ)
ミロラド・パヴィチ 工藤 幸雄
東京創元社 2015-11-28

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ミロラド・パヴィチ『ハザール事典 夢の狩人たちの物語』(工藤幸雄訳 創元ライブラリ)
 歴史上から姿を消した謎の民族ハザール。彼らに関する事典の形をとった小説です。「夢の狩人」など、夢がところどころでテーマとなっています。



4003230434ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)
ホーソーン 坂下 昇
岩波書店 1993-07-16

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ナサニエル・ホーソーン『デーヴィッド・スワン あるファンタジー』(坂下昇訳『ホーソーン短篇小説集』岩波文庫収録)
 朗らかな青年デーヴィッド・スワンは、旅の途中に木陰で寝こんでしまいます。そこを通りかかった資産家夫妻は、青年の寝顔に惹かれ、財産をこの青年に引き継がせようと考えますが、青年が起きてこないため去っていってしまいます…。
 眠っている青年のそばを、様々な「夢」が通り過ぎていくという寓話。いろいろな運命の形を夢の中の話ではなく、現実の人々の形で描くという、独創的な発想の物語です。


エルクマン=シャトリアン『壜詰めの村長』(小林晋訳『怪奇幻想短編集』ROM叢書)
 ぱっとしない宿で口にしたワインに感銘を受けたヒッペルは、悪夢にうなされて目を覚まします。彼は夢の中で、とある村の村長だったというのです。強欲な村長が死ぬまでを体験したというヒッペルでしたが…
 夢の中で他人の人生を生きるという物語。村長の人物描写がリアルで読みごたえがあります。



B00IICOGPM能登怪異譚 (集英社文庫)
半村良
集英社 1993-07-25

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半村良『夢たまご』『能登怪異譚』集英社文庫収録)
 子供の頃、食べれば夢を見られるという「夢たまご」を食べた男は、大人になり再び「夢たまご」を見かけることになりますが…。
 人生のどこからどこまで夢なのか、わからなくなるというファンタスティックな掌編。


●死出の旅としての夢
 死の直前に見る夢から覚めることはできるのか? 目覚めなければそのまま死んでしまう。まさに眠り=死なのです。


430946405Xたんぽぽ娘 (河出文庫)
ロバート・F・ヤング 伊藤典夫
河出書房新社 2015-01-07

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ロバート・F・ヤング『河を下る旅』(伊藤典夫訳 伊藤典夫編『たんぽぽ娘』河出文庫収録)
 男は筏で河を下っているところに、女と出会い、彼女も一緒に河を下っていくことになります。旅の途中、彼らはここが現実の世界ではないことに気付きます。現実世界では、彼らは死へと近づきつつあったのです…。
 男女は、死の寸前で生きる希望を取り戻します。死の間際に見ている夢の中で展開されるラブストーリーです。



B00CXADV8Sスモーク [DVD]
ライアン・スミス
アルバトロス 2013-08-02

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ライアン・スミス監督『スモーク』(映画)
 看護師の女性は、バスの中で若い男性と意気投合しますが、直後に衝撃が襲い、意識を失います。目を覚ますと自宅のベッドに寝ていた女性は、出勤先の病院に向かいますが、なぜか病院内にも街の外にも、誰も人が見当たりません。街中で唯一出会えたのは、バスで知り合いになった男性でした。
 二人は、車で街の外に向かいますが、そこには黒い霧の壁があり、全く進めないのです。しかも霧は街を追い詰めるように少しづつ迫ってきており、完全に街を覆うまで、3日ほどしかないようなのです…。
 黒い霧がだんだんと迫る中、無人の街で、助けを探す男女二人。魅力的なシチュエーションの作品です。この世界が夢(精神世界?)であることは早々にわかってしまうのですが、それがわかってからも十分面白く観られます。過去の記憶やトラウマが、世界脱出のカギになったりと、丁寧に作られています。


●悪夢を見る人々
 現実の苦難に劣らぬ悪夢の数々が描かれます。


4150118051アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)
フィリップ・K・ディック 大森望
早川書房 2011-04-30

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フィリップ・K・ディック『凍った旅』(浅倉久志訳 大森望編『アジャストメント』ハヤカワ文庫SF収録)
 移民のため、恒星間宇宙船内で冷凍睡眠に入っていた男は、機械のトラブルにより目覚めてしまいます。目的地への到着まで、何年もの間、一人では正気を保つことができないと判断したコンピュータは、強制的に男に夢を見させようとしますが…。
 どんな夢も、最初は楽しいのですが、なぜかいつの間にか悪夢になってしまうという作品です。



B000J94V3Eこちらへいらっしゃい (1973年) (世界の短篇)
シャーリイ・ジャクスン 深町 真理子
早川書房 1973

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シャーリイ・ジャクスン『夜のバス』(深町眞理子訳『こちらへいらっしゃい』早川書房収録)
 家に帰るために、夜のバスに乗車した老婦人は眠り込んでしまいます。運転手に起こされ、あわてて下車した老婦人は、そこが自分の帰る町でないことに気付きますが…。
 見知らぬ町の見知らぬ人々、不条理な出来事が続く悪夢のような短篇作品です。



4828832319イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)
ウィリアム・ワイマーク ジェイコブズ 橋本 槙矩
福武書店 1991-12

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W・W・ジェイコブズ『人殺し』(宮尾洋史訳 橋本槇矩編『イギリス怪奇傑作集』福武文庫収録)
 諍いから、訪ねてきた友人を殺してしまった男は、自宅の庭に死体を埋めます。その直後から悪夢が始まりますが…。
 夢は自分の良心が見させているのか? 一見、超自然的な現象は起こらないのですが、味わいのある作品。



4488501087怪奇小説傑作集 3 【新版】 (創元推理文庫)
ラヴクラフト 橋本 福夫
東京創元社 2006-04-28

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ウィルキー・コリンズ『夢のなかの女』(平井呈一訳『怪奇小説傑作集3』創元推理文庫収録)
 ある宿で、夜中にナイフを持った女に襲われた男は狂乱状態になりますが、それは夢だったことがわかります。やがて男は、落ちぶれた女を見初めて妻に迎えますが、妻が夢の中の女とそっくりなことに気付きます…。
 夢の中で襲ってくる女、という恐怖度の高い短篇。第三者からの伝聞回想という構成もあり、女が超自然的な存在なのか、男の妄想なのか、どちらとも取れるような作りになっています。



4167309386ブルー・ワールド (文春文庫)
ロバート・R. マキャモン Robert R. McCammon
文藝春秋 1994-09

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ロバート・R・マキャモン『夜襲部隊』(小尾芙佐訳『ブルー・ワールド』文春文庫収録)
 ベトナム戦争の後遺症により、悪夢が現実化する力を持ってしまった男。意識を失った彼のまわりで、夜襲部隊が近づいてきますが…。
 一人の悪夢が周りの者を巻き込むという作品。『新トワイライトゾーン』で映像化もされています。



415041081X幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV)
仁賀 克雄
早川書房 2005-04-21

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シーリア・フレムリン『特殊才能』(秋津知子訳 仁賀克雄編『幻想と怪奇 おれの夢の女』ハヤカワ文庫NV収録)
 小説サークルに初めて現れた陰気な小男は、自分で書いたという自伝作品を読み始めます。作品自体は退屈だったものの、中に挟み込まれた悪夢の描写には異様な迫力がありました。
 その夢では、自分がだんだんと廊下の端にある揺りかごに近づいていくというのです。その揺りかごに入ってしまうと、何かの「顔」が見えてしまうと…。
 悪夢それ自体の迫力もさることながら、その悪夢が現実へと浸食していく様子が不気味です。夢を扱った怪奇小説としては、一、二を争う怖さを持った作品。



4309462634最後の夢の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ 中野 善夫
河出書房新社 2006-03-04

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ロード・ダンセイニ『悪夢』 (吉村満美子訳『最後の夢の物語』河出文庫収録)
 やり手の弁護士で知られる男は、ある夢を見たために寝込んでしまいます。その夢では、犯罪がこの先5年間全く起こらないことが予言されたというのですが…。
 夢のせいで仕事にあぶれてしまうと思い込み、絶望する男。ユーモアと皮肉にあふれた物語です。



4257620137魔の配剤―イギリス恐怖小説傑作選 (ソノラマ文庫―海外シリーズ)
オスカー・クック 熱田 遼子
朝日ソノラマ 1985-03

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アラン・ワイクス『悪夢』(熱田遼子訳 ハーバート・ヴァン・サール編『魔の配剤』ソノラマ文庫海外シリーズ収録)
 狂気に囚われた男が、悪夢の中で見る謎の男。信頼できる精神科医のもとで回復したかに見えますが、再び悪夢が始まり…。
 精神を病んだ男が主人公で、前編悪夢のような作品です。



4488523056ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)
H.P. ラヴクラフト 大滝 啓裕
東京創元社 1987-07-10

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H・P・ラヴクラフト『魔女の家の夢』(大瀧啓裕訳『ラヴクラフト全集5』創元推理文庫)
 かって魔術が行われていたと言われる家に下宿することになった男は、悪夢を見るようになります。夢には、老婆とそれに付き従う謎の生き物が現れますが…。
 ラヴクラフト作品の中では戦慄度の高い作品です。



488375233X塔の中の部屋 (ナイトランド叢書)
E・F・ベンスン 中野 善夫
書苑新社 2016-07-25

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E・F・ベンスン『塔の中の部屋』(中野善夫、圷香織、山田蘭、金子浩訳『塔の中の部屋』アトリエサード収録)
 主人公は、たびたび悪夢に悩まされていました。悪夢で見る「塔の中の部屋」を恐れ続けた主人公は、現実に悪夢通りの部屋に入ってしまうことになりますが…。
 悪夢が現実になるという、禍々しい雰囲気に満ちた怪奇小説。



4488547109黒いカクテル (創元推理文庫)
ジョナサン・キャロル 浅羽 莢子
東京創元社 2006-07-11

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ジョナサン・キャロル『卒業生』(浅羽莢子訳『黒いカクテル』創元推理文庫収録)
 愛する妻子を持ち、順風満帆な32歳のルイスは、今でも時折、みじめだった高校時代の夢を見ます。ただ、すぐに目が覚めることがわかっているので、安心感がありました。しかし、今回の夢は違います。いくら経っても目が覚めないのです。鏡に映った顔は、現在の32歳のルイスの顔。しかも周りの同級生たちは、それにも全く頓着しないのです…。
 大人になっても見る、子供時代の悪夢。誰でも覚えがあるような感覚をうまく小説化した作品。夢の中の世界が、現実とつながっているという暗示で終わる結末は効果的です。



4882930552赤い酒場 (ふしぎ文学館)
半村 良
出版芸術社 1993-05

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半村良『夢の底から来た男』『赤い酒場』出版芸術社収録)
 平凡なサラリーマンである加藤一郎は、妻子とともに幸福な生活を送っていましたが、ある時を境に、悪夢を見るようになります。それは両手を血まみれにした男がおぼろげにあらわれるというものでした…。
 次々と起こる不条理な出来事の原因は一体何なのか? 夢が重要な役目を果たすサイコ・スリラーです。



