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生命の火  J・H・ロニー兄『人類創世』
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 J・H・ロニー兄(1856-1940)の長篇小説『人類創世』(長島良三訳 カドカワ・ノベルズ)は、先史時代を舞台にした冒険小説といっていい作品。主人公たちが生き延びるためのサバイバル描写の細かさ・リアルさには迫力があります。

 他部族の襲撃を受けたウラム族は、部族のものを殺されただけでなく、何世代にもわたって守ってきた「火」を奪われてしまいます。「火」なしでは部族が滅んでしまうと考えた部族の長ファムは「火」を持ち帰ってきた者には姪のガムラを与えると約束します。
その強さを認められた若者ナオは、二人の仲間と共に旅に出ることになります。一方その残酷さで部族中の嫌われ者アゴウも、ガムラ欲しさから、二人の兄弟と共に出かけることになりますが…。

 先史時代を舞台に、「火」を求めてさすらう若者たちの冒険を描いた作品です。人類は狩猟採集で生きているという段階で、碌な武器も持っていません。周りはマンモス、ライオン、虎、熊、狼など猛獣だらけで、人類自体が非常に弱い存在であるというシビアな状況なのです。
 主人公ナオの一行は、出かけた直後から次々と猛獣に襲われてしまいます。一歩選択を間違えると即死んでしまうという状況は非常にサスペンスたっぷり。猛獣の群れを抜けたと思ったら、別の部族との遭遇、人喰人種に襲われたりと、全く気が抜けません。

 猛獣や人喰人種など、戦闘シーンは詳細かつリアルで非常に迫力があります。毎日が生き延びるための連続なので、気が休まるひまがないほどトラブルが発生し続けます。その意味で、100年以上前の作品ではありますが、エンターテインメント作品として充分に楽しめる作品になっているように思います。
 また、別の部族との接触で新たな技術を学んだり、マンモスや猛獣たちとの戦いの中で自然の知識を学習したりと、先史時代小説ならではの面白さもありますね。

 J・H・ロニー・エネ(兄)(1856-1940)はベルギー出身のフランス作家。兄弟作家でしたが後にそれぞれ独立して、ロニー兄とロニー弟のペンネームとなります。兄の方はSFの先駆的な作品や幻想的な作品を書いて、SFの先駆者の一人とされています。
 翻訳はいくつかあって、コミュニケーション不可能な異星人と古代人との遭遇を描く「クシペユ」、不可視の世界の生物を描く「もうひとつの世界」、異次元の存在を匂わせるユニークな吸血鬼小説「吸血美女」などがありますね。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
2019年10月に作成した「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を盛林堂書房さんで通信販売中です。
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