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クリスマスの恐怖 『ミステリアス・クリスマス1・2』
ミステリアス・クリスマス 7つの怖い夜ばなし
 『ミステリアス・クリスマス 7つの怖い夜ばなし』(安藤紀子ほか訳 ロクリン社)は、1990年代初頭にイギリスで刊行されたクリスマス怪談集3冊より、7つの作品を選んだアンソロジーです。ヤングアダルト向けながら、ひたすらダークでブラックな作品ばかりなのが特徴。

ジリアン・クロス「スナップドラゴン」
 クリスマスの日、問題児のトッドのいたずらにつき合わされるベンでしたが、幽霊屋敷と噂される家に忍び込んだトッドは怪我をして動けなくなってしまいます。誰もいないはずの家にはなぜか老婆がいて、一緒に遊びをしようというのですが…。
 いたずらをする子供が異界に連れ去られてしまう…という物語。結末はかなり怖いですね。

デイヴィド・ベルビン「クリスマスを我が家で」
 父親の虐待に耐えかねて路上生活をしていた少年ビリーは、食べるものにも事欠くようになり、仕方なく実家に帰ろうとヒッチハイクをすることになります。ようやく載せてくれた運転手の男ハンクは、ビリーに恐るべき話を始めますが…。
 ヒッチハイクで載せてくれた男は精神異常者だった…という話かと思いきや、実に意外な展開に。少年も運転手の男も暗い過去を背負っているという、現実的にも重い描写がされてゆきます。
 残酷な話ながら、どこかしんみりとした味わいもありますね。まるで、リチャード・ミドルトン「ブライトン街道で」の現代的な変奏といってもいいような作品です。

スーザン・プライス「果たされた約束」
 クリスマスの夜、外出した母親の代りに弟のケニーの面倒を見ていたデイヴィドは、いい子にしていなければサンタクロースの代りに魂をさらうウォータンがやってくると脅します。やがてケニーの姿が見えなくなったことに気付いたデイヴィドでしたが…。
 悪気はなく異教の神に祈ってしまった少年のもとに、実際に神が現れてしまう…という物語。
 弟を助けようと必死になる少年でしたが、残酷な結末が待っています。

ロバート・スウィンデル「暗い雲におおわれて」
 母親が病気のため部屋にこもるようになって以来、家庭が暗くなっていくことを心配していたローラは、ある日画廊のウィンドウで空が雲に覆われた絵を見つけ惹きつけられます。絵を見るたびに、雲の間から日がさしてくるように変化していたのです。
絵の変化とともに母親の体調が回復しているのを見たローラは、絵を手に入れたいと考えますが…。
 変化する絵と病気の母親を描いた非常にいい話、と思いきや、とんでもなくブラックな展開になってしまうのに驚きます。

ギャリー・キルワース「狩人の館」
 狩の最中、事故で銃弾を受けて気を失った男が目覚めると、目の前には優雅な館が建っていました。<狩人の館>と呼ばれるその屋敷には狩人たちばかりが集まっているといいます。そしてその狩人たちは皆既に死んでいるのだと…。
 死後の世界を描いた作品なのですが、そこは狩人のみが来る世界だった…というユニークなテーマの作品です。結末にはブラック・ユーモアが効いていますね。
 キルワースの名前に見覚えがあると思ったら、SFアンソロジー『アザー・エデン』「掌篇三題」を寄せていた人ですね。「掌篇三題」もそうでしたが、この人の作品はどれもユニークで惹かれるものがあります。

ジョーン・エイキン「ベッキー人形」
 両親から構われなかった少年ジョンは、おじの家に預けられていました。従姉のベッキーが名付け親から高価な人形をもらったのを見たジョンは、その人形を盗んでやろうと考えますが…。
 少年の行動と超自然現象との因果関係が明確には描かれないものの、登場する人形の不気味さは強烈です。集中でも力作と呼べる作品ですね。