B009KZ5QYG目撃者は月 (光文社文庫)
都筑 道夫
光文社 2005-10-27

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都筑道夫『夢買い』『目撃者は月』光文社文庫収録)
 悪夢を見続けていた男は、友人である老人にその夢を売らないかともちかけられ、夢を売ることにします。翌日に老人は殺され、男は殺人の容疑者になってしまいますが…。
 ジョン・コリア『夢判断』をはじめ、夢に関する物語が多く言及されるなど、全編これ夢のオンパレードといった趣の幻想小説です。



4091921817神の左手悪魔の右手 (1) (小学館文庫)
楳図 かずお
小学館 1997-01

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楳図かずお『錆びたハサミ』『神の左手悪魔の右手』小学館文庫収録)
 主人公である少年想の姉が、錆びたハサミを拾ったことから、数十年前に起きた殺人鬼の悪夢に苦しめられます。姉の学校の新任教師が、その殺人鬼なのではないかと考える想でしたが…。
 夢の中で超常能力を発揮する少年想が活躍するシリーズの第一エピソード。予知夢など、どのエピソードでも夢が重要な役目を果たすのですが、とくに『錆びたハサミ』では、全編、夢が重要なテーマになっています。
 主人公が見ている悪夢の世界と、昏睡状態になった姉の体内とがつながるなど、作者の圧倒的な想像力が発揮されています。



B006QJSW4K夢の中の恐怖 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル 2012-05-09

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チャールズ・クライトンほか監督『夢の中の恐怖』(映画)
 家の修理を依頼された建築家クレイグは、ある屋敷に赴きます。中に案内されたクレイグは、数人の男女が居間に集まっているのを見て、呆然とします。なぜなら、彼らの顔は主を含め、クレイグが何度も見る悪夢に登場していた人物と同じだったからです。そのことを口にすると、皆は、おのおの体験したという、不思議な話を始めますが…。
 怪奇話を集めたホラーオムニバス映画。古いモノクロ映画ですが、今観てもなかなか面白い作品です。H・G・ウェルズとE・F・ベンスン原作作品のエピソードが含まれます。


●未来の夢
 はるか未来の社会を夢に見てみると…。あまり良い世界はないようです。



B007TAKL8K世界最終戦争の夢 ウェルズSF傑作集
H・G ウェルズ 阿部 知二
東京創元社 1970-12-18

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H・Gウェルズ『世界最終戦争の夢』(阿部知二訳『世界最終戦争の夢 ウェルズSF傑作集』創元SF文庫収録) ある男が、毎夜見るという近未来社会の夢。その世界で指導者的立場にあった彼は、恋人のために仕事を捨て逃亡します。その間に、祖国では戦争の危険が迫っていましたが…。
 夢の中で、一生を過ごしたという男の物語。戦争の描写がリアルです。



4022141239伊藤潤二傑作集9: 墓標の町 (朝日コミックス)
伊藤潤二
朝日新聞出版 2013-06-20

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伊藤潤二『長い夢』(朝日ソノラマほか)
 眠るたびに、徐々に夢が長くなっていく男性。やがて眠っている男性の体も夢の長さに応じて変化していきますが…。
 「長い夢」を見続ける男を描いた物語。夢の中身自体は直接描写しないところが技巧的。



4198601275ゆめのおはなし (BOOKS FOR CHILDREN)
クリス・ヴァン オールズバーグ Chris Van Allsburg
徳間書店 1994-06

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クリス・ヴァン・オールズバーグ『ゆめのおはなし』(さいごうようこ訳 徳間書店)
 ウォルターは、夢の中で未来に行きますが、そこは考えていた未来とは全く違う世界でした。理想社会どころか、荒涼とした世界だったのです…。
 ちょっとエコを考えさせるテーマの絵本です。


4309262317まさ夢いちじく (The Best 村上春樹の翻訳絵本集)
クリス・ヴァン・オールズバーグ Chris Van Allsburg
河出書房新社 1994-09-22

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クリス・ヴァン・オールズバーグ『まさ夢いちじく』(村上春樹訳 河出書房新社)
 冷血漢の歯科医が手に入れた「いちじく」は、現実が見た夢の通りになるという不思議な力を持つものでした。金持ちになる夢を見ようと考える男でしたが…。
 夢が正夢になるという魔法のいちじくをめぐる、ブラックな絵本。


●予知夢について
 将来の出来事を知らせる夢。しかし、それがわかっても予知夢の通りになってしまうことが多いようです。


415041081X幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV)
仁賀 克雄
早川書房 2005-04-21

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リチャード・マシスン『おれの夢の女』(秋津知子訳 仁賀克雄編『幻想と怪奇 おれの夢の女』ハヤカワ文庫NV収録)
 その女には予知夢を見る能力がありました。それに目を付けた男は、子供が危険な目に合うのを防ぐ代わりにと、母親に金銭を要求することを考えますが…。
 善人である能力者の女は、能力を悪用しようとする男をいさめようとしますが…。
 ユニークな「夢」の使い方をした作品です。


ステファニー・ケイ・ベンデル『死ぬ夢』(青海恵子訳『ミステリマガジン1986年10月号』早川書房収録)
 私立探偵のもとに現れた中年女性は、夫が自分を殺そうとしていると告白します。その理由は夢。過去の事例から、自分の予知夢が必ず当たることを確信する女性は、しかし夫も自分も心から愛し合っており、殺人を犯す理由が思い当たらないというのです…。
 動けば動くほど予知通りになってしまうという、異色のラブ・ストーリーです。



4152087099炎のなかの絵 (異色作家短篇集)
ジョン コリア John Collier
早川書房 2006-03

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ジョン・コリア『夢判断』(村上啓夫訳『炎のなかの絵』早川書房収録)
 精神科医に相談に訪れた男は、自らの見る悪夢について話します。毎日1階ずつ高層ビルの上から落下していくというその夢は、落ちている間、それぞれの階の様子まで見えるというのです。そして昨夜は、今二人がいる精神科医の部屋の様子も見えたというのですが…。
 毎日少しづつ落下していくという、ユニークなシチュエーションの悪夢を扱っています。夢が現実になるという作品なのですが、結末で別の視点からの夢も登場するという複雑な構成の作品。



4336025398世界幻想文学大系〈33〉十九世紀フランス幻想短篇集
J・ロラン 川口 顕弘
国書刊行会 1983-12

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アベル・ユゴー『死の刻限』(川口顕弘訳『19世紀フランス幻想短篇集』国書刊行会収録)
 青年士官がやってきた修道院の廃墟では、司祭がミサを執り行っていました。青年が一緒に祈りを捧げると、司祭は自分が煉獄に囚われていた魂であり、青年のおかげで解放されたことを話します。ついては一つだけ願いを叶えたいという司祭に対し、青年は自らの命がいつまであるかを教えてほしいと頼みます…。
 次々と訪れる幸福にもかかわらず、自らの命が短いことを知った青年は人生を楽しめない…という話。ちなみに作者は、ヴィクトル・ユゴーの兄にあたる人。



B00UBPIN76夕暮れをすぎて (文春文庫)
スティーヴン・キング 白石 朗・他
文藝春秋 2009-09-10

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スティーヴン・キング『ハーヴィの夢』(深町眞理子訳『夕暮れをすぎて』文春文庫収録)
 初老の男ハーヴィは、三人の娘もすでに成人し、妻と二人で暮らしていました。ある朝、ハーヴィは見たばかりだという夢の話を妻に始めます。その夢では、末娘から突然電話があり、交通事故があったというのですが、事故にあったのが誰なのかは、はっきりしないというのです…。
 男が見た夢は正夢なのか? 夢の内容とその暗示だけで構成される短篇ですが、終始、緊張感のある作品です。



4334761097頭痛と悪夢―英米短編ミステリー名人選集〈4〉 (光文社文庫)
ローレンス ブロック Lawrence Block
光文社 1999-05

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ローレンス・ブロック『頭痛と悪夢』(宮脇孝雄訳『頭痛と悪夢』光文社文庫収録)
 恋人の死をきっかけに予知能力に目覚めた女性は、占いで生計を立てていました。ある時、強烈な頭痛と悪夢に襲われた女性は、夢をヒントに、誘拐された子供の事件を解決します。有名になった女性のもとには仕事の依頼が舞い込みますが、再び、頭痛と悪夢が襲ってきます…。
 予知夢を見る女性の物語。道具立ては幻想小説風なのですが、ミステリとして展開するところがユニークな作品です。


●不思議な眠り
 眠りから解放された人々。目覚めない人々。不思議な「眠り」を描いた作品を集めてみました。


4488629059時の声 (創元SF文庫)
J・G・バラード 吉田 誠一
東京創元社 1969-05-02

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J・G・バラード『マンホール69』(創元SF文庫『時の声』収録)
 実験的に『睡眠』を奪い、一日中意識を保てるようになった男たちを描く作品です。覚醒し続ける男たちの意識の変容を描いているのですが、この展開が異様で、まるでホラー作品。



4594068057予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー (扶桑社ミステリー)
ジョン・コリア 井上 雅彦
扶桑社 2013-04-30

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ジョン・コリア『眠れる美女』(山本光伸訳 井上雅彦編『予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー』扶桑社ミステリー収録)
 慎ましやかに暮らす事を最上とする男は、見世物として公開されていた「眠れる美女」に心を奪われてしまいます。多大な金を払い、彼女を引き取った男は、美女の目を覚まさせることに成功しますが…。
 理想の美女の、実際の性格に幻滅する男を描いています。夢と現実の落差を描いた作品です。



4336043469独逸怪奇小説集成
竹内 節
国書刊行会 2001-09

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ヘルムート・M・バックハウス『眠れる美女』(前川道介訳『独逸怪奇小説集成』国書刊行会収録)
 夫婦がふと立ち寄ることになった旅館は、もてなしも上々の宿でしたが、やたらと床が冷えるのが気になっていました。宿の主人は地下に氷室があると案内をしてくれますが、氷室には、氷漬けになった人間が何人も立っていたのです…。
 宿の主人は狂気に囚われているのか? どこかとぼけた味のある幻想短篇。



4309801099ポドロ島 (KAWADE MYSTERY)
レズリー・ポールズ ハートリー L.P. Hartley
河出書房新社 2008-06

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L・P・ハートリー『合図』(今本渉訳『ポドロ島』河出書房新社収録)
 殺されそうになる夢を見たら、壁を叩くからこっちに来てね。幼い妹にそう頼まれた「僕」は、ある夜、壁を叩く音を耳にします。ためらいつつも、妹自身のためにならないと、「僕」は音を無視します。やがて音は小さくなっていきますが…。
 隣の部屋で寝ている妹が壁を叩く音を無視する兄、という、ただそれだけの話ではあるのですが、何やら想像力を喚起する掌編です。



4150117047ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)
ナンシー クレス Nancy Kress
早川書房 2009-03-31

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ナンシー・クレス『ベガーズ・イン・スペイン』『眠る犬』(山岸真訳『ベガーズ・イン・スペイン』ハヤカワ文庫SF収録)
 遺伝子改変により、睡眠を必要としない子供たちが生まれます。高い知性と美しい容姿など、優れた能力を持つ無眠人は、やがて一般人から迫害を受けますが…。
 高い能力を持つ新人類が迫害される…というミュータントテーマを現代風に描いた作品。



4894191954奇想遍歴
マルセル ベアリュ Marcel B´ealu
パロル舎 1998-07

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マルセル・ベアリュ『諸世紀の伝説』(高野優訳『奇想遍歴』パロル舎収録)
 かって、人間は夢の中でしか死なない時代がありました。ある日、男が眠りから起きず動かくなったのに気付き、人々は困惑します。人々は男の身体を地面に植えてみますが…。
 「死」はどのように生まれたのか?を描く寓話作品。死体を植えてみたりと、展開が妙にシュールな作品です。


レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』(垂野創一郎訳 ビブリオテカ・プヒプヒ)
 生まれたばかりの赤ん坊がアンチクリストだという夢を信じ込んだ男は、赤ん坊を殺そうとします。自らの手では無理だと悟った男は、知り合いの窃盗団に殺害を依頼します。それを知った母親は殺害を防ごうとします。互いに後ろ暗い過去をもちながらも愛し合っていた夫婦の愛憎の行方は…?
 18世紀のドメスティック・サスペンス。舞台となった土地や時代の描写も生き生きとしており、ペルッツの達者な筆が味わえる中篇小説です。



4902075164ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)
ゾラン・ジフコヴィッチ 巽 孝之
Kurodahan Press 2010-10-15

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ゾラン・ジフコヴィッチ『火事』(山田順子訳『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』黒田藩プレス収録)
 司書の女性は、夢の中で、古代の図書館らしい建物が火事に見舞われるという情景を目撃します。翌朝、勤務先の図書館でコンピュータのスクリーンに現れたのは、夢と同じ図書館の景色。その内部には、失われたはずの古代の大作家の原稿がいくつも並べられていました…
 結末を予期させつつも、神話的な風格の漂う作品です。



4420137509夢みる機械 (ジャンプスーパーコミックス)
諸星 大二郎
集英社クリエイティブ 1993-08

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諸星大二郎『夢みる機械』『夢みる機械』ジャンプスーパーコミックスほか収録)
 少年は、いつの間にか周囲の人々に異変が起きているのに気付きます。両親も教師もどこかがおかしいのです。ある日、階段から落ちた母親がばらばらになり、それが本人そっくりのロボットだったことに気付きます。他の大人もまた大部分が人間そっくりの機械に入れ替わっていたのです…。
 本物の人間たちはどこに行ったのか? フィリップ・K・ディック的なテーマのSFマンガ作品。


●夢に潜り込む
 本来中身を知ることのできない他人の夢。そこに潜り込むことにより、人の秘密を知ることができるのです…。


世界ユーモアSF傑作選 1 (講談社文庫)
世界ユーモアSF傑作選 1 (講談社文庫)浅倉 久志

講談社 1980-03
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ピーター・フィリップス『夢は神聖』(浅倉久志訳『世界ユーモアSF傑作選1』講談社文庫収録)
 想像力を使いすぎて妄想の世界に入ってしまった作家を救うため、記者は機械を使い、作家の心の世界に侵入しますが…。
 現実的なガジェットや人物で、妄想の世界を壊そうとする記者と、それらを自分の世界の「魔法」として解釈し、自らの世界に取り込んでしまう作家とのやりとりが、ユーモラスに描かれます。



4101171408パプリカ (新潮文庫)
筒井 康隆
新潮社 2002-10-30

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筒井康隆『パプリカ』(新潮文庫)
 精神医学研究所に勤める千葉敦子は、研究者兼サイコセラピスト。彼女にはもうひとつの秘密の顔がありました。その正体は、他人の夢の中に侵入する夢探偵「パプリカ」。しかし、装置の開発者である時田と敦子は、夢を共有できる装置「DCミニ」を奪われてしまいます…。
 人の夢の中に入り込むという「サイコダイブ」ものの代表的作品。アニメ映画版もあり。



B003EVW55Aマトリックス 特別版 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ 2010-04-21

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ウォシャウスキー監督『マトリックス』シリーズ(映画)
 トーマス・アンダーソンは、大手ソフトウェア会社に勤めるプログラマーでしたが、彼には、天才ハッカー「ネオ」という、もう1つの顔がありました。
 トリニティと名乗る謎の女性と出会ったトーマスは、彼女の仲間のモーフィアスを紹介され、この世界はコンピュータによって作られた仮想現実だということを告げられます…。
 仮想現実世界に囚われた人類を救うために戦う…というシリーズ作品。仮想現実だけに、現実ではありえない動きやアクションが可能というところが見所。



B00005LJWFザ・セル デラックス版〈特別プレミアム版〉 [DVD]
パイオニアLDC 2001-07-25

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ターセム・シン監督『ザ・セル』(映画)
 人間の内面の世界に入り込むことができる機械が開発された世界。小児精神科医キャサリンは、昏睡状態に陥った連続殺人犯の内面に侵入する必要に迫られます。彼に誘拐された女性がタイマー仕掛けで溺死させられる危険があるため、女性が閉じ込められている場所を犯人から聞き出そうというのですが…。
 殺人犯の内面世界の描写が話題になった作品。子供のような部分と、狂気に彩られた部分とが同居する世界観が魅力です。



B016PLAFCKインセプション(初回限定生産) [DVD]
クリストファー・ノーラン
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2015-12-16

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クリストファー・ノーラン監督『インセプション』(映画)
 コブは、標的の夢に進入し、そこから情報を引き出す産業スパイ。実業家サイトウの依頼により、ライバル企業の経営者の息子ロバートの夢に潜り込み、父親の会社を解散させるための考えを無意識に埋め込もうと計画します。
 コブは、仲間とともにロバートの夢の中に入り込みますが、ふとした手違いから、夢のさらに深層へと潜り込んでいくことになります…。
 夢の中の世界を描いた映像作品としては、空前絶後の作品。入れ子の形になった夢の階層構造が、複雑かつ魅力的に描かれます。ボルヘスからの影響もあるとか。


●異世界の夢
夢で見る世界は、現実とは異なる、もう一つの別世界なのです。


B000J94AWG世界SF全集〈第32巻〉世界のSF(短篇集) (1969年)
早川書房 1969

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アラン・E・ナース『悪夢の兄弟』(南山宏訳 福島正実編『世界SF全集32 世界のSF現代編』収録)
 男が気がつくと、そこはトンネルの中でした。自分が何者か、なぜこの場所にいるのか記憶が全くないのです。突如現れた列車に追い立てられた男は、何とか危機を避けますが、気がつくと、そこは砂漠に変わっていました…。
 自分は何者なのか? なぜこんなところにいるのか? 記憶喪失の男が次々と不条理な出来事に出会うサスペンスSF。



4091913377バルバラ異界 1 (小学館文庫 はA 41)
萩尾 望都
小学館 2011-12-15

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萩尾望都『バルバラ異界』(小学館文庫)
 プロの夢先案内人である渡会時夫は、7年間眠り続ける少女、青羽の夢の探索を依頼されます。少女の夢の中には、人が空を飛べ不老不死であるユートピアのような世界「バルバラ」が存在していました。少女の夢の世界のはずの「バルバラ」が、自分が創った空想の島だと、渡会の息子キリヤは言い出しますが…。
 夢の世界を扱った本格的なファンタジー作品。魅力的ではあるものの、現実とは全く別の世界のはずの「バルバラ」と、現実とがリンクしていく後半の展開は圧巻です。



4840102732ダークグリーン (1) (MF文庫)
佐々木 淳子
メディアファクトリー 2001-04

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佐々木淳子『ダークグリーン』(MF文庫)
 世界中で「R-ドリーム」と呼ばれる夢の世界が現れ始めます。その夢の中で、人々は「ゼル」と呼ばれる謎の侵略者たちと戦っていたのです。「R-ドリーム」内で死ねば、現実でも死んでしまうのです。
 浪人生である西荻北斗は、「R-ドリーム」で戦士ホクトとなり、「R-ドリーム」最強と言われる少年リュオン、金色の肌の少女ミュロウらと共にゼルと戦うことになりますが…。
 夢の世界を舞台にしたファンタジー作品です。現実世界と夢世界で、性別や年齢までも違う人間がいたりするのが面白いところ。夢の世界の秘密が環境問題に絡めて語られるなど、意欲的な作品です。



B000J6JRT0Who!―超幻想SF傑作集 (1983年) (シティコミックス)
佐々木 淳子
東京三世社 1983-09

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佐々木淳子『赤い壁』『Whoフー 超幻想SF傑作集』東京三世社マイ・コミックス)
 夢の世界に迷い込み、もとに戻れなくなった少女。彼女は、謎の少年の力を借り、夢の世界から逃げ出そうとしますが…。
 少女は、いつの間にか他人の夢の中へと紛れ込んでしまいます。恋する青年、病気の幼児、ひとびとの夢の中はすべてつながっているのです…。
 のちの代表作『ダークグリーン』につながるようなテーマを内包した作品です。


●夢さまざま
 その他、夢に関するいろいろな作品を集めてみました。



4309462545時と神々の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ 中野 善夫
河出書房新社 2005-09-03

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ロード・ダンセイニ『予言者の夢』(中野善夫訳『時と神々の物語』河出文庫収録)
 神を呪っている男は夢を見ますが、そこでは神々の巨大な骨が散らばっていました…。
 「神は死んだ」ということを、神の巨大な骨というイメージで表したユニークな作品。皮肉な結末も気が利いています。



4003101197夢十夜 他二篇 (岩波文庫)
夏目 漱石
岩波書店 1986-03-17

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夏目漱石『夢十夜』『夢十夜 他二篇』 岩波文庫ほか収録)
 作者の夢を小説化したという作品。恐怖度では一番の第三夜、ブラックユーモアあふれる第十夜が印象に残ります。



4309405347ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫
澁澤 龍彦
河出書房新社 1998-04

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澁澤龍彦『夢ちがえ』『ねむり姫』河出文庫収録)
 生まれつき耳と口が不自由な姫が、田楽の一行の男に恋をします。姫は男を夢見続け、その結果、男の夢の中には姫が現れるのです。男の恋人である女は、相談した比丘尼の言われるまま、夢の内容を再現することによって、夢を取り上げてしまおうと考えますが…。
 人の夢を横取りしてしまおうという「夢取り」を扱っています。しかし手順を間違えたことから、悲劇が起こってしまうという作品。



4336035865アラビアン・ナイトメア (文学の冒険シリーズ)
ロバート・アーウィン 若島 正
国書刊行会 1999-09

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ロバート・アーウィン『アラビアン・ナイトメア』(若島正訳 国書刊行会)
 15世紀エジプト、スパイとしてカイロに潜り込んだ男バリアンは、いつの間にか眠って悪夢を見るという謎の病にかかってしまいます。眠りの教父〈猫の父〉、語り部ヨル、娼婦ズレイカなど、不可思議な人物との交流のなか、どこからどこまでが現実で夢なのか、バリアンはわからなくなっていきます…。
 序盤から、主人公が夢の中にいるような状態のため、物語全体が曖昧模糊としていて、物語の本筋が全くつかめません。物語の萌芽が現れても、それらあまり展開しないのですが、後半、猿と魔法を中心としたエピソードが登場してからが圧巻。登場人物の話の中の登場人物の話の中の…と入れ子状に話が展開していく部分は目眩がするようです。



4488070701夢宮殿 (創元ライブラリ)
イスマイル・カダレ 村上 光彦
東京創元社 2012-02-28

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イスマイル・カダレ『夢宮殿』(村上光彦訳 創元ライブラリ)
 帝国の「夢宮殿」では、動乱を未然に防ぐため、国民の見る夢を収集、管理していました。名門出の主人公、マルク=アレムは、親戚の斡旋で「夢宮殿」に就職することになります。その仕事内容は、夢の内容を「選別」し、その夢にどんな意味があるのか解釈するというものでした。マルク=アレムは当人の能力とは無関係に、次々と出世してゆきますが…。



