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ダークサイドの物語  三堂マツリ『ブラック・テラー』
ブラック・テラー
 三堂マツリの短篇コミック集『ブラック・テラー』(バンブーコミックス タタン)は、不気味と隣り合わせの街「クリーピー・サイド」で起こる出来事を描いた連作短篇集です。かわいらしい絵柄ながら、描かれるのはブラックなストーリーばかりで、そのギャップも魅力的。

 人の恐怖心が見たいがために殺人鬼のふりをして人を驚かす男の物語「注目せよ」、ホラー映画が上映される映画館での出来事を描く「ホラーナイト」、人間の皮で装丁された本に執着する青年を描く「グリーンスキン」、思い出を蘇らせるため動物の内臓を食べる少女を描いた「思い出の味」、靴泥棒が思いもかけない出来事に遭遇する「イン・マイ・シューズ」、傷に執着する青年がパーティで出会った女性に惹かれるという「ハロウィンパーティ」、大胆な手術で有名な医者を描く「専門医」、死の香りを感じ取る少女と浮浪者の物語「死の匂い」、脱字だらけの手紙を届けに訪れた郵便配達夫が出会う奇怪な出来事を描いた「スペースオペラ」、各話の登場人物たちが一堂に会する最終篇「クリーピー・サイド」、死体愛好者の青年が死体との間に生まれた娘を育てることになるという読切作品「リビングデッド・ベイビー」を収録しています。

 ブラックでありながらも人間の情についても描いていて味わい深い作品、ももちろんあるのですが、救いがない徹底したブラックなストーリー、猟奇的で強烈なホラーもありと、収録作の揺れ幅が非常に広いのが魅力的ですね。
 「思い出の味」「イン・マイ・シューズ」「スペースオペラ」などでは、発端の出来事から思いもかけない展開があり、えっそんな展開に!という驚きがあります。

 死ぬ直前の人間の匂いを感じ取れる少女が、匂いのする浮浪者に惹かれていくという「死の匂い」は、予定調和的な部分がありつつも、ほのかな暖かさの感じられる作品になっています。集中でも一番「いい話」ではないでしょうか。

 一番印象に残るのは、巻末の読切作品「リビングデッド・ベイビー」でしょうか。
 死体愛好者の青年は、ある日死体との間に生まれたとしか思えない赤ん坊を見つけます。世間の目を恐れた青年は、娘をひそかに育てることになりますが…。
 非常にブラックな設定でありながら、描かれるのは親子の愛情であり、青年が立ち直るまでの物語。これは傑作だと思います。

 全体に非常にレベルが高く、怪奇幻想ファンにはお薦めしておきたい作品集です。
 「リビングデッド・ベイビー」に関しては、作者の三堂マツリさんのtwitter上で公開されていますので、気になった方はお読みになることをお薦めしておきます。

テーマ:アニメ・コミック - ジャンル:アニメ・コミック

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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