101匹死んだ猫大行進  サイモン・ボンド『死んだ猫の101の利用法』
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B000J7UVNA死んだ猫の101の利用法 (1981年)
二見書房 1981

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 自殺するうさぎを描いたブラック・ユーモア漫画集『自殺うさぎの本』と、その続編『またまた自殺うさぎの本』(ともにアンディ・ライリー著 青山出版社)は、大変に面白い作品でした。一部で話題を呼んでいるようで、ファンとしては嬉しいかぎり。二冊セットでクリスマス限定バージョン(『自殺うさぎの本 死ぬほどXmasパッケージ』)なんてのも出ているようですね。クリスマスプレゼントには、ちょっとブラックすぎるような気もしますが、なかなか洒落ています。
20061203190636.jpg さて、本題。今回は『自殺うさぎ…』の元祖ともいえる漫画集、サイモン・ボンド『死んだ猫の101の利用法』(二見書房)を紹介しましょう。タイトルからもわかるように、死んだ猫を徹底的に「モノ」として再利用する…というコンセプトのブラック・ユーモアにあふれた漫画集です。
20061203190532.jpg 日常生活に使う道具を「猫」と置き換えたらどうなるか?というのが基本的なスタンスなのですが、これがまた極端に即物的なのが特徴です。敷物として使う、なんてのは誰でも思い付きそうなネタですが、その後はどんどんエスカレートしていきます。ダーツの矢として使う、とか、書見台として使う、鉛筆立てとして使う、ローラースケートとして使う、テニスのラケットとして使う、など、多種多彩。
 一番笑えたのは「小鳥の巣箱」として使う、というもの。
 漫画なので、当然、材質とか機能性とかは全く無視しています。そのため、えっ、こんなものまで? と驚くような使い方がされていて、楽しめます。
20061203190714.jpg 『自殺うさぎ…』も、うさぎ好きの人は怒るかも、という感じがしましたが、それ以上に、この本は、猫好きにはきついかもしれません。実際、この本に怒って『死んだ人間の101の利用法』(フィリップ・リーフ著 二見書房)という漫画集を出してしまった人もいるほど。こちらの本は、猫が人間を「モノ」として使う、という漫画集。ちなみに、こちらの本は『死んだ猫…』ほど、洗練されていなくて、面白みに欠けます。
 残念なことに、この『死んだ猫の101の利用法』、現在、絶版になっています。『自殺うさぎ…』に関連づけて、復刊すれば、けっこう売れると思うんですけどね。
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カエルの降る夜  デヴィッド・ウィーズナー『かようびのよる』
4198611912かようびのよる
デヴィッド ウィーズナー David Wiesner 当麻 ゆか
徳間書店 2000-05

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20060830201732.jpg アメリカの絵本画家、デヴィッド・ウィーズナーの『かようびのよる』(当麻ゆか訳 徳間書店)は、実にユニークな絵本。
 ストーリーはごく単純です。ある火曜日の夜に、葉っぱにのったカエルが空から何千何万と飛んでくる、というだけの話。
 ストーリーを要約してしまえば、それでお終いなのですが、実際の絵は、カエルたちが空から降りてきて、町のさまざまな部分に入り込む過程をディテール豊かに描いていて飽きさせません。とくに、集団をなしたカエルが、町に襲来するシーンは、かなりインパクトがあります。
20060830201721.jpg 画風はけっこうリアリスティックなので、当然、描かれるカエルもリアルです。見る人によっては、ちょっとグロテスクに感じるかも。ただこれらのカエルの表情や動作が非常にユーモラスなので、あんまり気にはならないでしょう。 窓越しに手をふったり、家に入り込んでテレビをつけたりと、一匹一匹のカエルたちの存在感を強烈に感じさせます。
 文章は、数えるほどしかありません。さらに、それらの文章も物語を直接語るわけではありません。それゆえ、絵だけでストーリーを語らせているわけですが、これが上手い。ただ一枚の絵を並べるだけでなく、画面を分割したり、コマ割したりと、漫画的な表現を多用しています。
 従来の絵本とは一線を画した表現技法が新鮮な一冊です。