4582287360夢みごこち
フジモト マサル
平凡社 2011-01-30

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フジモトマサル『夢みごこち』(平凡社)
 1篇1篇が終わるごとに、それが夢だった…という展開の連作短篇マンガ。いわゆる『夢オチ』作品といえるのですが、それが毎回繰り返されることによって、物語の舞台が現実なのか夢なのか判然としなくなってきます。
 登場人物たちは、著者独特のかわいいタッチで描かれる動物で表現されているのですが、夢がなかなか終わらない…という、ある種悪夢のような展開とのミスマッチが、何ともいえない雰囲気を生み出しています。
 それぞれの短編も、世界すべてが自分の夢だと思っている男が、夢警察に囚われる話だとか、空を飛ぶ夢を見ている女がラジオ番組に電話をかけてくる話、人格改造システムの実験によって、記憶を奪われてしまう話など、《異色作家短篇集》を読んでいるような味わいが楽しめます。



4575714127夢を見た (双葉文庫)
岸 浩史
双葉社 2014-04-10

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岸浩史『夢を見た』(双葉文庫)
 一編がそれぞれ2ページ程度で描かれるファンタジーマンガ作品。明確なストーリーがあるわけではなく、夢で見るような、ある種不条理なイメージを視覚化したものが描かれます。ただ、イメージ的にもそれを見て楽しめるエンターテインメントに昇華しているのが素晴らしいですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

夢と眠りの物語 その2
●夢見られる世界
 一つの島、一つの都市、果ては、世界そのものもまた、夢見られる対象であるのです。


4488637043眠れる人の島 (創元SF文庫)
エドモンド・ハミルトン 中村 融
東京創元社 2005-12-17

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エドモンド・ハミルトン『眠れる人の島』(中村融訳『眠れる人の島』創元SF文庫収録) 
 船が遭難し、ひとりだけ生き残ったギャリソンは、漂流の後、奇妙な島にたどりつきます。ギャリソンはそこで美しい娘マーと出会いますが、彼女の話では、この島にあるすべてのものは〈眠れる人〉の見ている夢であり、彼が目覚めるとすべては消えてしまうというのです…。
 奇想天外かつ美しいファンタジー。哀愁に満ちた結末も印象的です。



415020005Xペガーナの神々 (ハヤカワ文庫FT)
ロード ダンセイニ S. H. Sime
早川書房 1979-03-13

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ロード・ダンセイニ『ぺガーナの神々』(荒俣宏訳 ハヤカワ文庫FT)
 すべての神々の生みの親であるマアナ・ユウド・スウシャイは深い眠りについており、鼓手スカアルの叩く太鼓の音がしている限り目覚めないといいます。スカアルの太鼓が鳴り止むと、マアナは目を覚まし、すべてのものが消えてしまうと…。
 ダンセイニの創作神話「ぺガーナ」の設定はなんとも魅力的です。ペガーナのすべては、大神マアナの見ている夢であり、マアナが目覚めるとすべては消えてしまうのです。



4309462545時と神々の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ 中野 善夫
河出書房新社 2005-09-03

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ロード・ダンセイニ『ブウォナ・クブラの最後の夢』 (吉村満美子訳『時と神々の物語』河出文庫収録
 アフリカにやってきて、その地で死んだ男。その精神力から、原住民からブウォナ・クブラと呼ばれた男は、死後も恐れられていました。彼が残した「最後の夢」は、いまだに力を保ち続け、幻の街を生み出すというのですが…。
 街を夢見る男の物語。死後もその幻は続く、というファンタジーです。



4594069223予期せぬ結末2 トロイメライ (扶桑社ミステリー)
チャールズ・ボーモント 井上 雅彦
扶桑社 2013-09-25

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チャールズ・ボーモント『トロイメライ』(村上博基訳 井上雅彦編『予期せぬ結末2 トロイメライ』扶桑社ミステリー収録)
 弁護士は、死刑囚の言葉に驚きます。この世界は自分が見ている夢に過ぎず、自分が死んだら世界は消滅する…と。処刑が迫る中、弁護士と友人は死刑囚の言葉について考えますが。
 世界は一人の人間の見ている夢に過ぎない…という話。



4334753108薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺短篇集 (光文社古典新訳文庫)
モラヴィア 関口 英子
光文社 2015-05-12

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アルベルト・モラヴィア『夢に生きる島』(関口英子訳『薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺短篇集』光文社古典新訳文庫収録)
 その島は、王女とモグラの間に生まれたという怪物によって支配されていました。生まれてから一度も目覚めたことのない怪物には、ある能力がありました。それは彼の見る夢の通りに、島の住民は操られてしまうというものでした。ある人間が死ぬ夢を見れば、確実にその人間は死んでしまうのです。住人たちは戦々恐々と暮らしていましたが…。
 まさに、何が起こるか分からない恐るべき社会なのですが、王である怪物が見る夢には法則性などなく「いい夢」も「悪い夢」もあるのです。
 独創的なブラック・ユーモア作品です。


ダニエル・F・ガロイ『今宵、空は落ち…』(山田忠訳『SFマガジン1985年4月号』収録)
 若き実業家ブレントは、数年前まで無一文だった自分の人生がうまく行き過ぎることに疑念を抱いていました。しかも、彼が危機に陥ると、何者かが現れて手助けをしてくれるのです。何らかの組織に自分は見張られているのではないかと考えるブレントでしたが…。
 この世界の「秘密」とは? 唖然とするような結末が待っています。



4488655025ドリーム・マシン (創元SF文庫)
クリストファー・プリースト 中村 保男
東京創元社 1979-07

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クリストファー・プリースト『ドリーム・マシン』(中村保男訳 創元SF文庫)
 未来予測のために、ある実験が開始されます。それは、数十人の男女の無意識を神経催眠装置を通して投射することによって、150年先の未来社会を創造するというものでした。いずれ帰還するはずのその世界に留まろうとする男が現れたことから、事態は急変しますが…。
 仮想社会ものに分類される作品。未来社会の描写は今となっては古いかも。



4150307369目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)
小林 泰三
早川書房 2003-09

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小林泰三『目を擦る女』『目を擦る女』ハヤカワ文庫JA収録)
 引っ越しの挨拶に訪れた女性は、隣人の女がやたらと目を擦っているのに気がつきます。女は、自分は別世界で夢を見ており、今、自分たちがいる世界は全て自分の夢なのだと話しますが…。
 世界は自分が見ている夢、なのですが、それがずっと見ているものではなく、偶然夢見た世界に過ぎないという話。自分の知り合いが、現実世界とは別の役割で夢に登場しているという設定もユニークです。



B00006C1W0うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]
高橋留美子
東宝 2002-09-21

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押井守監督『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(映画)
 学園祭前日、友引高校では生徒たちが準備で泊り込むほどの忙しさでした。そんななか、教師の「温泉マーク」は、違和感を感じ、同じ1日が何度も繰り返されているのではないかという疑いを抱きます。「温泉マーク」によって無理やり帰宅させられた生徒たちは、バスや電車で帰ろうとするものの、町から出られなくなっていることに気づきます。
 一同は、クラスメイトの面堂所有のハリアーで空から町を脱出しようと考えますが…。
 『うる星やつら』のキャラクターたちが、閉鎖された町に閉じ込められますが、一部の人間を除き、その世界を楽しみ始めてしまう…という物語です。
 閉鎖された世界にも関わらず、衣食住には困らないという夢のような世界が、文字通り「夢」であることがわかる展開は、じつにスリリングです。



4835400909天のろくろ
アーシュラ・K・ル=グウィン 脇 明子
復刊ドットコム 2006-04-28

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アーシュラ・K・ル・グィン『天のろくろ』(脇明子訳 復刊ドットコム)
 精神科医ヘイバー博士は、奇妙な患者の訪問をうけます。ジョージ・オアと名乗る青年の症状とは、自分が見た夢が現実になるという妄想でした。
 目覚めると、夢に見たとおりに現実が改変されており、周りの人々の記憶もつじつまの合うように変わっているというのです。しかも、夢はオア自身、コントロールできず、無意識が世界を変えていることに恐怖を抱いていました。
 実験の結果、オアの能力が本物だと確信したヘイバー博士は、オアの力を使い、世界を改変しようと目論みますが…。
 主人公の能力のスケールがとんでもない作品です。正夢になるとかいうレベルではなく、世界そのものが作り替えられてしまいます。ただ、能力そのものが主眼になるというよりは、世界改変の是非についての、ヘイバーとオアの対立と葛藤が中心になっています。



B000KLNS3ALathe of Heaven -天のろくろ- [DVD]
アーシュラ・K.ル=グウィン
トランスフォーマー 2007-02-02

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フィリップ・ハース監督『レイス・オブ・ヘブン 天のろくろ』(映画)
 ジョージ・オア青年は、精神科医の治療を受けることになります。担当医となったヘイバー博士は、ジョージから驚くべきことを聞き出します。ジョージは、見た夢によって現実を改変することができるというのです。ただし夢の内容は自分で決めることはできません。夢を見るたびに、思いもかけぬ方向に、現実が少しづつ変わっているのだと。
 博士は、夢の内容を操作する「増幅機」を使って、ジョージを治療しようと考えますが、治療を続けるうちに、ジョージの能力に気付きはじめます。ジョージの能力を利用して、自らの富と権力を増大させようと計る博士の意図に気付いたジョージは、弁護士ヘザーの力を借り、ヘイバーから逃げ出そうとします…。
 ストーリーや登場人物などを始め、ル・グィンの原作をかなり忠実に映像化しています。現実世界の改変がテーマですが、改変そのものに特殊効果はほとんど使われず、その代わりに、ジョージが目覚めるたびに、ヘイバー博士や秘書の服装、性格までもが一変していく、という趣向がうまく使われています。見た目のスペクタクルは皆無に等しいのですが、その静謐な雰囲気は、原作をうまく映像化しており、味のある秀作といえます。


●夢の中の家
 夢の中で見た夢は実在するのか? 現実とリンクする夢の魅力を描いた作品を集めてみました。


4061372122世界ショートショート傑作選 1 (講談社文庫)
各務 三郎
講談社 1978-11

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アンドレ・モーロワ『夢の家』(矢野浩三郎訳 各務三郎編『世界ショートショート傑作選1』講談社文庫収録)
 何度も夢に現れる美しい家。女性は現実にその家が存在すると信じ、いろいろな場所に出かけるたびに、その家を探し続けます。とうとう同じ家を現実に見つけ、ドアをたたきますが、その家の住人は「幽霊」が出るために引っ越してしまったというのです…。
 夢と現実がリンクする、そのつながりが見事な掌編です。



4003227913イギリス民話集 (岩波文庫)
河野 一郎
岩波書店 1991-10-16

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『夢の家』(河野一郎編訳『イギリス民話集』岩波文庫収録)
 女性がたびたび夢に見る家は美しく、何度も家の中を探索したため、まるで自分の家のように感じていました。たまたま、安く売りに出ているという家を見に行ったところ、それは夢に見る家そのものでした。こんなにいい家がなぜ安く売られているのか聞いた女性が聞いた理由とは…。
 ディテールは異なっているものの、モーロワ『夢の家』とほぼ同じストーリーラインの民話。



