〈アンファン・テリブル〉というテーマの作品群があります。無邪気で残酷な子供を扱った物語のことです。例えばサキの『開いた窓』やスタンリイ・エリンの『ロバート』、パトリック・クェンティン『少年の意志』なんかがあげられますね。今回の作品もそんな一つ、ローズ・ミリオン・ヒーリー『ものあて遊び』(秋津知子訳 早川書房 ミステリマガジン1977年2月号所収)です。 家政婦マーサは、子供を育てた経験もあり、決して子供嫌いというわけではありませんでした。しかし、この家の子供ジェフリィには、馴染めないものを感じています。祖母であるミセス・ベルトンと二人暮らしであるジェフリィは、ずいぶんと甘やかされていました。 ジェフリィはある日、自分の膝の上にのせた小さなボール箱をマーサに指し示して、中に入っているものを、あててみろと問いかけます。当てたらごほうびに何がもらえるかと訊くと、来週分のお小遣いをあげるという返事。外れたら何かあげましょうというマーサに対し、ジェフリィは自分がほしいものをくれるかと訊きます。
「おばさんがあげたくないと思うようなものじゃない?」 「そんなこと思っちゃいけないよ。おばさんには他にも沢山あるんだもん」
ミニカーか何かだと考えたマーサはゲームをすることを承知します。当てるのは三回まで。箱を持たせてというマーサにジェフリィは渋い顔をします。そんな約束はしていないというのです。ヒントがなくてはわからないというマーサにジェフリィは譲歩し、三つまでヒントを許可すると言います。 大きさは? おばさんの指くらい。色は? 前はピンク色だった。じゃあペニー銅貨ね。はずれ! それ、おばさんが見たことのあるもの?
「見たことある」少年は言った。「だって、おばさんも持ってるもん。本当のこと言うとね、それなんだ、ぼくが勝ったらおばさんから貰いたいものって」
少年は、手の中でナイフをこねくりまわしながら、奇妙なことを言い出します。この箱の中のものは、マーサの前に働いていたリリアンという女性からもらったものだというのです。 マーサは段々思い当たるも、不安げな様子を隠せません。冗談でしょう? ジェフリィは答えます。
「リリアンも本気にしなかった。ぼくがそんなことするはずないって言ったんだ。できるはずないって。だけど、ある日、おばあちゃんが留守で、リリアンが自分の部屋で寝てるとき……」
ジェフリィが欲しがるものとは? そして箱の中にあるものとはいったい何なのでしょうか? ジェフリィの言葉により、段々と読者にも箱のなかのものが想像できるようになっています。その意味で大体予想のつく展開が続くのですが、話がわかっていてもなお少年の不気味さは衰えません。スタンリイ・エリンの『特別料理』やロアルド・ダール『南からきた男』を彷彿とさせる佳作です。 テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学
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