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2018年を振り返って
 もうすぐ、2018年が終わります。年末ということで、今年一年を総括してみたいと思います。

 まずは、主宰している読書会「怪奇幻想読書倶楽部」について。今年は合計7回ほど開催しました。内容は以下の通り。

第12回
第1部 迷宮と建築幻想
第2部 作家特集 エドガー・アラン・ポオ

第13回
第1部 物語をめぐる物語
第2部 作家特集 ステファン・グラビンスキ

第14回
第1部 新入生に勧めたい海外幻想文学
第2部 課題図書 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』(南條竹則訳 光文社古典新訳文庫)

第15回
第1部 課題図書 ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』(福島正実訳 ハヤカワ文庫FT)
第2部 参加者が選ぶ!自分だけのベスト10

第16回
第1部 スティーヴンスンの怪奇と冒険
課題図書
ロバート・ルイス・スティーヴンスン『新アラビア夜話』(南條竹則/坂本あおい訳 光文社古典新訳文庫)
ロバート・ルイス・スティーヴンスン『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』(高松雄一/高松禎子訳 岩波文庫)
第2部 〈奇妙な味〉について考える

第17回
第1部 課題図書 レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国』(宇野利泰訳 創元SF文庫)
第2部 マイ・フェイヴァリット・短篇集

第18回
第1部 課題図書
ロアルド・ダール『キス・キス』(田口俊樹訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)
ロアルド・ダール『王女マメーリア』(田口俊樹訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)
第2部 読書会結成二周年企画 本の交換会

 もともと作家単位のテーマは扱っていたのですが、第14回から課題書を取り上げる形もやってみています。話の対象が決まっているので、参加者の話がまとまりやすい…という利点がありますね。フィニィやブラッドベリ、ダールなどの人気作家はあっという間に席が埋まってしまいました(逆にスティーヴンスンの回はあまり人気がありませんでしたね。)。
 来年以降も、オリジナルテーマも混ぜつつ、課題書路線をしばらく続けていきたいと思います。


 Twitterでは、10月より「#日本怪奇幻想読者クラブ」というハッシュタグを始めました。これは、国内海外問わず怪奇幻想作品について皆につぶやいてもらおうという意図で始めたものですが、たくさんの方にご参加いただきました。小説作品だけでなく、漫画・映画まで、広い分野の話題が出て、怪奇幻想ジャンルの活性化(というと大げさですが)に少しは役立っているのでは、と思っています。
 実際、怪奇幻想ファンは結構いたんだ…と驚くぐらい「隠れファン」がいたようで、つぶやくきっかけができた…という意味では、大変良かったのではと思います。


 今年読んだ本についてですが、今年も旧作・新作含め、いろいろな本が読めたかなと思います。読書会のテーマ関連で読んだものでは、エドガー・アラン・ポオ、ステファン・グラビンスキ、フィッツ=ジェイムズ・オブライエン、ジャック・フィニィのまとめ読みをしたり、「迷宮もの」や「メタフィクション」ものを沢山読んだりしました。
 特に「メタフィクション」関連をまとめ読みしているときに読んだ作品は、傑作・名作が多く、充実した読書になりました。
 作家単位で印象に残ったのは、ミルチャ・エリアーデ、ミロラド・パヴィチ、ジョイス・キャロル・オーツなどでしょうか。特にオーツはその読みやすさも含め、ちょっと追いかけてみたい作家になりました。
 特に印象に残っているタイトルを挙げておきますね。