4087821021星の時計のLiddell (1)
内田 善美
集英社 1985-09

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内田善美『星の時計のLiddell』(全3巻 集英社)
 青年ヒューは、長い間、同じ夢を見ていました。そこはいつも必ず同じ場所、ヴィクトリアン・ハウスの屋根裏部屋なのです。そしてその家で、彼は美しい少女と出会います。少女の名は「リデル」。彼女は、彼のことをなぜか「幽霊さん」と呼びます。
 行ったことのないはずの家を、なぜこうも繰り返し夢に見るのだろうか? 裕福な友人ウラジーミルの助けを借り、二人は夢の中の家を探すために、旅に出ますが…。
 あまり展開に動きはなく、全体の3分の2ぐらいが「夢」に対する、哲学的な解釈や人々の考えを描写するのに費やされています。ただイメージの美しさ、文学的な余韻は素晴らしい作品です。上記モーロワ作品、民話の『美しい家』と設定が似ています。



4001140950マリアンヌの夢 (岩波少年文庫)
キャサリン ストー マージョリ=アン・ウォッツ
岩波書店 2001-11-16

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キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』(猪熊葉子訳 岩波少年文庫)
 10歳の少女マリアンヌは、長引く病気で臥せっていました。古い裁縫箱の中から見つけた鉛筆で画帳に絵を描くと、それが実際に夢の中に現れることを知り、いろいろなものを描き込みます。家庭教師から、自分と同じような境遇の少年マークの事を聞き、興味を抱いたマリアンヌは、マークのことを絵に描き込もうと考えますが…。
 マリアンヌの力は何でもありに見えますが、描き込んだ内容が夢のなかに登場するだけで、夢の中で自分自身は特に何もできません。怒って描き込んだ「あるもの」に襲われる後半は非常に怖いです。


B00GCVWX74ペーパーハウス/霊少女 [DVD]
IVC,Ltd.(VC)(D) 2014-01-24

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バーナード・ローズ監督『ペーパーハウス/霊少女』(映画)
 キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』の映画化作品です。絵に描き込んだものが夢の中に現れる、という設定は同じですが、完全にホラーとして作り直されています。夢の世界の不気味さが半端ないですが、結末はハッピーエンド。


●どちらが夢なのか?
 何度も見る夢、続きを見る夢。どちらが夢なのかがわからなくなってくるという作品。


4488545017生のさなかにも (創元推理文庫)
アンブローズ・ビアス Ambrose Bierce
東京創元社 1987-12

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アンブローズ・ビアス『アウル・クリーク橋の一事件』(中村能三訳『生のさなかにも』創元推理文庫ほか収録)
 絞首刑になる直前に、幸運にも縄が切れ脱出に成功した男の人生の真実とは?
 一つのジャンルの元を作ったというべき古典的名作です。


ロバート・シェクリイ『夢の世界』(井上一夫訳『人類の罠』ハヤカワSFシリーズ収録)
 男は、このところ夢に悩まされていました。だんだんと夢と現実の区別がつかなくなり、精神科医にかかることになります。精神科医は、男に対し、この現実が唯一無二のものだということを証明しようとしますが…。
 冒頭からの日常の描写が、読者に少しずつ違和感を抱かせます。男のいる現実世界が、すでに別世界であることを暗示させるという技巧的な作品。



4150410771幻想と怪奇―ポオ蒐集家 (ハヤカワ文庫NV)
仁賀 克雄
早川書房 2005-02

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ロバート・シェクリイ『夢売ります』(仁賀克雄訳『幻想と怪奇 ポオ蒐集家』ハヤカワ文庫NV収録)
 その店では、ある装置により別の世界の「夢」を見させるという商売をしていました「夢」の世界では、全てはその人の思い通りになり、人殺しさえ可能だというのです。しかし「夢」の代償は、高い料金と10年分の寿命だと言われ、男は悩みます…。
 高い代償を払って「夢」を見る価値はあるのか悩む男の物語…と思いきや、いつの間にか物語は「夢」の中に入っているという、鮮やかな構成の作品です。


ヘンリー・カットナー『大ちがい』(小笠原豊樹訳『ボロゴーヴはミムジィ』ハヤカワSFシリーズ収録)
 精神科医にかかっている男は、自分の今の状態は夢を見ており、本当の自分は別の世界にいると話します。一方、別の世界で、異様な姿をした生物が精神科医に、自分は夢を見ているのだと話していました。二つの世界の精神科医は、患者の妄想を正すために、それぞれ強硬な治療を始めますが…。
 別世界にいる同一人物が、互いの世界の夢を見ており「行ったり来たり」するという、奇妙な味のファンタジーです。



4150111650つぎの岩につづく (ハヤカワ文庫SF)
R.A. ラファティ R.A. Lafferty
早川書房 1996-10

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R・A・ラファティ『夢』(伊藤典夫訳『つぎの岩につづく』ハヤカワSF文庫収録)
 男は、食堂で隣り合わせた女性の話を聞いて驚きます。彼女が話していた夢に覚えがあったのです。それは自分が別の世界に生きている夢でした。その世界では、腹の中に食物を消化してもらうためのネズミを飼っており、外には緑色の雨が降っているというのです。
 やがて、同じ世界の夢を見る人間が爆発的に増え、夢の世界で生きている時間と現実の時間は半々ぐらいになっていきます。このままでは、現実世界の方が夢になってしまうと恐れる人々も現れますが…。
 長期にわたってずっと続く夢は、すでに現実である…。ブラック・ユーモアあふれるファンタジー作品。



4883094014シミュレーションズ―ヴァーチャル・リアリティ海外SF短篇集
ケアリー ジェイコブソン
ジャストシステム 1995-08

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ジェラルド・ペイジ『幸福な男』(冬川亘訳 ケアリー・ジェイコブソン編『シミュレーションズ ヴァーチャル・リアリティ海外SF短篇集』ジャストシステム収録)
 その世界では、監視役の人間を除き、大部分の人間は眠ったまま、機械により自らの望みの夢を見ながら生きていました。現実を生きることを主張する〈覚醒者〉たちは、社会をひっくり返そうと活動を続けていましたが…。
 人類全体が幻想に浸っている世界で、孤独に活動を続ける男を描く物語。本当に夢を見ているのはいったい誰なのか? 後半のひっくり返しが鮮やかな作品です。



4152087420夜の旅その他の旅 (異色作家短篇集)
チャールズ ボーモント Charles Beaumont
早川書房 2006-07

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チャールズ・ボーモント『夢と偶然と』(小笠原豊樹訳『夜の旅、その他の旅』早川書房収録)
 男は、心臓が弱く、主治医から今度大きなショックを受けたら命はないと言われていました。精神科医を訪れた男は、このごろ見る夢に、同じ女性が繰り返し登場し、自分を突き落とそうとするのだと話しますが…。
 主人公が現実世界にいるのかと思っていると、いつの間にか夢の中の世界に入っています。結末は鮮やか。



4560072051南十字星共和国 (白水Uブックス)
ワレリイ・ブリューソフ 草鹿 外吉
白水社 2016-03-26

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ワレリイ・ブリューソフ『いま、わたしが目ざめたとき…』(草鹿外吉訳『南十字星共和国』白水Uブックス収録)
 夢の中で残酷な行為に耽っていた男は、美しい妻をもらい、現実的な幸福を得ます。しかし時を置かずして、再び夢の中での悦楽を求めるようになりますが…。
 犯罪的な行為を夢の中で実現していた男の狂気とは…? 夢と現実が混交してしまった男のサイコ・スリラーです。



4003279026遊戯の終わり (岩波文庫)
コルタサル 木村 榮一
岩波書店 2012-06-16

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フリオ・コルタサル『夜、あおむけにされて』(木村榮一訳『遊戯の終り』岩波文庫収録)
 事故で入院している男性はベッドの上で夢を見ます。それはアステカ族の人狩りから逃げ回るというものでした。夢が覚めても、眠るとまた同じ夢の続きが始まるのです…。
 一貫性のある夢は、現実とほとんど変わらない…。完成度の高い作品です。



4882932830黒の血統 (三橋一夫ふしぎ小説集成)
三橋 一夫
出版芸術社 2005-12

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三橋一夫『夢』『黒の血統』出版芸術社収録)
 妻子とともに幸せに暮らしていた男は、召集令状を受けて戦地に旅立ちます。はっと目が覚めると、妻が自分を呼ぶ声が聞こえます。あれは夢だったのか…。
 戦争に行った夢を見たと思いきや、家族と暮らしていた方が夢だった…という話なのですが、家族自体も実在しているかどうかわからないようにも読めます。



4022671505楳図かずおこわい本 呪縛 (楳図かずお恐怖文庫 14)
楳図 かずお
朝日新聞出版 2007-12

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楳図かずお『楳図かずおの呪い 幽霊屋敷』『楳図かずお こわい本 呪縛』朝日ソノラマ収録)
 塾帰りに、遊び半分で幽霊屋敷を探検に訪れた少女たちは、屋敷内で女の幽霊を目撃し、あわてて逃げ帰ります。翌日気が付くと、それぞれ体の一部に傷があるのです。昨夜のことは夢ではないかと考えた少女たちは、もう一度幽霊屋敷を訪れますが…。
 物理的に攻撃してくる幽霊の迫力が強烈な一篇。結末に、某有名短篇と同じパターンを使用しています。



B00005FXISジェイコブス・ラダー [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル 1999-12-10

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エイドリアン・ライン監督『ジェイコブズ・ラダー』(映画)
 ベトナム戦争中、ジェイコブ・シンガーと仲間の兵士たちは突如敵襲を受けます。仲間は次々と死に、ジェイコブも腹部を刺されますが、次の瞬間、ジェイコブはニューヨークを走る地下鉄の車内で目を覚まします。
 恋人とともに普通の生活を送るジェイコブは、自分の周囲に奇妙な出来事が頻発し、それと同時に夜は悪夢にうなされるようになりますが…。
 戦争のトラウマに悩まされる男を描いた、反戦的な作品と思いきや、結末でそれらが全てひっくり返されるという衝撃的な作品。主人公の見る幻覚が、悪夢のような情景ばかりで印象的です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

夢と眠りの物語 その1
 古代から神秘的なものとされてきた「夢」と「眠り」。科学が発達した現代でも、その全容は解明されていません。いろいろな形で扱われてきた「夢」と「眠り」の物語について、ご紹介していきたいと思います。

●中国の夢物語の古典から
 近代以前の「夢」に対するとらえ方は、基本的に「人間の外から来るもの」です。その元が別の人間であれ、神であれ、外から人間の中に入り込む…と考えられていました。
 そのため、近代以前の「夢」を扱った物語は、神託やお告げなどを扱ったものが多いのですが、そうした時代にあって、中国で生まれた「夢」物語には、独特の面白さがあります。自在に時間や空間を行き来するという、SFやファンタジーの萌芽的な作品が多く見られるのです。


4582312241中国古典文学大系 (24)
前野 直彬
平凡社 1968-07

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沈既済(しんきせい 750~800年頃)『枕の中の世界の話』(前野直彬編訳『六朝・唐・宋小説選 中国古典文学大系24』平凡社収録)
 青年盧生は、邯鄲(かんたん)の宿で道士の呂翁に会い、栄耀栄華が尽くせるという枕を借りて寝たところ、素晴らしい一生を送った夢を見ます。しかし目を覚ますと、宿の主人の炊く黄粱(こうりょう)もまだ炊き上っていなかったのです…。
 「邯鄲の夢枕」「盧生の夢」「黄粱一炊の夢」などの由来となった物語。人の一生も夢の中ではわずかな時間に過ぎないという、はかなさをテーマにした作品です。

