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真実の探究  E&H・ヘロン『フラックスマン・ロウの心霊探究』
フラックスマン・ロウの心霊探究 (ナイトランド叢書3-6)
 E&H・ヘロン『フラックスマン・ロウの心霊探究』(三浦玲子訳 アトリエサード)は、シャーロック・ホームズと同時期に発表されたオカルト探偵ものの先駆的作品です。収録作は何篇か邦訳もありますが、全訳は初めてになりますね。

 心霊学に精通する学者肌の探偵フラックスマン・ロウが、様々な怪奇事件に遭遇し、それらを解決していくという作品です。黎明期の作品ゆえか、型にはまらない構成や展開が多く、ユニークな味わいがあります。
 まず主人公ロウは、基本的に単独で動きます。エピソードによっては協力者も出てくるのですが、相棒などはおらず単独で捜査を行います。また「心霊研究者」でありながら、その捜査は意外と現実的で、怪奇現象に対しても冷めた意識を持っているのが特徴です。実際、個々の事件も超自然現象に見えたものがそうでないことがわかるパターンもあります(といっても、相当おかしな現象ではあるのですが)。
 また超自然現象が絡む場合にも、純粋に霊的な現象というよりも、妙に物理的な側面があることが多いという印象です。それが端的に現れたのが既訳もある「ハマースミス「スペイン人館」事件」で、この短篇で現れるのは純粋な霊現象であるにも関わらず、物理的な対応が可能なのです。

 探偵が理性的かつ冷めている(淡白である)ので、事件の真相を見抜くものの、とくに明確な解決をせずに終わってしまう…という、あっさりした作品もあったりするのが面白いですね。

 収録作中では、異常な身体能力を持つ謎の男に襲われる「荒地道の事件」、幽霊とも吸血鬼ともとれる怪物の登場する「バエルブロウ荘奇談」、次々と人が吊られて死んでしまう呪われた屋敷を描く「グレイ・ハウス事件」、一族の者は必ず自殺してしまう呪われた家系を描いた「セブンズ・ホールの怪」、死んだカリスマ指導者の霊が生者に憑依するという「サドラーズ・クロフト事件」、そこで過ごすと突然死してしまう屋敷を描いた「カルマ・クレッセント一番地の謎」、ロウとその宿敵の対決を描く「クロウズエッジの謎」「フラックスマン・ロウの事件」などが面白く読めます。
 巻末の二篇は直接物語がつながる連作になっています。ロウと同等か、それ以上に心霊能力を持つ宿敵が現れ、探偵は苦境に追い込まれることになるのです。

 この作品集、怪奇現象に対するアプローチが風変わりなこと、事件が超自然現象であることもそうでないこともあることなどから、次にどんなことが起こるのか予想できない面白さがありますね。今現在読んでも、感覚が新しい作品がちょこちょこあります。特に「荒地道の事件」は、まるで現代のホラー映画みたいな展開で、かなり面白く読みました。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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