ナイトビジョンその10
 今週放送分の『ナイトビジョン』のレビューです。

「パターン」
 ベテラン精神科医のダニエルは、警察から連れてこられた精神障害者マーティンを診察することになる。話をしている間中マーティンは、意味不明な動作を繰り返す。不審に思ったダニエルはその理由を尋ねるが、それは驚くべきものだった。
 自分は、あらゆるものに「パターン」を見ている。それをもとに行う動作が、世界中の災害を防いでいる、というのだ。いまやっている動作は飛行機が落ちないようにするため。そしてこの動作はあなたのネクタイが白くならないようにするためだ、とマーティンは答える。
 子どものころに、家族に危害が及ばないようにと考え出したまじないがエスカレートし、今では日常生活にも支障をきたすようになっているというのだ。本当にそれを信じているのかという問いに、マーティンは確信をもって答える。実際に動作をやめたときに、友人や上司が死んでいるのがその証拠だ。「世界のバランスをとっているのは私なんだ」
 マーティンを強迫神経症だと診断したダニエルは、彼に鎮静剤を打とうとする。マーティンは、自分の意識がなくなれば、世界にとんでもないことが起こると暴れるが、とりおさえられる。しかし、マーティンを部屋に寝かせた後、帰宅しようと病室を出たダニエルが見たものは、混乱した世界だった…。
 世界中の災難を防ぐために、神から使命を与えられたと称する男。彼をパラノイア患者だと思い、とりあわない精神科医は真実を思い知らされる…という話。これ、『新トワイライトゾーン』で映像化されたJ・M・ストラジンスキーの「エドガー・ウイザースプーン氏の奇妙な症例」に異様にそっくりなんですが。シチュエーションも同じだし、オチまで全く同じ。盗作疑惑が出なかったんでしょうか。
 世界の災難を防ぐための手段が、ストラジンスキーのものと、この「パターン」とでは少し異なるくらいのものです。もっともこのネタ自体、さがせば、さらに前例があるような気がしますが。
 混乱した後の、不条理な世界の描写は、なかなかユニークではありました。

「心の声」
 幼い頃から聴覚障害を持つ法廷画家のサンドラは、もう一度聴覚を取り戻すために手術を受けるが、失敗してしまう。ある日、法廷で仕事中のサンドラは、ふと誰か男の声が聞こえるのに気がつく。それは犯人しか知り得ないはずの事実だった。
 それでは今、被告席に座っているのは犯人ではないのか? サンドラは聞こえる声の内容を、とりあえずスケッチの横に書き加える。裁判後、サンドラは声の主を見つける。それは目撃証人として出廷しているマーロン刑事だった。どうやら彼の心の声が聞こえるらしい。
 マーロンは幼い頃ギャングに弟を殺されたことから、ギャングに対して憎しみを抱いていた。麻薬取引の現場で、憎しみにかられた彼は片方のギャングを殺して、その罪をもう一方になすりつけようとしていたのだ。
 裁判所の入り口でサンドラはスケッチを落としてしまうが、それを運悪くマーロンに見られてしまう。マーロンはサンドラの口をふさごうと、彼女をつけねらうのだが…。
 ふとしたことから超能力を得た女性が、それを知った犯人につけねらわれる、というスリラーです。主人公に純真無垢な女性、そして犯人役にも悪人になりきれない男を配しているところがミソ。それゆえあまり陰惨な結末にはなりません。いい話ではありますが、この番組のファンとしては、物足りない感じがしてしまいます。

総括
 今回でこのシリーズも終了です。最初の数回を見逃してしまったのが残念ですが、全体的に非常にレベルの高いシリーズでした。なんといっても、この番組の魅力は、脚本の上手さによるところが大きいでしょう。CGや特殊効果で見せるのではなく、あくまで話のひねりや面白さを強調していたところが成功の要因かと思います。
 要素だけを取り出せば、話自体は、意外とよくあるストーリーが多かったのですが、斬新なひねりや編集で上手く見せてくれました。言うならばリミックス的な番組だったといえるでしょうか。全体的にホラー味が強く、結末はアンハッピーエンドが大部分でしたが〈異色作家短編集〉などを好むファンには受けがよかったのではないかと思います。
 とくに面白かったエピソードを挙げてみます。
 「あいつがここにやってくる」
 妄想が具体化するというロバート・ブロック風スリラー。
 「天国」
 天国を見たと称する男の皮肉なストーリー。
 「木が倒れても」
 自分の死を隠して生活し続ける三人組。誰も死を認めなければ死んだとは言えないとする認識論的ファンタジー。
 「罪の収穫」
 老人に障害を負わせてしまった少年の罪の意識。不可解な老人の行動の意味は…。すさまじい後味の悪さが後を引く、恐るべき傑作エピソード。
 「目覚め」
 幸福な生活を送る主婦が、突如巻き込まれた災難。それは彼女の世界を崩壊させる序曲だった…。使い古されたオチながら手堅い演出で見せる佳作。
 「憎まれ人形」
 本の内容通りに、操られる男。二重のエンディングが待ち受けるメタフィクションストーリー。
 「迷路」
 内向的な女子学生が迷い込んだ不思議な世界。極限状況で彼女が得たものとは…。〈破滅テーマ〉の佳品。
 「スイッチ」
 本当の自分は他にいた…。ひねりのきいた多重人格スリラー。

 本国でもDVD化が未定だそうですので、国内版は絶望的なのですが、ぜひ実現してほしいものです。

テーマ:★海外ドラマ★ - ジャンル:テレビ・ラジオ

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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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