李公佐(りこうさ 8世紀後半から9世紀初頭)『南柯郡太守の物語』(前野直彬編訳『六朝・唐・宋小説選 中国古典文学大系24』平凡社収録)
 豪放磊落で知られる男が、酔って古い木の下で眠っていると、大槐安国の使いが現れ、そこで王から南柯郡主に任ぜられます。数十年の間、栄華をきわめますが、夢から覚めてみれば一瞬の出来事であり、大槐安国も蟻の王国に過ぎなかった…という話。
 故事「南柯の夢」のもとになった物語。

白行簡(はくこうかん 776~ 826年)『三つの夢の話』(前野直彬編訳『六朝・唐・宋小説選 中国古典文学大系24』平凡社収録)
 相手の夢が現実に現れた話、自分の夢を相手に見られた話、同時に同じ夢を見た話、3つの夢のパターンを並べるという構成の物語です。
 妻の見た夢の内容が、夫の目の前に現れるという1話目のインパクトが強いですね。



4582766803中国怪異譚 聊斎志異〈1〉 (平凡社ライブラリー)
蒲 松齢 増田 渉
平凡社 2009-09

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蒲松齢(ほしょうれい 1640~1715年)『宰相の夢のあと』(増田渉、松枝茂夫、常石茂訳『聊斎志異』平凡社収録)
 占いで宰相になると言われた男は、突然宰相に抜擢され、栄華の限りを尽くしますが、汚職を繰り返したあげく、没落して死んでしまいます。死後、地獄で責め苦を味わった後、貧しい娘に生まれ変わり、ここでもまた不幸な目に遭い続けますが…
 原題は『続黄梁』、上記『枕の中の世界の話』を元にした作品です。死んでからの地獄の責め苦、生まれ変わってからの不幸と、主人公を苛む苦難の連続がすさまじいのですが、それさえも夢のうち、という強烈な作品。



4582766412中国怪異譚 閲微草堂筆記〈上〉 (平凡社ライブラリー)
紀 〓 前野 直彬
平凡社 2008-05

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紀昀(きいん 1724~1805年)『農婦の夢』(前野直彬訳『中国怪異譚 閲微草堂筆記』平凡社ライブラリー収録)
 道に迷っている農婦を見かけた語り手が、声をかけると農婦は消えてしまいます。実際の農婦は道に迷っている夢を見ていて、語り手に会ったというのですが…。
 夢を見ている間、分身(魂)が現実世界に現れる…という話です。


●同じ夢を見る
 二人以上の人間が同じ夢を見る、というのは「夢」物語の定番ですね。


4003725026モーム短篇選〈上〉 (岩波文庫)
モーム 行方 昭夫
岩波書店 2008-09-17

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W・サマセット・モーム『マウントドレイゴ卿』(行方昭夫編『モーム短篇選』岩波文庫ほか収録)
 傲慢ながら才能豊かな政治家マウントドレイゴ卿は、精神科医を訪れ、奇妙な夢の話を始めます。平民出身の代議士グリフィスが、夢の中で毎回マウントドレイゴ卿を嘲弄するというのです。グリフィスは自分と同じ夢を見ているに違いないと断言するマウントドレイゴ卿は、自分が死ぬかグリフィスが死ぬか二つに一つだと言いますが…。
 マウントドレイゴ卿だけでなく、脇役に過ぎない精神科医までが精細に描写され、異様な雰囲気を高めます。鬼気迫る一編。



B009KZ5QYG目撃者は月 (光文社文庫)
都筑 道夫
光文社 2005-10-27

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都筑道夫『殺し殺され』『目撃者は月』光文社文庫収録)
 「私」は、何度も、同じ男を殺害するという夢を見ていました。ある日町中で出会った男は、夢でいつも殺している男でした。男から話を聞くと、逆に男は夢で何度も「私」に殺されているというのですが…。
 加害者と被害者が同時に同じ夢を見ている…という話。幻想小説が途中から合理的なミステリになり、また幻想小説風になるという技巧的な作品。



4846007782“新パパイラスの舟”と21の短篇
小鷹 信光
論創社 2008-11

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ヘンリイ・スレッサー『夢を見る町』(小鷹信光訳『新パパイラスの舟』論創社収録)
 車を盗まれた男は、立ち寄った村で一夜の宿を求めます。その村では、毎夜、全ての住人が同じ夢を見るというのです。夢の中では、皆が宮廷の役職を務めているというのですが…。
 村中の人間が同じ夢を見ているという、ユニークな物語です。



yumeawase.jpg
夢あわせ
半村 良
文藝春秋 1989-01

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半村良『夢あわせ』『夢あわせ』文春文庫収録)
 性格も趣味もぴったりの理想の夫婦は、やがて夢さえも同じものを見ようと考えます。だんだんと二人の夢の内容は近づいていきますが…。
 夢を合わせようとする夫婦の物語。夢が合わさったときに、何が起こるのか? 面白い発想の作品です。


●夢見る人と夢見られる人
 夢見られたことにより、存在をはじめる人間の物語を集めてみました。中には、入れ子になった夢も。


4003279212伝奇集 (岩波文庫)
J.L. ボルヘス 鼓 直
岩波書店 1993-11-16

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ホルヘ・ルイヘ・ボルヘス『円環の廃墟』(鼓直訳『伝奇集』岩波文庫収録)
 男は夢の中で、ある青年を夢見ます。身体の各部から始め、完全な一人の人間を夢の中で作り上げたのです。作り上げた「息子」は、やがて旅立っていきます。ふとしたことから、自らもまた、夢見られた存在であることに気付きますが…。
 ボルヘスの代表作にして、「夢見るもの」と「夢見られるもの」について書かれた最良の作品の一つです。



4336030502逃げてゆく鏡 (バベルの図書館 30)
ジョヴァンニ パピーニ ホルヘ・ルイス・ボルヘス
国書刊行会 1992-12

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ジョヴァンニ・パピーニ『<病める紳士>の最後の訪問』(河島英昭訳『逃げてゆく鏡』国書刊行会収録)
 その男は、自分は普通に生まれた人間ではなく、何者かによって「夢見られた人間」に過ぎないと言い張ります。ただ、創造主は自分の存在には気がついていない。自分の存在を消すために、いろいろな悪行をしてみても、自分を夢見る創造主は、自分に気がついてくれないと嘆きます…。
 自分を夢見るものは、自分に全く関心がない…というネガティブな物語。



433604841Xパウリーナの思い出に (短篇小説の快楽)
アドルフォ・ビオイ=カサーレス 野村竜仁
国書刊行会 2013-05-30

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アドルフォ・ビオイ=カサーレス『パウリーナの思い出に』(野村竜仁、高岡麻衣訳『パウリーナの思い出に』国書刊行会)
 幼い頃から自他ともに認める恋人として過ごしてきた女性が、結婚を目前にして、別の男のもとに走っていってしまいます。傷心の主人公は海外に旅立ちます。
 帰国した主人公のもとに、その女性パウリーナが現れ、かっての愛を取り戻したかに見えますが、やがてパウリーナは、恋敵の男の手で数年前に殺されていたことを知ります。あのパウリーナは亡霊なのか…?
 愛、幻影、分身…。長編『モレルの発明』の変奏曲ともいうべきテーマを持つ傑作小説です。



4882930889虹の裏側 (ふしぎ文学館)
眉村卓
出版芸術社 1994-10-20

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眉村卓『仕事ください』『虹の裏側』出版芸術社収録)
 酔っ払ったサラリーマンの「私」は、本気で念じれば人間は何だって出来ると思い込み、念じ続けます。その直後、不気味な風貌の男が現れます。自分はあなたの念が生み出した奴隷であり、何か仕事をくれと言い出しますが…。
 ひたすら「仕事ください」と言い続ける男の不気味さは強烈です。ぶっとんだ結末にも驚き。

眉村卓『ピーや』『虹の裏側』出版芸術社収録)
 人付き合いのあまりない男は、ピーという猫を飼っていました。男は猫のためだけに生きているような状態でしたが、ある日交通事故で男は死んでしまいます。猫は、ひたすら男のことを考えますが、その時現れたものは…。
 味わい深い掌編です。



4270003286終わりの街の終わり
ケヴィン ブロックマイヤー 金子 ゆき子
武田ランダムハウスジャパン 2008-04-24

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ケヴィン・ブロックマイヤー『終わりの街の終わり』(金子ゆき子訳 武田ランダムハウスジャパン)
 ある場所に存在する街。そこは死んだはずの人間が、生きている人間が記憶している間だけ滞在していられるという場所でした。しかし、その街が急激に縮み始めます。現実世界で、新型ウイルスが流行し、人類が絶滅状態になってしまったのです…。
 消滅寸前の死者の街と、人類最後の生き残りである女性とが、交互に描かれる長篇作品。人間一人分だけの記憶の街という、何とも魅力的な設定です。



4652005148おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版)
三田村 信行 佐々木 マキ
理論社 2003-02

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三田村信行『ゆめであいましょう』『おとうさんがいっぱい』フォア文庫収録)
 ミキオは、夢の中で、赤ん坊を見ます。翌日の夢では、5歳ぐらいの少年を見ます。どうやら、少年は昨夜の赤ん坊が成長した姿のようなのです。やがて成長した少年の顔が、自分そっくりであることに気付き、驚くミキオでしたが…。
 夢を見ているのはどちらで、夢を見られているのはどちらなのか? アイデンティティーの不安をえぐる、児童文学ながら恐怖度の高い作品です。



488570412XWho!超幻想SF傑作集 (マイ コミックス)
佐々木淳子
東京三世社 1981

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佐々木淳子『ミューンのいる部屋』『Whoフー 超幻想SF傑作集』東京三世社マイ・コミックス)
 空想上の友達と遊ぶことを覚えた少年フィル。彼の作った女の子ミューンは、日に日に存在感を増していきます。
 母親の実家に預けられることになったフィルは、伯母のアナイジーとの生活の中で、充実感を得るようになり、それに伴いミューンは姿を消します。しかしアナイジーとボーイフレンドとの関係に嫉妬したフィルは、再び内にこもるようになり、彼の幻を作る能力は暴走しはじめますが…。
 いったんは幸せを得たかに思えた少年が裏切られたとき、空想は彼の手を離れていきます。空想が現実化するというファンタジーですが、後半の展開は、非常にブラック。最後の一ページの衝撃度は、半端ではありません。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

怪奇幻想読書倶楽部 第4回読書会 開催しました
 2月26日の日曜日、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第4回読書会」を開催しました。出席者は、主催者を含め9名でした。
 テーマは、第1部「夢と眠りの物語」、第2部「テーマなしフリートーク」です。今回は、本会のみ4時間。参加してくださった方には、お礼を申し上げたいと思います。
 それでは、当日の会の詳細について、ご報告いたします。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。
 前回同様、あらかじめ作っておいたプラスチック製ネームプレートを、参加者それぞれの前に立てたうえで、参加者を紹介しておきます。今回も、新規の方のみ主催者から紹介し、2回目以降の参加者には、軽く自己紹介をしてもらいました。

