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夢想するオウム  アルジャナン・ブラックウッド『王様オウムと野良ネコの大冒険』
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 イギリス怪奇小説の巨匠、アルジャナン・ブラックウッドの長篇童話『王様オウムと野良ネコの大冒険』(相沢次子訳 ハヤカワ文庫FT)は、オウムとネコのコンビが住んでいた家から飛び出し、冒険を繰り広げるという作品です。

 アーサー大佐の娘モリーに飼われていた王様オウムのダッドリーは、屋敷に転がり込んできた元野良猫ギルデロイとの友情を深め、やがて二人で家を出ることを計画します。ロンドンに向かうため列車を利用しようと考える二人でしたが…。

 オウムとネコが繰り広げる冒険を描いたファンタジー童話です。二人(二匹?)とも人間の言葉や行動がわかっていたり、オウムのダッドリーに至っては、意味を理解したうえで人間の言葉を話すなど、動物が擬人化された形で物語が描かれます。
 ただ、それにも関わらず妙に哲学的なトーンで描かれる作品ではあり、子供が読むにはちょっと難しいような気もします。主人公二人のうち、メインで描かれるのはオウムのダッドリーなのですが、このオウムがところどころで夢を見たり夢想したりするシーンがたびたび描かれるのです。
 二人の冒険は、ロンドンなど、主に多くの人間のいるところで展開されるので、作品の背景として、ブラックウッドお得意の大自然、たとえば森林などはほぼ登場しません。なのですが、オウムが夢想するのは大自然、ひいては宇宙との合一を意識するかのようなイメージなのです。その点で、ブラックウッドの他の怪奇小説とも一脈通じるような要素もある作品といえます。

 ただ「哲学的」な作品というだけではなく、二人の冒険はドタバタに満ちていて楽しい作品です。例えばダッドリーが人間のふりをして切符を注文するなど、ユーモアあふれる楽しいシーンが多く描かれます。
 表面上のスラップスティックな物語の中に、上に挙げたような宗教的といってもいいほどの思想がダッドリーの夢想という形で出現するという、妙なアンバランスさがあり、その意味で非常に興味深い作品ではありますね。

 主人公の二人、思索的で自負心の高いダッドリーと、世故に長けたギルデロイのコンビは相性がピッタリで、キャラクターとしても非常に魅力的。ラストではダッドリーの夢想がある形で結実することになるのですが、この部分も非常に象徴的で考えさせるものになっています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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