ムントゥリャサ通りで 時をさまようタック (児童図書館・文学の部屋) エペペ 嘘の木 冬の夜ひとりの旅人が (白水Uブックス) ハザール事典 男性版 (夢の狩人たちの物語) (創元ライブラリ) 異形のテクスト―英国ロマンティック・ノヴェルの系譜 小型哺乳類館 絶望図書館: 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語 (ちくま文庫)
ミルチャ・エリアーデ『ムントゥリャサ通りで』
ミルチャ・エリアーデ『ホーニヒベルガー博士の秘密』
ロザリンド・アッシュ『嵐の通夜』
ロザリンド・アッシュ『蛾』
ナタリー・バビット『時をさまようタック』
カリンティ・フェレンツ『エペペ』
フランシス・ハーディング『嘘の木』
イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』
ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル『インフェルノ SF地獄篇』
ジャン・レー『マルペルチュイ』
ギルバート・フェルプス『氷結の国』
ウィリアム・ブラウニング・スペンサー『ゾッド・ワロップ あるはずのない物語』
ミロラド・パヴィチ『ハザール事典 夢の狩人たちの物語[男性版]』
横山茂雄『異形のテクスト 英国ロマンティック・ノヴェルの系譜』
トマス・ピアース『小型哺乳類館』
シオドア・スタージョン『人間以上』
アンドリュー・ラング、リチャード・ドイル『誰でもない王女さま』
ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』
アーチ・オーボラー『悪魔の館』
ヴェニアミン・カヴェーリン『ヴェルリオーカ』
ロジャー・マンベル『呪いを売る男』
キャサリン・ターニイ『寝室に棲む亡妻』
アレクサンドル・グリーン『波の上を駆ける女』
サーデグ・ヘダーヤト『生埋め』
チャールズ・ブロックデン・ブラウン『エドガー・ハントリー』
頭木弘樹編『絶望図書館 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語』
デイヴィッド・リンゼイ『憑かれた女』
ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』
ジョイス・キャロル・オーツ『邪眼 うまくいかない愛をめぐる4つの中篇』
ジョイス・キャロル・オーツ『生ける屍』
カービー・マッコーリー編『恐怖の心理サスペンス』
ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』
朱雀門出『首ざぶとん』


 さて、2018年度に発売されたタイトルで印象に残ったものを紹介していきます。


半分世界 (創元日本SF叢書) 滅びの園 (幽BOOKS) 犯罪乱歩幻想 火のないところに煙は 人喰観音 (早川書房) ぞぞのむこ 呪いに首はありますか 祭火小夜の後悔 そこにいるのに エイリア綺譚集
 日本作家では、シュールさが楽しい『半分世界』(石川宗生)、仮想世界を舞台にしたユニークな『滅びの園』(恒川光太郎 KADOKAWA)、乱歩作品をモチーフにした連作『犯罪乱歩幻想』(三津田信三 KADOKAWA)、メタフィクショナルな趣向が怖さを煽る『火のないところに煙は』(芦沢央 新潮社)、「宿命の女」テーマの異色作『人喰観音』(篠たまき 早川書房)、不条理さが強烈なホラー作品集『ぞぞのむこ』(井上宮 光文社)、幽霊を「ワクチン」として集めるというユニークなテーマの『呪いに首はありますか』(岩城裕明 実業之日本社)、ゴースト・ハンターもの『祭火小夜の後悔』(秋竹サラダ KADOKAWA)、バラエティに富んだ恐怖小説集『そこにいるのに』(似鳥鶏 河出書房新社)、純度の高い幻想小説集『エイリア綺譚集』(高原英理 国書刊行会)などを面白く読みました。


奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ (角川ホラー文庫) 奇奇奇譚編集部 怪鳥の丘 (角川ホラー文庫)
 木犀あこ作品は、シリーズ2作目『奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ』(角川ホラー文庫)、3作目『奇奇奇譚編集部 怪鳥の丘』(角川ホラー文庫)で完結しましたが、シリーズを通して上質な作品でした。とくに2作目に収録された「不在の家」は傑作といっていい作品です。


夢のウラド: F・マクラウド/W・シャープ幻想小説集 奪われた家/天国の扉 (光文社古典新訳文庫) 現代の地獄への旅 (ブッツァーティ短篇集) ウィルキー・コリンズ短編選集 さらば、シェヘラザード (ドーキー・アーカイヴ) こうしてイギリスから熊がいなくなりました ジャック・オブ・スペード ホール (Woman's Best 韓国女性文学シリーズ5)
 海外作家では、静謐なファンタジーが集められた『夢のウラド』(フィオナ・マクラウド/ウィリアム・シャープ 中野善夫訳 国書刊行会)、不条理ながらユーモアも強い『奪われた家 / 天国の扉 動物寓話集』(フリオ・コルタサル 寺尾隆吉訳 光文社古典新訳文庫)、面白い作品揃いの『現代の地獄への旅 ブッツァーティ短篇集Ⅱ』(ディーノ・ブッツァーティ 長野徹訳 東宣出版)、コリンズのストーリーテラーぶりを見せ付けた『ウィルキー・コリンズ短編選集』(北村みちよ編訳 彩流社)、メタフィクション要素の強い冗談小説『さらば、シェヘラザード』(ドナルド・E・ウェストレイク 矢口誠訳 国書刊行会)、寓話としても秀逸な『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』(ミック・ジャクソン 田内志文訳 東京創元社)、異様な迫力のあるサスペンス『ジャック・オブ・スペード』(ジョイス・キャロル・オーツ 栩木玲子訳 河出書房新社)、韓国作家による息詰まるようなサスペンス作品『ホール』(ピョン・ヘヨン カン・バンファ訳 書肆侃侃房)など。