 今回のテーマは「夢と眠りの物語」。過去3回のテーマは、どちらかと言うと「ジャンル」的なものだったのに対して、今回は「モチーフ」的なものと言っていいんでしょうか。その点、新しい試みではありました。
 主催者が作った〈夢〉テーマ作品リストのほか、参加者のGreenさんの方で独自に挙げていただいたリストも参考にしながら、話を進めていく形になりました。
 ただ、テーマ的にどのような作品が扱われるか、参加者の方にいまいちイメージが伝わらなかった感もあり、進行がスムーズにいかなかったのは、自分への課題として残りました。

 第1部が終わり、第2部の完全フリートークの時間に入っても、〈夢〉テーマの話が結構続いたので、今回はほとんど〈夢〉テーマで終わったといっていいかもしれません。皆さん心に引っかかるものがあったというべきなのか、興味深いテーマではあったと思います。

 それでは、今回のトピックについて順不同で並べてみます(例によって、記憶にあるものだけですが)。

・人間が見る夢について。夢の内容は大体が支離滅裂で、また、個人的にしか意味を持たないことも大部分。それゆえ、他人と夢の話をしても、あまり興味を持ってもらえないことが多い。
・他人と夢の話をすることがあるか? ほとんどない人が大半。夢の中で危険な目に合うなど、特殊な例を除いては、あまり共通の話題にもならないことが多い。
・夢には記憶が反映される? 外国の風景が夢に出てくるとき、イメージとしての風景が出てくるが、実際に行った場所であれば、映像的にも鮮明になるような気がする。
・夢に関する文学は、古代から存在するが、近代以前のものは神託やお告げとしての夢を描いたものが多い。
・夢をそのまま記述した「夢日記」は、部分的に面白い部分はあるが、全体的には退屈なものが多い。
・夢に関する描写を、古典的な名著から抜粋したアンソロジー、スティーヴン・ブルック編『夢のアンソロジー』は、退屈で眠くなってしまう。
・『夢のアンソロジー』と同じようなコンセプトでも、ボルヘス編『夢の本』は、ボルヘス好みの不思議な描写を含む夢が多く取り上げられており、エンタメ度が高い。
・「邯鄲の夢枕」で知られる沈既済『枕の中の世界の話』、「南柯の夢」で知られる李公佐『南柯郡太守の物語』など、古い中国の夢物語には、現代の夢テーマのSFやファンタジー作品の原型が見られる。
・白行簡『三つの夢の話』は、相手の夢が現実に現れた話、自分の夢を相手に見られた話、同時に同じ夢を見た話、3つの夢のパターンを並べるという構成の夢物語ショート・ショートで楽しい。
・蒲松齢『聊斎志異』の1エピソード『宰相の夢のあと』は、上記『枕の中の世界の話』を元にした話。人間の生のはかなさを描くために、人生2回分以上の時間が夢だった…とするすさまじい物語。
・蒲松齢『聊斎志異』の面白さ。エピソードは数百篇と膨大。妖怪変化や精霊などが出てきたり、色恋を扱ったものが多い。
・都築道夫『有毒夢』の紹介。未来を舞台にした作品だが、あっさり人が殺されてしまう。
・都筑道夫の怪談作品について。怪奇小説としての理想は岡本綺堂と内田百閒だったらしく、実際に後期の作品はこの2人の作風に近くなってくる。後期の短篇集『目撃者は月』では、夢をテーマにした怪奇作品が多かった。
・フィリップ・K・ディック『凍った旅』は、ディック後期の短篇。冷凍睡眠から目覚めた男がコンピュータに強制的に良い夢を見させられるが、男の罪悪感から全て悪夢になってしまうという物語。結構が整っているのと、ディックらしからぬ哀愁感が感じられて、味わい深い作品。
・SF作品だと、タイトルに「夢」とつく作品がよくあるが、内容的には夢と関係なかったりする。
・マーガニータ・ラスキ『ヴィクトリア朝の寝椅子』の魅力について。一種のタイムトラベルものだが、妙な心地悪さのある作品。同じくラスキの怪奇小説『塔』も気色悪さの際立つ作品。
・《20世紀イギリス小説個性派セレクション》は、なかなか面白いセレクションだった。シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー『フォーチュン氏の楽園』など
・シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナーについて。未訳の作品『猫のゆりかご』『ロリー・ウィローズ』などについても。
・キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』の面白さ。画帳に描いたものが夢の中で現実化されるという話。児童文学扱いだがけっこう怖い。映画化作品『ペーパーハウス 霊少女』は完全にホラー映画。
・ボルヘスは夢に関心の強かった作家。『円環の廃墟』について。夢の中で人間を作り出すという幻想小説。「神」のアナロジー?
・ケヴィン・ブロックマイヤー『終わりの街の終わり』について。生者の記憶にある限り、存在を続ける死者の街の物語。何ともいえない魅力のある作品。
・エドモンド・ハミルトン『眠れる人の島』について。
・ロード・ダンセイニ『ぺガーナの神々』について。神々さえも、つかの間の夢に過ぎない…という壮大なファンタジー。〈宿命〉と〈偶然〉が賭をする…というのは、決定論と自由意思の問題を神話に流用したもの? ダンセイニの世界観は、日本人の心性に近い気がする。
・チャールズ・ボーモント『トロイメライ』について。このパターンのオチを知らずに読むと、すごくビックリするのではないか。
・アルベルト・モラヴィア『夢に生きる島』について。ラヴクラフトやクトゥルーのパロディとしての側面も。
・アーシュラ・K・ル・グィン『天のろくろ』について。夢で世界を改変するというファンタジー。世界改変というすごい能力を描きながら、作品の主眼がそこにはないところに作家性を感じる。映像化作品『レイス・オブ・ヘブン』は、特撮などは控えめだが、わりと原作に忠実な良作。
・内田善美『星の時計のLiddell』について。マンガというより絵画に近い。発想元はアンドレ・モーロワ『夢の家』? 類似した発想のイギリス民話『夢の家』も存在。
・内田善美について。そもそも男性か女性かも不明。作品の再刊は拒絶しているそう。
・アンブローズ・ビアス『アウル・クリーク橋の一事件』について。「夢オチ」の元祖? 現代エンタメでは類似の作品が多く見られる。似たテーマの作品として、エイドリアン・ライン監督『ジェイコブズ・ラダー』など。
・ナサニエル・ホーソーン『デーヴィッド・スワン』の独創性について。現実に「夢」が通り過ぎるという作品。「今までの人生は全て夢だった」というテーマを逆転させたユニークな発想。
・シャーリイ・ジャクスンの作品集『こちらへいらっしゃい』について。収録作品『夜のバス』は、夢テーマ作品の傑作。同時収録のエッセイも面白い。ぜひ復刊してほしい作品集。
・怪奇小説で夢が扱われるときは、たいてい「悪夢」として登場する。わりとワンパターンな使い方が多い気がする。
・ウィルキー・コリンズ『夢のなかの女』について。夢の中で殺されそうになる話。それが真実なのか妄想なのかはっきりしない構成も巧み。
・ロバート・R・マキャモン『夜襲部隊』について。映像化作品も面白かった。
・シーリア・フレムリン『特殊才能』の怖さについて。他人を悪夢にひきずりこむ男の物語。悪夢を扱った作品の中でも、かなりの怖さをほこる作品。
・楳図かずお『神の左手悪魔の右手』について。全体に夢に関連する要素が強い作品。とくに第1エピソード『錆びたハサミ』は、全篇悪夢がテーマになっている。主人公の少年をはじめ子供たちの倫理観の描かれ方などが独特。
・SF作品では、ある時期、睡眠をなくしたらどうなるか?という感じの作品があった。バラード『マンホール69』など。現代では、ナンシー・クレス『ベガーズ・イン・スペイン』などが似たようなテーマの作品。
・現代の夢テーマでは、夢に潜り込む…というタイプの作品が多い。筒井康隆『パプリカ』、映画『マトリックス』シリーズ、ターセム・シン監督『ザ・セル』、クリストファー・ノーラン監督『インセプション』など。
・映画『インセプション』について。夢世界が階層構造になっているところが面白い。
・小川未明『金の輪』について。凄味のある作品。未明には他にも面白い作品がある。
・フリオ・コルタサル『夜、あおむけにされて』について。夢と現実が逆転するストーリー。
・シオドア・スタージョン『熊人形』について。何とも言えない不気味さのある作品。『監房ともだち』など、スタージョンには他にも変な作品がある。
・スティーヴン・ミルハウザー『アリスは、落ちながら』について。『アリス』のパスティーシュ作品。『バーナム博物館』収録作品中では目立たないが、いい作品。
・マーガレット・ミラー『鉄の門』について。ミラー作品では、時折、現実が悪夢のような情景に変貌することがある。精神的に問題をかかえた登場人物が多いせいもあるかも。『心憑かれて』など。
・戦後のニューロティックサスペンスでは、悪夢のような、幻想小説に近い作品もある。ジョン・フランクリン・バーディン作品など。
・フロイト以後における、夢テーマ作品への影響について。一時期は、精神分析的な視点を持ち込んだ作品が多く書かれた。ただ、象徴をちりばめられた作品を読んでも、物語として魅力的ではないものも多い。
・現代では、フロイトやユングの思想は、SFやファンタジーのひとつの素養として読まれていくのではないか。
・筒井康隆はフロイトの影響が強く、夢についての著作も多い。『パプリカ』『夢の検閲官』など。
・スティーヴン・キング作品について。近年の作品はどんどん厚くなっている? キングの文体の特徴について。商品名を羅列する、頭の中に流れるCMを描写する、など。リアリティを出すための技術?
・キング『シャイニング』について。映画版と原作は大分違う。キング自身が再映像化した作品についても。
・キング『ランゴリアーズ』の面白さ。サスペンス度は強烈。映像化作品では、最後に怪物が出てくる場面で白けてしまった…という人も。
・ネルヴァル『オーレリア』について。散文詩のような作品。
・映画、ジャック・リヴェット監督『セリーヌとジュリーは舟でゆく』について。女性二人を描いたファンタスティックな作品。他に似ている作品が思い浮かばない、ユニークな映画。
・駕籠真太郎作品について。もともと成人マンガ畑の人だが、近年はわりとメジャーに。奇想がすごい。人体がバラバラになったりと、筒井康隆を思わせるところもある。
・中野京子『新 怖い絵』について。「普通」の絵画だけでなく、殺人鬼ジョン・ウェイン・ゲイシーのピエロの絵なども収録しているところが面白い。
・久世光彦『怖い絵』について。この著者は、日常にさりげなくフィクションを混ぜるのがうまい。
・殺人鬼たちが描いた絵画展について。
・『マリ・クレール』誌は、安原顯が編集に関わるようになって文芸誌のようになった。
・安原顯が絡んだブックガイドシリーズは、どれも魅力的だった。とくに角川文庫から出た『短篇小説の快楽』は、それぞれの専門家がベストを選んだ魅力的な本。風間賢二『ホラー短篇小説ベスト50』、荒俣宏『ファンタジー短篇小説ベスト50』など。中には「ノン・ジャンル」という、よく分からない分類も。
・新刊情報をどこで入手するか? 「悪漢と密偵」さんのtwitterでの新刊情報は非常に便利。
・図書館の利用法について。マイナーな翻訳ものは、リクエストをしないと入れてくれなくなってしまう。ベストセラーばかり入れるのは図書館としていかがなものか。
・最近の図書館はサービスが行き届いている。深夜まで開館していたり、カフェ併設のところも多し。
・ルネ・マグリットの絵画作品の面白さ。現実にありえない組み合わせ、描かれた内容とタイトルの乖離、描かれた空の美しさなど。マグリットには、似たモチーフの作品が多数あり、それぞれタイトルが違うので、タイトル名を覚えるのが大変。
・ダリの作品について。絵画というより宝飾品に近い扱い。
・クリムト作品の素晴らしさについて。実物を見ると圧倒される。
・ヘンリー・ダーガーについて。世界観の設定の細かさがすごい。死後にダーガー作品の価値を認め保管した家主は偉い。
・宮沢賢治『銀河鉄道の夜』は、夢テーマ作品?
・ブラックウッド『ジンボー』について。隠れた名作。
・ブックガイドについて。ミステリやSFなどはたまにガイドが出るが、ホラーに関しては滅多に出ない。風間賢二『ホラー小説大全』の再刊でも、新しい情報はとくに更新されていなかった。現代のホラー事情が最近はわからなくなっている。
・自由国民社『世界のSF文学・総解説』について。「幻想文学」版もそうだが、あらすじを結末までばらしてしまうのはどうかと思う。トールキンの項目に記された、トールキン自身の歌のカセットが気になる。
・書きたいジャンルの需要がないので、別の分野で書く作家は昔からいた。マシスンのように本質はホラー作家だが、主にSFで活躍した作家もいる。日本でも純文学作家がミステリを書いていた例もある。
・《ドーキー・アーカイヴ》について。サーバン『人形つくり』は面白かったが、あまりバリエーションの書けない作家という印象。何冊か出たら飽きてしまうかもしれない。
・坂口尚の〈夢〉をテーマにした短篇マンガについて。
・夢をテーマにした谷内六郎の画集について。
・妄想が現実化する…というのも〈夢〉テーマのバリエーション? 小松左京『召集令状』、オーガスト・ダーレス『淋しい場所』、フレドリック・ブラウン『発狂した宇宙』、フィリップ・K・ディック『虚空の眼』など。
・映画『ビューティフル・マインド』について。
・映画『眠る男』について。
・映画『マイ・プライベート・アイダホ』について。
・怪奇小説における「手」テーマの作品について。W・F・ハーヴィー『五本指の怪物』、ジェラール・ド・ネルヴァル『魔法の手』、ジョゼフ・シェリダン・レ・ファニュ『白い手の怪』、モーパッサン『手』、クライヴ・バーカー『手』、オリバー・ストーン監督の映画『キラー・ハンド』など。
・ジャック・ロンドン『星を駆けるもの』について。精神の力だけで肉体世界を克服する話。『新トワイライトゾーン』のエピソードで、似たようなテーマの作品があったが、そちらでは二重のオチになっていて感心した。
・田中啓文の作品について。ダジャレから発想されていて、その発想力に驚く。『銀河帝国の弘法も筆の誤り』『異形家の食卓』『UMAハンター馬子』など。
・「自動筆記」をはじめ、シュルレアリストたちは夢や無意識の力に関心が強かった。チャンス・イメージなど。
・E・H・ヴィシャック『メデューサ』について。昔から幻想小説の名作と言われていたもの。邦訳がアトリエサードから刊行予定。
・R・L・スティーブンソン『びんの悪魔』について。非常によくできたお話。フリードリヒ・ド・ラ・モット・フーケ『地獄の小鬼の物語』という、そっくりの話がある。