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想像力の旅  ゴンサルヴェス絵、トムソン文『真昼の夢』
4593504694真昼の夢
セーラ・L. トムソン Sarah L. Thomson Rob Gonsalves
ほるぷ出版 2006-07

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 Acrobatic_Engineering.jpgロブ・ゴンサルヴェスとセーラ・L.トムソンのコンビによる絵本の第二弾『真昼の夢』(金原瑞人訳 ほるぷ出版)は、相変わらずゴンサルヴェスのだまし絵が魅力的な本です。
 前作『終わらない夜』は、まさに「終わりのない夜」を視覚化したような絵を集めた秀作でした。今回は、タイトルを見るとわかるように「真昼」の絵、白昼での幻想的な光景を描いた絵が多く集められています。前作の「夜」と今回の「昼」と、タイトルとコンセプトがうまく対応しているのにも、感心させられます。
high_park_pickets.jpg 文章に関しては、今回もトムソンの文は冴えません。というか、ゴンサルヴェスの絵自体に「物語性」が非常に豊富に含まれているので、どんな文章をつけても蛇足のような気がしてしまうのも確かです。その意味では、トムソンは絵の雰囲気をうまく壊さないように文章をつけている、といえるのかもしれません。
 ゴンサルヴェスの絵は、だまし絵の巨匠エッシャーの作品から刺激を受けているのがよくわかるのですが、それをさらに徹底したリアリズムで描いたところに特色があります。細部が非常にディテール豊かで現実味があるのにもかかわらず、全体として何ともいえない幻想的な雰囲気を醸し出すことに成功しています。
written_worlds.jpeg この画家は、やっぱり「夜」の光景を描いた方が精細があると思うのですが、「昼」の光景もなかなか捨てがたいものがあります。今回の絵の中で一番気に入ったのは巻末の『written worlds』という作品。図書館の光景を描いているのですが、そこから様々な世界へと扉がつながっています。「想像力の旅」を視覚化したような、本好きにはたまらない魅力を持った絵です。
 前回には絵本に使われた絵のタイトルの一覧が、巻末に収められていたのですが、今回はそれがないのが、唯一残念なところでしょうか。ちなみに、上に挙げた絵のタイトルは著者のサイトで参照しました。

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うさぎの怪、ふたたび アンディ・ライリー『RETURN OF THE BUNNY SUICIDES』
0452286239Return Of The Bunny Suicides
Andy Riley
Plume 2005-01-31

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 日本語版が出るのを待ちきれないので、原書を買っちゃいました。そう、あのブラック・ユーモアにあふれたマンガ集、アンディ・ライリー『自殺うさぎの本』の続編のことです。タイトルは『RETURN OF THE BUNNY SUICIDES』(Hodder & Stoughton社)。『帰ってきた自殺うさぎ』とでもいった感じでしょうか。
 相変わらず絵が主眼で、文字はほとんどないので、英語がわからなくても充分楽しめます。
 アイディアの斬新さという点からみると、前作に譲るかもしれませんが、このシリーズの特徴である遠回しなユーモアは健在です。
 ロック歌手の振りまわすギターにしがみつく、ウィリアム・テルが矢を射る瞬間に飛び出す、レミングに引かせたボードに乗ったまま谷底に落ちる、太った女の人の椅子の下にもぐりこむ、など相変わらずその自殺の手段は多彩です。エイリアンやターミネーターなどを使ったネタも見られますが、大部分は予備知識がなくても楽しめます。全体的に、前作にあったような考えオチが少なくなっていて、直接的なネタが増えているのが目につきます。
 一番笑ったのは『ハリー・ポッター』の最新刊をネットで注文し、ドアの前のポストで待ち続けるというもの。落ちてきた本の重みで、うさぎがつぶされてしまう…という展開。そもそも、うさぎがパソコンを使えたり、カードを持っているところも、おかしいですね。さらに言うなら本の重みで死ねるの?という疑問も湧いてしまうのですが。
 日本語版が出るかどうかは不明ですので、興味を持った方は原書にチャレンジするのも一興かと思います。
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人かペンギンか  トラウト、カレンバーグ『ペンギンのペンギン』
4122041546ペンギンのペンギン
デニス トラウト Dennis Traut Thomas Calenberg
中央公論新社 2003-01

