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蜘蛛の波  エゼキエル・ブーン『黒い波 破滅へのプレリュード』
黒い波 破滅へのプレリュード (ハヤカワ文庫NV)
 エゼキエル・ブーンの長篇小説『黒い波 破滅へのプレリュード』(山中朝晶訳 ハヤカワ文庫NV)は、人間を襲う蜘蛛を描いたパニック・ホラーなのですが、被害の規模が世界的で、世界各地の様子がカットバックでドキュメンタリー風に描かれていくという作品です。

 ペルーの秘境を訪れていた大富豪ヘンダーソンは、ガイドたちが森の中で遭遇した蜘蛛に襲われるのを目撃し、命からがら逃げ出します。
 一方インドでは不可解な振動が観測され、中国では自国内で核爆弾が投下されたことがわかります。
 蜘蛛が専門であるワシントンの生物学教授メラニー・ガイヤーは、ナスカの蜘蛛の地上絵の下から発見されたという古代の卵嚢を受け取りますが、その卵嚢は孵化を始めようとしていました…。

 人間を襲う謎の蜘蛛が世界各地で発見され、被害が拡大する様子が描かれていきます。大量の登場人物が登場しますが、主にメインとなるのは蜘蛛の研究者であるメラニー、そしてその元夫である大統領首席補佐官マニーとマニーと恋人関係にある女性大統領ステファニーです。
 最初は南米、インド、中国などから被害が始まり、その様子を伝え聞いたホワイトハウスや関係者は必死でアメリカ上陸を防ごうと対策を立てようとします。人喰蜘蛛の上陸を防ぐことはできるのか…?

 登場する蜘蛛が強烈で、毒やウイルスではなく直接人間を食べてしまうという凶暴さ。しかも社会性を持ち集団で襲ってくるのです。繁殖は早く、成体の状態で孵化します。銃などで単体を殺すことはできますが、集団で襲われたら対策は全くないという凶悪極まりない生物なのです。
 ただ蜘蛛との全面対決が始まるのは作品のかなり後半になってからで、前半は主に小規模な被害と、それに遭遇する世界各地の登場人物たちの人物紹介といった要素が強いです。どうやら、この作品、三部作かそれに近い構想のようで、本作でも物語は完全に完結しません。あくまで一時的に事件が終息するという形で物語は閉じられます。

 ちょうど面白くなったところで終わってしまうので、正直ちょっと消化不良の感はあるのですが、スケールの大きさといい蜘蛛の恐怖感をそそる描写といい、ホラー小説として非常に面白い作品だと思います。
 続刊の邦訳が出ていないのは、売行きがあまりよくなかったせいなのでしょうか。続きが読んでみたい作品ではありますね。
 なお、蜘蛛が人間に寄生したりと、映画『エイリアン』ばりのグロテスクな描写もあるので、そのあたりが苦手な人は避けた方がいいかもしれません。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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