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最近読んだ漫画作品

黒―kuro― 1 (ヤングジャンプコミックス) 黒―kuro― 2 (ヤングジャンプコミックス) 黒―kuro― 3 (ヤングジャンプコミックス)
ソウマトウ『黒―kuro―』(ヤングジャンプコミックス 全三巻)

 少女「ココ」と真っ黒な猫「クロ」との日常生活を描くコミック作品なのですが、ホラー的な背景がだんだんと明かされるという不穏な作品です。
 少女ココは愛猫クロとともに屋敷で暮らしていました。町の道を外れると得体の知れない怪物が闊歩しており、人間を襲ってくるのです。しかしココにはその怪物たちは見えず、クロはココを守るように怪物たちを殺して回っていました…。
 特に世界観の説明もなく唐突に怪物が現れるものの、ヒロインの少女はそれらが見えず、怪物の血を浴びてもそれに気付かない…という不穏な状況で物語が始まります。どうやらこの世界では人間を襲う怪物がたくさん存在するらしいのです。
 なぜココは怪物を認識できないのか? クロは何者で、なぜココを守るのか? ココの過去に何があったのか? 複数の謎が、過去の出来事を描くエピソードで少しづつ明かされていきます。
 少女の悲しい過去と、世界に関する謎が少しづつ明かされていく展開は非常にサスペンスフル。少女を見守る大人や友人は彼女を助けることができるのか? 短めの作品ながら世界観に厚みがある作品です。結末に至っても明かされない部分もあり、いろいろ想像しながら読み進むのも楽しいですね。
 キャラクターは可愛い絵柄ながら、怪物はグロテスクで、血が出るシーンは結構強烈です。読む人を選びそうですが、傑作といっていい作品ではないでしょうか。



マリアの棲む家 (ビームコミックス)
ハセガワM『マリアの棲む家』(ビームコミックス)

 本格的なホラーコミック作品なのですが、怪異描写の邪悪さ・異様さが群を抜いています。
 五年前に行方不明になった上場企業の社長令嬢、真理愛。彼女には父親から莫大な懸賞金がかけられていました。依頼を受けた探偵日村は真理愛の捜索を開始します。奇怪なことに、捜索範囲はかって真理愛が住んでいた「一軒家内」だというのですが…。
 いわゆる「幽霊屋敷もの」に属する作品といっていいのでしょうか。行方不明(すでに死亡?)になった少女の影響で家が奇怪な状態になっており、その家に近づいた人間に悪影響を及ぼしています。この家の怪異現象の表現が、普通の霊的・超自然的なそれとは一線を画しているのが特徴です。
 特に後半に登場する「異界」の表現はシュールかつグロテスクで、その風景はまるでボッシュかブリューゲルといった趣。お話自体はわりとシンプルなのですが、この「異界」描写の強烈さだけでも印象に残る作品ですね。



おなかがすいたらおともだち (ビッグコミックススペシャル)
おぐりイコ『おなかがすいたらおともだち』(ビッグコミックススペシャル)

 人を寄せ付けない優等生といじめられっ子、二人の少女の友情を描くマンガ作品ですが、実はいじめられっ子の方はすでに死んでいて虫のような知性体に寄生されていた…というすごい話です。
 知性体は人間をエサにしていて、家にさそいこむために優等生の少女と友達になろうとする…というホラー作品なのですが、やがて人間としての友情に目覚め始めるという思いもかけない展開に。
 二人を見守る優しい教師がエサとして食べられてしまったりと残酷かつスプラッターな描写と、初々しい少女たちの友情シーンが同時進行で描かれるという独自の作風で、これは傑作といっていいのではないでしょうか。



報いは報い、罰は罰 上 (ビームコミックス) 報いは報い、罰は罰 下 (ビームコミックス)
森泉岳土『報いは報い、罰は罰』(ビームコミックス)