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 動物を擬人化した物語というのは、わりとよくあります。そして、実物もかわいいペンギンは、絵本に登場する率も高いように思います。この絵本『ペンギンのペンギン』(デニス・トラウト作、トム・カレンバーグ絵 谷川俊太郎訳 中公文庫)に登場するペンギンも多分にもれず、擬人化されているのですが、その擬人化の仕方が実にユニークなのです。服を着たり、運動をしたりと、人間がするようなことをペンギンにやらせているのですが、その表現が妙に淡々としています。その狙いは、元来ペンギンが持つ愛らしさを出そう、とかいうのとは全く別の方向に向かっているようです。
 ペンギンが繰り広げるどこかとぼけた情景をそれぞれ、一コママンガにしてあります。そしてその絵の下に短いキャプションが付されています。特筆すべきは、このキャプションです。普通この手の絵本では文章は添え物になりがちなのですが、本書に限っては、絵の魅力を十二分に引き出しています。ほんの短い言葉が、ときには絵と拮抗しあう。そしてときには、うまく溶け合って、そこはかとないユーモアを醸し出しているのです。
 キャプションの例をいくつかあげてみましょう。

 「ペンギンはばかげた旗に敬意を表わす。」
 「ペンギンはレジャーのすごしかたを心得ている。」
 「ペンギンは兎に対して、いわれのない軽蔑の念を抱く。」
 「ペンギンは決して赤面しない。」

 かなりリアリスティックな絵なのですが、そこで描かれるペンギンの行動や恰好は突拍子のないものばかり。そしてそれに付けられたキャプションが、シュールな世界を作り出しています。
 子どもではたぶん、この絵本のおかしさを十分に理解できないのではないでしょうか。単なるかわいいペンギンの絵本にはとどまらない作品です。まさに〈大人の絵本〉と呼ぶにふさわしい傑作。

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深夜のメタモルフォーゼ  トムソン、ゴンサルヴェス『終わらない夜』
4593504384終わらない夜
セーラ・L. トムソン Sarah L. Thomson Rob Gonsalves
ほるぷ出版 2005-08

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 Gonsalves1.jpg今回は、カナダの画家、ロブ・ゴンサルヴェスが描いた絵に、アメリカの作家セーラ・L・トムソンが詩をつけた本『終わらない夜』(金原瑞人訳 ほるぷ出版)です。詩画集といっていいのでしょうか。はっきり言って、トムソンの詩の方はどうでもいいです。それに比べてゴンサルヴェスの絵の素晴らしさ! その画風を一言で言うと「だまし絵」ということになるのでしょう。とにかく日常の風景が次第に不思議な世界に変容する、まさにその瞬間を捉えています。おそらく、だまし絵で知られるオランダの版画家エッシャーの影響が強いと思われるゴンサルヴェスの絵は、見るものを奇妙な空間に運んでくれます。
Gonsalves2.jpg 例えば、『中世の月光』と題された作品を見てみましょう。月光に照らされる深夜の回廊で、女性が蝋燭を持って歩いてゆく情景が描かれています。しかし注目すべきは、外に見える雲です。柱の間から見える月光を帯びた雲がだんだんと人の形をなして変容してゆくのです。この、段階を追って変容するイメージというのが、ゴンサルヴェスの絵の特徴です。
 「夜の飛行」では、夜ベッドに集まった子供たちが描かれています。チェック模様のシーツが、なんとまだらの畑に変化しているのです! 子供の想像力というイメージが、これほどうまく表現された例はまだ見たことがありません。Gonsalves3.jpgまた「白い毛布」という作品では、画面全面に降り積もった雪が真っ白な毛布に変容します。
 さて、ここまで紹介した作品に共通する、一つの要素に気付かれたでしょうか? そう作品に描かれた時間は、すべて夜なのです。本書の全ての作品が、夜を舞台にしています。そういう意味でタイトル『終わらない夜』は、実に本質をうまくとらえた名前だといえるでしょう。
 とにかく、眺めているだけで楽しい絵が目白押しです。誰でも一目見て、その面白さがわかる作品です。


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シンデレラを組み立てろ!  ステファヌ・ブランケ『幸福の花束』
4894190419幸福の花束
ステファヌ ブランケ St´ephane Blanquet 中条 省平
パロル舎 2005-11

