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幻想の少女  ジェフリー・フォード『ガラスのなかの少女』
ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 ジェフリー・フォードの長篇小説『ガラスのなかの少女』(田中一江訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)は、1930年代のアメリカを舞台にインチキ降霊術師たちが少女誘拐に巻き込まれるという、ユーモア・陰謀・サスペンスなど多彩な要素のある楽しい作品です。

 メキシコからの不法移民であるディエゴはインド人に扮し、父親代わりの凄腕詐欺師シェル、腕っ節の強いアントニーとともにインチキ降霊術で荒稼ぎしていました。富豪パークスの依頼による降霊術の席上、シェルはガラスの中に幻の少女を目撃します。
 少女は、誘拐された名士の娘シャーロット・バーンズではないかと考えたシェルたちは、娘の父親バーンズに誘拐事件の捜査の協力を約束します。そこで彼らが出会ったのは本物の霊能力者であるというリディア・ハッシュという美しい女性でした…。

 誘拐された少女の行方を追う詐欺師一行が思いもしなかった真実を知り、やがて大掛かりな陰謀に巻き込まれるという、サスペンス・冒険小説的な要素の濃い作品です。物語の展開はそれほどスピーディではなく、なかなか事件の本質が見えてこないのですが、その代わり主要な登場人物たちのキャラクターが掘り下げられていき、キャラ同士の掛け合いの方が楽しくなってくるという作品といってもいいでしょうか。
 不法移民ながら素直で賢明な少年ディエゴ、クールで計算高さを持ちながらも情に深い詐欺師シェル、気のいい話し相手であり怪力の持ち主アントニーの3人は特に魅力的です。
 そして謎を秘めた霊媒師リディア、ディエゴの恋人となるコケティッシュな娘イザベル、ほかにも詐欺師仲間の協力者たちも多数登場し、物語を色彩豊かに彩ってくれます。
 やがて報復かと思われた少女誘拐が、スケールの大きな陰謀に関わっていることを知ったシェルたちは命の危険を覚えるまでになりますが…。

 「幻想作家」フォードの書いたミステリだけに、現実離れした犯罪計画や幻想的なエッセンスも散りばめられています。特に詐欺師シェルの愛好する蝶趣味は作品全体のモチーフにもなっていますね。後半登場する「敵」たちもかなりぶっとんだ設定で怪奇スリラーとしても魅力的。
 雰囲気も非常に軽やかで、登場人物同士の愛情や恋愛、友情などがユーモアを持って描かれます。「最終計画」には主人公たちだけでなく、彼らの「仲間」が集結するという展開も熱いですね。読んでいてとにかく楽しい作品です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
2019年10月に作成した「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を盛林堂書房さんで通信販売中です。
2019年12月に同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を刊行予定(盛林堂書房さんで通販予定です)。



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