 イギリスから移築された巨大な屋敷を舞台にしたゴシック・ホラー作品です。全篇、闇と影に覆われたタッチが素晴らしいです。
 アメリカから帰国した清水真椿は、妹の真百合が失踪したという知らせを受けて、妹が嫁いだという小田家を訪れます。訪れた家は、一族の曾祖母ヴィクトリアがイギリスの本家から移築したという巨大な屋敷でした。
 出会った小田家の一族は、妹の夫である当主の道之をはじめ、皆が奇矯な性格の人間でした。妹のことを訊ねてもはっきりしないどころか、夫の道之に至っては既に愛人まで引き連れていたのです。屋敷とそこに住む人々に不穏な思いを感じながらも、妹が残した娘、葛野を連れ帰ろうと考える真椿でしたが…。
 何やらいわくのあるらしい屋敷と一族、妹はいったいどこに消えたのか? やっと出会えた姪も何やら精神的におかしくなっているらしく、主人公は困惑します。そもそも主人公自体、夫との結婚生活が破綻し、精神的に不安定になっているのです。そんな中、やがて殺人が起こりますが…。
 全篇、屋敷を覆うタッチは闇と影ばかりであり、序盤、まだ何も起こっていない段階からして、すでに禍々しい雰囲気が漂っています。ただの部屋や廊下の描写なのに、これほどの「暗さ」の描写は初めて見ました。正直、怪奇現象や霊現象が起こらなくても、すでに「怖い」です。
 妹の失踪、一族が抱える思い、心を閉ざす姪、精神のバランスを崩した主人公、そしていわくのある巨大な屋敷…。不穏な要素のオンパレードで、不安になるような作品です。読んでいて、シャーリイ・ジャクスン『丘の屋敷』を思い出しました。
 一族の血の争いと超自然現象が同時に進行するという、本格的なホラー作品で、近年のホラーコミックの収穫の一つと言っていいのではないでしょうか。結末に至るまで解けない謎もあり、物語が「広がり」を持っているところも魅力的です。



セリー (ビームコミックス)
森泉岳土『セリー』(ビームコミックス)

 近未来、大幅な気候変動で人類が滅びつつある世界を舞台にした作品です。
 気候変動により、文明と人類がゆっくり滅びつつある時代、成人男性カケルは標準型ヒューマノイドのセリーとともに、家に留まっていました。備蓄や発電設備もあり、何より書庫のある家をカケルは愛していたのです。
 日々、書庫の本をセリーとともに読んでいたカケルでしたが、ある日突然システム・エラーが起こります…。
 滅びつつある世界の中でひたすら本を読み続ける…という静謐さにみちた作品です。未来のない世界で、本の記憶を残すことに何の意味があるのか…?
 「書物」や「記憶」が重要なテーマになっている作品で、幻想小説好きの方の琴線に触れる作品だと思います。
 併録の短篇「手牛の血」も、非常にシュールな味わいの作品で楽しめます。
 透明なカバーを始めとした造本もとてもお洒落ですね。



THE  MOON (1) (小学館文庫) THE  MOON (2) (小学館文庫) THE  MOON (3) (小学館文庫) THE  MOON (4) (小学館文庫)
ジョージ秋山『ザ・ムーン』(小学館文庫)

