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さまざまな死骸  ジョナサン・メイベリー、ジョージ・A・ロメロ編『ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド』
NIGHTS OF THE LIVING DEAD ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド 死者の章 (竹書房文庫) NIGHTS OF THE LIVING DEAD ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド 生者の章 (竹書房文庫)
 ジョナサン・メイベリー、ジョージ・A・ロメロ編『ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド 死者の章』『ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド 生者の章』(阿部清美訳 竹書房文庫)は、ゾンビをテーマにした、書下ろしホラーアンソロジーです。
 19篇と多くの作品を収録しています。皆同じゾンビテーマの作品なので飽きてしまわないかと心配したのですが、それぞれ工夫がされた作品が多く、面白く読めるアンソロジーでした。

 レースの最中にゾンビに襲われるという「デッドマンズ・カーブ」(ジョー・R・ランズデール)、ゾンビが蔓延した町でならず者が収監されるという「スーという名のデッドガール」(クレイグ・E・イングラー)、サイコメトリー能力を持つ女性がゾンビが発生した地下基地に乗り込むという「ファスト・エントリー」(ジェイ・ボナンジンガ)、亡き愛妻に寄り添うため自らの体をゾンビに変えようとする科学者の物語「この静かなる大地の下に」(マイク・ケアリー )、ゾンビ発生を目の当たりにする解剖医を描いた「身元不明遺体」(ジョージ・A・ロメロ)、ゾンビのふりをした青年が恋敵の男に殺されそうになる「安楽死」(ライアン・ブラウン)、宇宙ステーション上でゾンビが発生するという「軌道消滅」(デイヴィッド・ウェリントン )、浮気相手の夫を殺した男がゾンビになった夫に襲われるという「乱杭歯」(マックス・ブラリア)、ゾンビが蔓延した動物園を舞台に飼育員の女性を描く異色作「動物園の一日」(ミラ・グラント)、ゾンビに襲われた一行が辿りついたのは幽霊屋敷だった…という「発見されたノート」(ブライアン・キーン)、ゾンビから助けるため弟の元を訪れた兄が、弟に監禁されてしまうという「全力疾走」(チャック・ウェンディグ)、人でなしのリポーターがゾンビに襲われた町をリポートするという「現場からの中継」(キース・R・A・ディカンディード)、ゾンビを捕らえ見世物にし始めたサーカスの興行主を描く「死線を越えて」(ニール&ブレンダン・シャスターマン)などが面白いですね。

 正攻法のゾンビものでも、シチュエーションや環境などに工夫がされている作品が多かったです。エンタメとして一番面白かったのは、ジェイ・ボナンジンガ「ファスト・エントリー」でしょうか。
 触れると相手の人格や過去の記憶を読み取れる能力を持つ女性が主人公。地下施設でゾンビが発生した後、彼女は地下施設でゾンビから情報を読み取ろうとする…という話です。面白い設定がてんこ盛りの作品で、短篇ひとつで終わらせるにはもったいないお話でした。

 変わった設定では、宇宙ステーション上でゾンビが発生するという、デイヴィッド・ウェリントン 「軌道消滅」。地球上の人間と交信しながら危機を乗り越えようとしますが、地上でも同じ現象が…というサスペンスたっぷりの作品です。

 ミラ・グラント「動物園の一日」では、ゾンビが蔓延した動物園で、飼育員の主人公が人間よりも動物を心配し、彼らを助けようとするという異色作。ちょっと「いい話」になっています。

 マイク・ケアリー「この静かなる大地の下に」では、研究を繰り返し自らの体をゾンビに近づけようとする主人公が登場します。成果を得た主人公は、亡妻の墓を掘り返しますが…。ちょっとしんみりした味わいのゾンビ小説です。
 著者のマイク・ケアリーという作家、表記が異なるので気がつかなかったのですが、実はゾンビもの長篇『パンドラの少女』の著者M・R・ケアリーと同一人物です。

 アンソロジー完成直後にロメロが亡くなったらしく、日本版には各作家による「ジョージ・A・ロメロへの追悼文」も収録されています。

 ゾンビものアンソロジーとしては、スキップ & スペクター編『死霊たちの宴』(創元推理文庫)がありますが、こちらの『ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド』も面白い作品揃いで、楽しめるアンソロジーになっていると思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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