アデーレ・ジェラス「思い出は炎のなかに」
 父親と暮らすルーは、ある日ショッピング街の中に「思い出は炎のなかに」という変わった名前の店を見つけます。クレイオーと名乗る店主の女性はルーに過去を思い出させるという緑のろうそくを買うことを勧めますが…。
 過去を思い出させる不思議なろうろくの力で、皆が少しだけ幸せになる…という物語。このアンソロジーの中では、唯一ポジティブな作品です。

 この『ミステリアス・クリスマス』、1999年にパロル舎から刊行された同名の本の改訳新版です。2016年刊行なので、まだ新刊で手に入るのではないでしょうか。
 ちなみに、続編『メグ・アウル ミステリアス・クリスマス2』は復刊されていないようです。



メグ・アウル―ミステリアス・クリスマス〈2〉
 『メグ・アウル ミステリアス・クリスマス2』 (安藤紀子ほか訳 パロル舎)は、クリスマス怪談を集めた『ミステリアス・クリスマス』の続編のアンソロジーです。『1』同様、ブラックな作品が多く集められています。

ジリアン・クロス「クリスマス・プレゼント」
 実父に甘やかされたイモジェンとポールは、あまり富裕でない義父ヘンリーに不満を抱いていました。二人は「ファーザー・クリスマス」を信じているヘンリーの連れ子ベッキーを唆して、欲しい物リストを作らせますが…。
 性根の悪い子供が恐ろしい目に会う…という物語。超自然的な存在を仄めかす結末も見事ですね。

ギャリー・キルワース「メグ・アウル」
 ティムはある日道で妙な卵を拾い、家に持ち帰ります。やがて卵から生まれたのは年取った女の顔をしたフクロウでした。フクロウは邪悪な力でティムを操るようになりますが…。
 人間に自らの餌を運ばせるという邪悪なフクロウ「メグ・アウル」の力に囚われた少年を描く作品です。少年がやらされる行為が非常にグロテスクで気味が悪いですね。集中でも、ブラックさでは群を抜いている作品です。

ジル・ベネット「また会おう」
 ピーターは義父の娘メアリ・アンへのプレゼントとして、ふと買った奇妙なビデオテープを贈ります。それは見るたびに内容が変わる不思議なテープでした。それを見たメアリ・アンの様子は段々とおかしくなり、やがて家族を不幸が次々と襲います…。
 ビデオテープというガジェットがいささか古びてしまっている部分はあるものの、不気味な雰囲気はなかなかです。メアリ・アンの人格が変わってしまったことを示すラストシーンはインパクトがありますね。

テッサ・クレイリング「クリスマスの訪問者」
 クリスマスの日、おばの家に預けられたポールは、仄かに思いを寄せる従姉のクリスティーナに会えて喜んでいました。しかしクリスティーナの妹アンシアから姉には恋人がいるらしいことを聞いてショックを受けます。
 一人留守番することになったポールは、クリスティーナの日記を覗き見しようとしたところ、何か動物のようなものが家に侵入しようとしていることに気がつきますが…。
 クリスマスに家を訪れた妖怪らしき存在を描く物語。様々なものに化けたりと、日本の妖怪譚のような趣もありますね。

スーザン・プライス「荒れ野を越えて」
 炭坑で働く兄のジョンを迎えにきたエミリー。しかし、ジョンはせっかく買った鵞鳥をかけてレスリングの賭けを行い、負けてしまいます。取り返すために再度の賭けを申し込むジョンでしたが、どうやら相手は生きている人間ではないようなのです…。
 死者と賭けをすることになった兄妹を描く物語。二人は生きて帰れるのかどうか、クライマックスのサスペンス感は強烈です。

 このアンソロジー、ヤングアダルト向けながら、ブラックな結末だったり、怖い作品が多く、子供が読んだらトラウマになってしまいそうな作品が多く収録されています。逆に、大人が読んでも面白く読み応えのある作品が多いので、怪奇・ホラー作品がお好きな方にはお薦めしておきたいと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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