 1972~1973発表の、少年たちが精神力でロボットを操作し、悪と戦うというロボット漫画なのですが、善悪の観念が揺らぐような思想、強烈なバッドエンドと、少年漫画の枠には収まりきらない問題作です。
 少年サンスウを初めとする9人の子供たちは、大富豪魔魔男爵から、巨大ロボット「ザ・ムーン」を贈られます。莫大な金を使って作られた「ザ・ムーン」は、少年たち9人の精神力が揃ったとき初めて操作することができるのです。少年たちは日本の平和を脅かす敵たちと戦い続けることになりますが…。
 正義心の強い少年少女たちがロボットを使って敵と戦う…という、一見、ロボット漫画のフォーマットに則った作品なのですが、ところどころ少年漫画の枠を超えたような描写や思想が現れる、異様な迫力のある作品です。
 登場する敵たちの考えもそれなりに筋が通っており、中には単純に悪とは言い切れない人物も登場します。そんななか、主人公たちも自分たちが本当に正義なのか自問するシーンも見られたりと、善悪の相対化が見られるのです。
 ロボットがあるといはいえ、主人公たちは基本的に普通の子供たちであり、素手ではそれほどの力があるわけではありません。彼らを狙ってくるプロの暗殺者たちもあり、囚われたり攻撃されたりと、少年たちを分断しようとする勢力も現れてきます。
 そんな中、魔魔男爵の配下である忍者「糞虫」が彼らをサポートすることになります。この「糞虫」、ネーミングはひどいのですが、凄腕の忍者であり、人間離れした動きと戦闘力で、度々子供たちの危機を救います。
 「ザ・ムーン」は子供たち9人が揃わないと動かないため、その秘密を知った敵たちは子供たちを分断しようとします。ロボット起動まであと一人足りない…というのが、毎回サスペンスを高める働きをしていますね。
 主人公の少年がサンスウ、ヒロインがカテイカなど、9人の子供たちの名前が皆、学校の科目名と同じになっているのも面白いところです。
 「ザ・ムーン」は「格好いい」というよりは、どこか「不気味さ」のあるロボットで、起動音が「ムーン、ムーン」という擬音で表されるのも独特です。起動時に目からオイルが流れ、それが泣いているように見えるというのもユニークですね。この表現が最終話では非常に効果的に使われています。
 今読んでも、その前衛性・先駆性が感じられるぐらいなので、発表当時(1970年代初頭)は相当ショッキングな作品だったのではないでしょうか。



デロリンマン 1970・黒船編
ジョージ秋山『デロリンマン 1970・黒船編』(復刊ドットコム)

 異色のヒーローものマンガ『デロリンマン』の連載後半部分で、長らく読めなかったもの。SF要素が強めの「破滅SF」作品です。
 『デロリンマン』は元々ギャグ漫画なのですが、この『黒船編』では、黒船に乗ったぺリル星人という宇宙人が自分たちの正義を主張し、地球を征服する…というシリアス路線のお話になっています。
 主人公のデロリンマンは、両者を和解させようと奮闘しますが空しく、地球は滅ぼされてしまいます。クライマックスでは後年の作品『ザ・ムーン』で登場するロボットの原型が登場します。ただこのロボット、敵の宇宙人側の兵器で、人間側はなすすべがありません。
 なかなか面白く読んだのですが、そもそも原典の『デロリンマン』を読んでいないのもどうかと思い、そちらの方も読んでみました。



デロリンマン 1~最新巻(文庫版) [マーケットプレイス コミックセット]
ジョージ秋山『デロリンマン』(徳間コミック文庫)

 オリジナル(といっても連載の前半部分です)はこんな話です。主人公が自殺未遂によって二目と見られぬ顔になってしまうのと同時に、精神にも異常を来たしますが、自らをデロリンマンと称して人々を助けようとします。しかし全てが空回りしてしまう…という作品。
 妻子に再会してもその容貌ゆえに父親と認めてもらえないうえに、いろいろとひどい目に会う…という悲喜劇で、タッチはギャグながらかなり強烈なテーマ性を持った作品です。
 ややこしいことに『少年ジャンプ版』(後半は黒船編)のあとに『少年マガジン版』があり、『マガジン版』はリメイクになっています。『マガジン版』の方が少し救いがあって、後半でデロリンマンは妻子に認めてもらい一緒に暮らすようになります。
 しかしこちらはこちらでブラックな展開があります。デロリンマンの息子が事故のショックで変貌してしまい「独裁者ノーリターン」なる怪人になってしまうのです。
 どちらのバージョンでもデロリンマンの思想を否定する「オロカメン」という仮面のキャラクターが登場し、デロリンマンと対立します。「力なき正義は無力」という、後の『ザ・ムーン』にもつながるテーマは興味深いところですね。
 2000年代になってから書かれたという『平成版』というのもあって、こちらも『黒船編』に収録されているのですが、タッチがリアルすぎて、こちらはちょっと違和感がありますね。



地上最強の男竜
風忍&ダイナミックプロ『地上最強の男 竜』(角川書店)

