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エドワード・ゴーリー作品を読む
 昨年2018年は、エドワード・ゴーリーの絵本の邦訳が3冊ほど連続刊行され、ゴーリーのファンとしては嬉しい年となりました。どれも魅力的な作品でしたが、それぞれ紹介しておきたいと思います。合わせて、ゴーリーの未訳作品の中からいくつかご紹介します。


ずぶぬれの木曜日
『ずぶぬれの木曜日』(柴田元幸訳 河出書房新社)

 雨の日を舞台に、雨の街の人々、傘をなくした男、主人の傘を探す犬をカットバックで描いていくという作品。ユーモアたっぷりですが、ゴーリーには珍しく、ハッピーエンドで終わる後味の良い作品です。傘屋で不満をぶちまける男の描写が楽しいです。


失敬な招喚
『失敬な招喚』(柴田元幸訳 河出書房新社)

 突如現れた悪魔により不思議な力を身につけた女性スクィル嬢が、再び悪魔に拉致される、という物語。
 不条理かつ救いのない話ですが、ゴーリーらしいブラック・ユーモアがありますね。スクィル嬢のそばにひかえる使い魔ベエルファゾールがユーモラス。


音叉
『音叉』(柴田元幸訳 河出書房新社)

 家族の鼻つまみ者であるシオーダが海に飛び降り自殺を図ると、海の底に怪物がおり、彼女に同情した怪物とともに復讐をするという話。
 シオーダは一度死んでいるのか?とか、家族の死は本当に怪物の仕業なのか?など、いろいろ疑問が湧きます。
 ただ、怪物とともに海を駆けるヒロインの姿が幸福そうで、印象に残ります。どこか心に残る作品ですね。



By Edward Gorey The Fantod Pack by Edward Gorey (Tarot cards: the Gorey version)
『THE Fantod Pack』(Pomegranate Communications Inc,US)

 20枚組の占いカードのセットなのですが、カード全てに不安を煽るようなイラストが描かれています。
 例えば、はしごにひもが描かれた「THE LADDER」のカード。ひもは首吊りのひもを暗示しているのでしょうか。真っ暗なトンネルが描かれた「THE TUNNEL」とか、ひもで全身をしばられた「THE BUNDLE」のカードなんか相当不気味です。
 解説書もついており、カードを使って占いもできるのですが、どう占っても必ず「不安な」結果が出るという、ブラック・ユーモアたっぷりの不穏なカードセットです。
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The Tunnel Calamity
『The Tunnel Calamity』(Pomegranate Communications)

 蛇腹型になっている本を前後に伸ばした状態で、前面のレンズから中を覗きこむ…という、面白い趣向の作品です。広げ具合や覗く角度によって、見える風景が少しづつ変わります。
 レンズから見える風景もゴーリーらしく不穏です。ど真ん中に怪物がいるのに少年以外誰も気にしていません。その人々もどこか怪しげ。柱の影に隠れた人物や、角度を変えないと見えない人物も。奥の窓にはゴーリー作品によく登場する「ブラック・ドール」の姿が!
 覗き込んだときに、人物や怪物たちが立体感を持って立ち上がってくるのがリアルです。いったいどういう状況なのか、いくら考えてもわからない…というところもゴーリーらしいです。素直な物語を読み取れないところが、逆にすごいなという気もしますね。
 ちゃんと専用の堅牢な箱がついており、保存もしっかりできます。コレクション心をくすぐる作品。
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 他にも何冊かゴーリーの未訳絵本を購入したのですが、まだほとんど読めていません。ゴーリーの絵本は文章が少ないから英語でも読めるかなと思ったのですが、珍しい単語が頻出して、予想以上に難しいです。
 とりあえず読めたものの中で一番良かったのは『The Osbick Bird』でしょうか。


The Osbick Bird
『The Osbick Bird』(Pomegranate)

 ある日現れたおかしな鳥と男が親友になり、男の最後までを鳥が看取るという物語。ゴーリー作品の中でもかなり人気のある作品だそうですが、なかなか邦訳が出ないのが残念。
 謎の鳥「オズビック・バード」が非常に愛らしいです。異様に長い足が特徴で、この足を使っていろいろ器用なことをします。リュートを弾いたり、ティーカップを持ったりと大活躍。「うろんな客」と並ぶゴーリーの名キャラクターだと思います。
 この本の日本版が出れば、絶対日本でも人気が出ると思うんですけどね。


The Evil Garden
『The Evil Garden』(Pomegranate)

 これも面白いです。植物園に入った家族が奇怪な植物や虫などに襲われるというスプラッター(?)作品です。直接的な表現で、絵だけでも話がわかりやすい作品でした。



エドワード・ゴーリーの世界 どんどん変に…―エドワード・ゴーリーインタビュー集成
  邦訳のあるゴーリー作品は、今のところほとんど品切れになっておらず、入手可能なようですね。ただゴーリーのガイド本として、最も有用といえる『エドワード・ゴーリーの世界』(濱中利信編 河出書房新社)が入手不可になっているのが非常に残念です。
 同じく文献として貴重な『どんどん変に… エドワード・ゴーリーインタビュー集成』(小山太一/宮本朋子訳 河出書房新社)は入手可能です。面白いのは、『エドワード・ゴーリーの世界』『どんどん変に…』のような副読本が、ゴーリー本人の著作の邦訳がまたそんなに出ていない時期に出ていることですね。
 ゴーリーの最初の邦訳が出たのは確か2000年で、『エドワード・ゴーリーの世界』は2002年、『どんどん変に…』が2003年刊行です。ガイド本を見てこの本読みたいなと思っても、その時点で邦訳があまりなかったので、蛇の生殺し状態です。
 ちなみに『エドワード・ゴーリーの世界』は、ほぼ全作品の内容ガイドや、ゴーリー用語事典など、ゴーリー作品を味わうガイドとしては今のところ一番有用な本だと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
音叉はアイテムとしては、お話に登場しなかったような。
「音叉」が心に残りました。真珠を纏い怪物の背に乗る少女は女神のよう。背表紙に海底で逆さまになったバスタブが描かれているのも意味深です。
【2019/04/21 12:35】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
ゴーリーの作品のタイトルは象徴的なものが多いので、内容とあんまり関係ないようなものも多いですよね。ある種、シュルレアリスム作品のタイトルみたいな感覚なのかなあと思います。
昨年刊行の3冊の中では、僕も「音叉」が一番良かったです。
【2019/04/21 16:14】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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