FC2ブログ
思念の力  南條竹則編訳『地獄 英国怪談中篇傑作集』
地獄 英国怪談中篇傑作集 (幽クラシックス)
 南條竹則編訳『地獄 英国怪談中篇傑作集』(メディアファクトリー幽books)は、ウォルター・デ・ラ・メーア「シートンのおばさん」、メイ・シンクレア「水晶の瑕」、アルジャノン・ブラックウッド「地獄」の3つの中篇を収録した怪奇小説アンソロジーです。

ウォルター・デ・ラ・メーア「シートンのおばさん」
 格別親しくもない学友シートンから家に招待されたウィザーズは、仕方なしに彼の家を訪れます。保護者である「おばさん」を気味悪がるシートンにウィザーズは不審の念をいだきますが…。
 デ・ラ・メア怪奇小説の代表作ともいうべき作品。非常にわかりにくいと言われるものを新訳した作品です。シートンのおばさんは精神的な吸血鬼であると言われていますが、改めて読み直してもはっきりしたことは書いておらず、読んだ人によって解釈は分かれる作品ですね。

メイ・シンクレア「水晶の瑕」
 アガサは精神を病んだ妻のいる男性ロドニーに恋心を抱いていました。アガサは自身の持つ癒しの能力でロドニーとその妻を癒します。同じく精神を病んだ男ハーディングに同情したアガサは、彼の心も癒そうとしますが…。
 癒しの能力を持つ女性が、友人の夫の狂気を治療したことから、自らも狂気に感染するという物語。「狂気」自体の得体の知れなさが不気味です。

アルジャノン・ブラックウッド「地獄」
 ビルとフランシスの兄妹は未亡人となった旧友メイベルから誘いを受け彼女の家に滞在することになります。メイベルの夫サミュエル・フランクリンは資産家ながら狂信家であり、それを嫌った兄妹はしばらく行き来をしていなかったのです。
 フランクリンは生前、自分と同じ信仰を持たぬ者は地獄に堕ちると信じていました。夫の影響力を受け続けたメイベルは陰鬱な屋敷の中で不安に陥っていましたが…。
 かなり長い中篇なのですが、何も変わった事件は起きず、異様な雰囲気だけが続く…という作品です。その理由がユニークです。この作品の舞台となる屋敷がドルイド教の人身御供が行われた場所で、古代から現代に至るまで狂信者といっていい人間が入れ替わり立ち替わり住んだ場所だというのです。
 そのため彼らの「霊」というか「思念の力」といったものが互いに拮抗しあって、結果的に何も起こらない状態になっているというのです。
 人間の見えないところで異様な力が渦巻いているものの、表面上は何も起きていないように見える…という、かなりユニークな発想の怪奇小説です。「物語」として面白いかどうかは微妙なのですが、この発想は一読の価値があるのではないかと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/947-72486641
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する