第5回読書会は、3月中旬~下旬に予定しています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

3月の気になる新刊と2月の新刊補遺
2月28日刊 『ナイトランド・クォータリー vol.8 ノスタルジア』(アトリエサード 予価1836円)
3月2日刊 真魚八重子『バッドエンドの誘惑 なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか』(洋泉社 予価1512円)
3月8日刊 パーシヴァル・ワイルド『悪党どものお楽しみ』(ちくま文庫 予価972円)
3月9日刊 C・S・ルイス『ナルニア国物語3 馬と少年』(光文社古典新訳文庫)
3月11日刊 ダリル・グレゴリイ『迷宮の天使 上・下』(創元SF文庫 予価各972円)
3月中旬刊 ロマン・ギャリ『ペルーの鳥 死出の旅へ』(水声社 予価3024円)
3月16日刊 イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』(白水Uブックス 予価1620円)
3月17日刊 高原英理『怪談生活 江戸から現代まで、日常に潜む暗い影』(立東舎 予価1944円)
3月17日刊 オーリン・グレイ/シルビア・モレノ編『ファンギ 菌類文学アンソロジー』(Pヴァイン 予価1728円)
3月21日刊 ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』(創元海外SF叢書 予価2592円)
3月21日刊 G・K・チェスタトン『ブラウン神父の知恵 新版』(創元推理文庫 予価799円)
3月21日刊 キャンデス・フレミング『ぼくが死んだ日』(創元推理文庫 予価972円)
3月22日刊 小泉喜美子『痛みかたみ妬み 小泉喜美子傑作短篇集』(中公文庫 予価799円)
3月27日刊 『楳図かずお『漂流教室』異次元への旅』(平凡社 予価1296円)


 これはもう、タイトル勝ちですね。真魚八重子『バッドエンドの誘惑 なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか』は、「なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか」を追った評論。

 『ペルーの鳥 死出の旅へ』は短篇集。ロマン・ギャリは、フランスのゴンクール賞作家、いわゆる「文豪」なのですが、邦訳されている短篇は、ちょっと変わった作品が多く、面白く読んだ覚えがあります。『孤島奇譚』『ヒューマニスト』など。ホラーアンソロジーに収録された短篇『終わらない悪夢』は、純粋なホラー作品ではないですが、迫力のある作品でした。
 他の短篇がどんな作風なのか、気になる作家ではありますね。

 イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』は、〈我々の祖先〉三部作のひとつ(他は『まっぷたつの子爵』(晶文社)と『木のぼり男爵』 (白水Uブックス))。この三部作は、カルヴィーノ作品の中でもエンターテインメント度が非常に高い作品なので、オススメです。

 オーリン・グレイ/シルビア・モレノ編『ファンギ 菌類文学アンソロジー』は、キノコや菌類をめぐる作品を集めたアンソロジーとのこと。収録作品の一部が公開されていましたので、載せておきます。

ぞっとするような正当派のホラー
「菌糸」ジョン・ランガン

奇妙なキノコ辞典からの抜粋のような掌編
「白い手」レイヴィー・ティドハー

ある目的のためにキノコの潜水艦に乗った男の悲しい物語
「かわいいトリュフの女の子」カミーユ・イレクサ

スチームパンクと魔法とラヴクラフトをミックスしたウエスタン風物語
「セージの最後の花」アンドルー・ベン・ロミニ

共通の幻覚体験をもたらす特殊なキノコの話
「巡礼する処女たち」クリストファー・ライス

バロック風の奇怪な物語
「ミッドナイト・マッシュランプス」W・H・パグマイア

探偵ものボディホラー小説
「死体の口、胞子の鼻」ジェフ・ヴァンダーミーア

保守的な植民村に暮らす人々の欲望の物語
「山羊の花嫁」リチャード・ギャビン

苦悩と喪失をめぐる美しい物語
「死者が夢見る場所」A・C・ワイズ 

ほか

 ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』は、発刊告知からずっと楽しみにしてきた作品です。紹介文が期待を煽りますね。「謎の支配人、壁に掛けられた抽象画、そして運命の女。偽名でホテルを渡り歩く男が遭遇する異様な一夜に始まる恐怖。J・G・バラード『ハイ・ライズ』+スティーヴン・キング『シャイニング』ともいうべき巨大建築幻想譚!

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波との暮らし方  パス『波と暮らして』とその絵本化作品
400110864Xぼくのうちに波がきた (大型絵本)
オクタビオ・パス キャサリン・コーワン マーク・ブエナー
岩波書店 2003-06-20

by G-Tools

 メキシコの詩人オクタビオ・パスに、『波と暮らして』(井上義一訳 木村榮一編『美しい水死人 ラテン文学アンソロジー』福武文庫収録)という、幻想的な短篇小説があります。
 海に出かけた男性が、「波」を見初めて家に連れ帰り、一緒に暮らし始めます。最初は楽しかった生活ですが、気まぐれな「波」は、物を壊したりと自分勝手を始めます。逃げ出した男性が、冬に家に戻ってみると…という物語。
 「波」を「女性」の擬人化として描いた、ファンタスティックな作品です。男性をからかったり、嫉妬させたりと、現実の女性のアナロジーとして描かれており、官能的な要素も強くなっています。

 かなりエロティックな作品といえるのですが、なんとこの作品を絵本化した作品があります。それがこれ、『ぼくのうちに波がきた』 (キャサリン・コーワン文、マーク・ブエナー絵 岩波書店)。
 子供向けのアレンジのため、エロティックな要素はなくなっています。そのため、こちらの作品では、主人公は少年で、「波」は少女として描かれています(といっても、ヴィジュアル的にはただの「波」なのですが)。「波」が少女(子供)のように描かれているため、後半に波が荒れ狂う場面も、子供のわがままとして解釈できるところは、見事な換骨奪胎ですね。
 お話の流れは、原作とほぼ同じです。原作では「波」を連れ帰ろうと、飲料水タンクに「波」を入れた主人公が、毒を入れた容疑をかけられ、刑務所に1年間入れられてしまうという部分があるのですが、さすがにそれはカットされています。
 画面いっぱいにヴィジュアル化された「波」が非常にユーモラスに描かれており、見応えがあります。これは絵本ならではの表現ですね。
 絵本だけで読んでも、充分魅力的ですが、原作と絵本を読み比べると、いっそう楽しめると思いますので、気になった方はぜひ。
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怪奇幻想読書倶楽部 第4回読書会 参加者募集です
 「怪奇幻想読書倶楽部 第4回読書会」を、下記の日程で開催します。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、連絡をいただきたいと思います。 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2017年2月26日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:1200円(予定)
テーマ
第1部:夢と眠りの物語
第2部:テーマなしフリートーク

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。メインは「怪奇幻想」ですが、ミステリ・SF・ファンタジー・文学・コミックなど、関連分野についても話しています。
※個人の発表やプレゼンなどはありません。話したい人が話してもらい、聴きたいだけの人は聴いているだけでも構いません。
※基本的には、オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも、安心して参加できると思います。

第1部のテーマは「夢と眠りの物語」。
 古来より神秘的とされてきた「夢」と「眠り」。古典の時代から現代まで、物語においても、様々に取り上げられてきました。
 例えば、ホルヘ・ルイヘ・ボルヘス『円環の廃墟』、ジョン・コリア『夢判断』、夏目漱石『夢十夜』、エドモンド・ハミルトン『眠れる人の島』、筒井康隆『パプリカ』、キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』、内田善美『星の時計のLiddell』、ロバート・R・マキャモン『夜襲部隊』、アーシュラ・K・ル・グィン『天のろくろ』、澁澤龍彦『夢ちがえ』など。魅力的な「夢」と「眠り」にまつわる物語について話したいと思います。

第2部は、テーマを限定しないフリートークとして、最近読んだ面白い本や映画の話、紹介したいオススメ本の話、参加者に聞いてみたい疑問など、興の向くままにおしゃべりしたいと思います。

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プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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