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 今回はフランスの絵本作家ステファヌ・ブランケの『幸福の花束』(中条省平訳 パロル舎)です。『幸福の花束』なるタイトルを持つこの本、案に相違して、タイトルとは全く正反対のブラックな絵本です。とても子ども向けとは思えない、暗い話ばかりおさめられています。結末も全てバッド・エンディングです。しかし、陰惨さはほどんど感じられません。残酷なシーンもあるのですが、それもうまくソフィスティケートされています。
 特筆すべきは、やはりその絵柄でしょう。すべてが切り絵のようなシルエットで構成されているのです。顔の造作ははっきりしているという、よくある切り絵風のものとは一線を画します。20060222170753.jpg目や耳といった部分も全部シルエットでぬりつぶされているのが特徴。そうなると登場人物の見分けがつかないんじゃないか、と思いがちですが、そんなことはありません。シルエットとは思えない、デフォルメのきいた人物造形、その輪郭線の豊かなことといったら! とてもシルエットとは思えない存在感があるのです。
 物語もまたブラックな味わいが濃厚です。獲物を殺しまくる暴力的な猟師が、けなげな娘に恋をするが…という『あら皮』、子供を夢の中でとらえて働かせる奇怪な三人組の話『目が重くなると』、シンデレラストーリーがとんでもなく現実的な悲劇に反転する傑作『プリンセス組み立てキット』などが面白いです。
20060222170737.jpg タイトルからして魅力的な「プリンセス組み立てキット」、とくにこの作品が素晴らしいです。
 王子は、舞踏会で出会った娘に一目惚れしてしまいますが、娘は十二時になると急いで姿を消します。王子が後に見つけたのは、靴、ではなく、なんと娘の足! なのです。王子は娘は一本足なのだと考え、一本足の娘を探させますが、一向に見つかりません。するとその後、娘のもう片方の足が発見されるのです! その後、腕など、娘の体の各部分が見つかります。王子はパーツを組み立てて娘を生き返らせようとするのですが…。
 ばらばらのパーツで構成されたシンデレラ、という奇想天外な設定もさることながら、それまでおとぎ話だと思っていたストーリーが最後のシーンで、現実の出来事であったことが分かる仕組みになっています。このおとぎ話と現実が反転する結末は、とてもそこらの絵本のレベルではありません。
 作者の邦訳はどうやらこの本が初めてのようですが、もっと他の作品も読んでみたいものです。

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うさぎの怪  アンディ・ライリー『自殺うさぎの本』
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アンディ ライリー Andy Riley
青山出版社 2005-12

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 たまには目先を変えて、ヴィジュアル系の本を取り上げたいと思います。一番のおすすめは間違いなくこれです! アンディ・ライリー『自殺うさぎの本』(青山出版社)。タイトル通り、自殺するうさぎを描いた、ブラックユーモアあふれる一コママンガ集です。
 何で自殺しちゃうの? とか、何でうさぎなの? という疑問は湧くのですが、それはそれとして、このうさぎたちの自殺の手段がことごとく、まわりくどいのが特徴です。虫眼鏡で焼け死のうとしたり、時計の針で首つりをしたりします。それらがすべて時間がかかったり、効率が悪すぎる方法なのが、ユーモアを醸し出します。
 イラストの描線は単純で、うさぎの顔の表情も一向に変わらないのですが、それがまた妙なおかしさを増しています。
 考えオチというものも多く、ノアの方舟に乗り込まない、とか磁石店と刃物店の間に立つ、などにいたっては抱腹絶倒です。とにかく一度見てもらえば、その面白さがわかると思います。画像をいくつかアップしてみたので、ご覧ください。
 イギリスでベストセラーになったそうなのですが、それを考えるとイギリス人のユーモア感覚というのもすごいですね。平然とした顔をしてギャグをかます、といった趣の作品です。けっこうブラックな味わいなので、人によっては眉をひそめるかも。うさぎ好きの人にはすすめられません。

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テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。雑誌に埋もれた短編を紹介する「埋もれた短編発掘!」コーナーもあり。「奇妙な味」の作品がお好きな方は必見です。
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