 ギャグすれすれのツッコミどころ満載のマンガなのですが、飽くまでシリアスに展開される作品です。カルト作品として有名になっているようですね。
 なぜか世界中から命を狙われる男、竜が主人公。彼はかってその強すぎる力で対戦相手を殺してしまっていました。対戦相手の恋人である女性は、竜の師匠に武芸を習い、彼を殺そうと襲ってきますが…。
 仮面によって力を封印されているとか、序盤の時点でかなりおかしい設定ではあるのですが、復讐をメインに据えた前半部分はまだまともな雰囲気です。
 強烈なのは後半です。竜を倒すために封印されていた救世主キリストが復活し、キリストはさらに最強の男として宮本武蔵とブルース・リーを復活させるのです。
 毎ページどこかしら「変」だという、シュールな格闘マンガなのですが、これがまた読んでいて面白いのですよね。画力が高いだけに、その「変」さも際立っています。
 1977年発表ですが、今読んでも面白い作品です。



聖マッスル
『聖(せんと)マッスル』(ふくしま政美画、宮崎惇原作 太田出版)

 カルトコミックとして有名な作品ですが、予想以上にシュールで迫力のある作品でした。荒廃した世界を舞台に、記憶を失った主人公の男が様々な都市をめぐりながら人間の生き方について考える…という、結構真面目で真摯なテーマの作品なのですが、グロテスクなまでに誇張された人間の肉体や筋肉の描写が強烈で、テーマの方がかすんでしまうというシュールな作品です。
 なぜか主人公が登場時からずっと全裸という設定からしてシュールです。第一話に登場する敵とその屋敷の描写も異様なグロテスク味があって、序盤から唖然としてしまう人が多いかと思います。最初はギャグやユーモアのつもりでやっているのかと思いながら読み進んでいくと、大真面目にやっていることが段々わかってきます。そのテンションに慣れてくると、これはこれで面白い作品だと思えるようになるから不思議ですね。



ひょうひょう
ネルノダイスキ『ひょうひょう』(アタシ社)

 ユニークな発想と珍妙な世界観で、とにかくシュールなマンガ作品です。何が起きてどうなるのか、最初から最後まで予想がつかない…という意味ですごく面白い作品集ですね。
 柴犬の尻を拭く部署に配属された新人社員を描く「コーサ」、同居人の壁の住人との生活を描く「エソラゴト」、死後の世界を探索するという「アザーサイド」、捨てられた家を焼く仕事を描いた「家葬」、ある日田んぼに現れた謎の存在「もへじ様」との対決を描いた「へのへのもへ」、古い絵皿の中の世界に入ってしまうという異世界譚「皿TRIP」などが面白いですね。
 死後の世界を見て回るという「アザーサイド」はホラーとして読んでもいいようなかなり怖い作品です。謎の存在「もへじ様」に襲われる一行がそれを封印しようとする「へのへのもへ」はアクションもあって楽しい作品。
 古い絵皿の中に別世界があって、そこに仙人のような存在が住んでいるという「皿TRIP」は、中国の古い幻想物語を思わせて味わいがありますね。
 登場人物たちは、主にシンプルな描線の猫のような存在として描かれるのに対して、背景や物体に関してはかなり描きこまれていて、その対比も面白いです。特に「アザーサイド」で描かれる死後の光景は、リアルかつシュールで見ごたえがありますね。



グランド・ツアー―英国式大修学旅行 (中公コミック・スーリスペシャル)
石ノ森章太郎『グランド・ツアー 英国式代修学旅行』(中央公論社)

