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生き残ったのは誰?  ガイ・バート『体験のあと』
体験のあと
 ガイ・バート『体験のあと』(矢野浩三郎訳 集英社)は作者が18歳の時に書かれたというデビュー長篇です。

 アワ・グローリアス校の5人の生徒は、面白半分に、校舎の片隅の使われていない地下室に食料を持って閉じこもろうという計画を実行します。計画の立案者は、表面は優等生ながら徹底した反逆児のマーティンでした。
 学校側にも親にも秘密で行われた計画は、三日後にマーティンによって扉が開かれて終わるはずでしたが、約束の期日になってもマーティンは現れません。段々と食料も減るなか、仲間同士での争いが起き始めます…。

 閉鎖的な空間に閉じ込められた学生たちを描くサイコ・スリラー作品です。閉じ込められた5人の学生たちが、仲間同士で反目を続けることになる…という展開なのですが、閉じ込められた原因がマーティンという人物であることが明確であるため、反目は起きながらも疑心暗鬼という形にはならないのが特徴です。

 食料が足りなくなることを始め、様々な障害が次々に起きるのですが、その全てがマーティンのせいだとするには不自然な点も出てきます。この計画は本当にマーティン一人のものなのか? 彼の意図はいったい何なのか?

 作品自体が、事件を描写する三人称部分、5人の一人リズの一人称による手記、マーティンのガールフレンドだったリサ(閉じ込められてはいない人物)の告白、の3つに分かれています。
 読んでいるうちに、事件の推移に不自然な点があること、語りにどこか拙さがあること、などに気がつきますが、これらが伏線になり、意外な結末に結びついていきます。この事件の真相はいったいどうなっているのか? 彼らは無事に生還できたのか?

 いわゆる「信頼できない語り手」に属する作品ですが、それをさらにひねっており、読者は自分で真相を再構成しなければならないようになっています。序盤の展開は多少ぎこちないのですが、この「ぎこちなさ」が計算されている可能性があり、そうだとすると、かなり技巧的な作品だと言えますね。
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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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