 18世紀、英国貴族の子弟の教育の一環として行われていたフランス・イタリアなどをめぐる旅行、通称「グランド・ツアー」をマンガ仕立てで描いた作品です。
 「グランド・ツアー」は、英国の貴族の子弟が当時文化の先進国だったフランスやイタリアの各都市を教育を兼ねてめぐるという大旅行。短い場合は一年、長い場合は五年近くも旅行して回ったといいます。
 ぼんくらの若殿トーマスと家庭教師のスミス先生を主人公として、ヨーロッパの各地(といってもフランス・イタリア・スイスです)をめぐる旅がユーモラスに描かれていきます。外国語がわからなくて立往生したり、スリにあったり、現地の女性に目を奪われたりと、二人の旅はなかなか上手くいきません。
 パリの街が非常に汚かったとか、貴婦人の結い上げた髪の中に虫がいっぱいいるとか、オペラや芝居を客がちゃんと見ていないとか、当時の町や人々の様子が美化せずに描かれているところが面白いですね。
 原作は、本城靖久『グランド・ツアー 英国貴族の放蕩修学旅行』(中公文庫)というノンフィクションで、こちらもすごく面白い本です。石ノ森章太郎はこちらの本のエッセンスを上手く絵に置き換えていて、秀逸な作品になっていると思います。



未来の想い出 (ビッグコミックス)
藤子・F・不二雄『未来の想い出』(小学館)

 漫画家、納戸理人はかっては人気作家だったものの、今では作品を打ち切られるなど落ち目になっていました。参加したゴルフコンペでホールインワンを出した納戸は、ショックで気を失います。気がついた納戸は、自分が漫画家の卵だった20年前に戻っていることに気がつきます。
 納戸は、自分の作品で新たな道を模索すると同時に、命を落としたかっての憧れの女性、水谷晶子の苦境を救おうと考えます。しかし運命を変えようとすると、強烈な頭痛が始まってしまうのです…。
 漫画家の主人公が何度も人生をやり直すという「ループもの」作品です。人生を変えようとすると「運命」が邪魔をしようとしたり、別の形で災難が降りかかるなど困難はあるものの、大体において、主人公の願いは少しづつ実現していきます。その意味で、多少物足りない感がしないではないのですが、主人公のポジティブさとも相まって、非情に読後感のいい作品になっています。
 読んでいて、ジャック・フィニィのいくつかの作品や、リチャード・マシスン原作の映画『ある日どこかで』、ケン・グリムウッド『リプレイ』など、似たテーマの作品が思い浮かんできますね。
 『未来の想い出』には、こうした時間SFテーマのエッセンスが作品全体に散りばめられていて、海外のSF小説が好きな方には非常に楽しめる作品だと思います。



憂夢: あの頃にもう一度 (1) (ビッグコミックススペシャル) 憂夢: 面影ふたたび (2) (ビッグコミックススペシャル) 憂夢: 愛のはじまり (3) (ビッグコミックススペシャル)
藤子不二雄A『憂夢』(小学館ビッグコミックス)

 レンタルビデオ店「憂夢」から借り出したビデオを見た客に、様々な不思議な出来事が起こる…という作品。同著者の有名作『笑ゥせぇるすまん』と同じく、ちょっとブラックなオムニバス短篇連作集です。
 この『憂夢』に、ジャック・フィニィへのオマージュがあります。第1話のタイトルは「ふりだしに戻る…」であり、作中にフィニィの本そのものも登場するというフィニィのファンには非常に楽しいエピソードになっています。
 ビデオというメディアが題材になっている関係上、ノスタルジックなエピソードも多く、作品の成立そのものにフィニィ作品の影響もおそらくあるのでしょう。
 エピソードの内容は、妻子と別居同然になっているベテラン漫画家が、レンタルビデオ店「憂夢」でビデオを借りるが、そこには若き日の自分と思いを寄せる女性の姿が映っていた…というお話です。A先生らしくブラックな結末が待っています。
 今となってはビデオというメディア自体が古くなってしまいましたが、この作品の作風上、今読むと逆にレトロな雰囲気も感じられていい味を出しています。憂夢は、世界に一つだけしかないというビデオを、毎回9990円で貸し出すのですが、これは安いのか高いのか…。
 ちなみに作中に登場する『ふりだしに戻る』は、1973年刊の角川書店の海外ベストセラー・シリーズ版ですね。1991年に角川文庫版が刊行されるまで、この本は入手が難しく、貴重な本でした。

テーマ:アニメ・コミック - ジャンル:アニメ・コミック

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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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