見えるもの見えざるもの (ナイトランド叢書3-1) いにしえの魔術 (ナイトランド叢書3-2) ルクンドオ (ナイトランド叢書3-3) 紫の雲 (ナイトランド叢書3-4)
 古典怪奇小説のシリーズ《ナイトランド叢書》からは、E・F・ベンスン『見えるもの見えざるもの』(山田蘭訳 アトリエサード)、アルジャーノン・ブラックウッド『いにしえの魔術』(夏来健次訳 アトリエサード)、エドワード・ルーカス・ホワイト『ルクンドオ』(遠藤裕子訳 アトリエサード)、M・P・シール『紫の雲』(南條竹則訳 アトリエサード)が出ました。
 正統派の怪奇作品集『見えるもの見えざるもの』、ブラックウッドらしいスケールの大きい作品の多い『いにしえの魔術』、夢を題材にしたユニークな『ルクンドオ』、破滅SFとしても面白い『紫の雲』と、どれもそれぞれの魅力の感じられる作品でした。


世界の終わりの天文台 (創元海外SF叢書) 15回目の昨日 (ハーパーBOOKS) その部屋に、いる (ハヤカワ文庫NV)
 エンタメ作品では、静謐な破滅もの作品『世界の終わりの天文台』(リリー・ブルックス=ダルトン 佐田千織訳 東京創元社)、タイムトラベルものの『15回目の昨日』(クリスティン・テリル 田辺千幸訳 ハーパーBOOKS)、南アフリカ製のユニークな怪奇もの『その部屋に、いる』(S・L・グレイ 奥村章子訳 ハヤカワ文庫NV)などが面白かったですね。


怪異十三 英国怪談珠玉集 ヴィクトリア朝怪異譚 中国奇想小説集: 古今異界万華鏡 芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚
 アンソロジーも充実していました。日本と海外の怪奇作品を集めた『怪異十三』(三津田信三編 原書房)、英国怪談の重量級アンソロジー『英国怪談珠玉集』(南條竹則訳 国書刊行会円)、ヴィクトリア朝の怪奇中篇を集めた『ヴィクトリア朝怪異譚』(三馬志伸編訳 作品社)、中国古典の幻想小説を集めた『中国奇想小説集 古今異界万華鏡』(井波律子編訳 平凡社)、芥川龍之介編のアンソロジーから精選したという『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』(澤西祐典/柴田元幸編訳 岩波書店)などが印象に残りますね。


怖い女 人は「死後の世界」をどう考えてきたか
 評論では、沖田瑞穂『怖い女 怪談、ホラー、都市伝説の女の神話学』がユニークなテーマを扱っており勉強になりました。「死後の世界」について、さまざまな宗教や神話からの考え方をまとめた『人は「死後の世界」をどう考えてきたか』(中村圭志 KADOKAWA)も面白かったです。


そらからきたこいし ずぶぬれの木曜日 失敬な招喚 音叉
 絵本作品では、しおたに まみこ『そらからきたこいし』(偕成社)は、ファンタスティックなテーマといい、細密な絵といい、とても魅力的な作品でした。
 エドワード・ゴーリー作品は今年は3冊刊行されました。『ずぶぬれの木曜日』『失敬な招喚』『音叉』。どれもゴーリーらしいユニークな絵本で楽しみました。


魔法はつづく (LEED Cafe comics) 顔ビル/真夜中のバスラーメン 時を超える影 1 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス) 銀河の死なない子供たちへ(下) (電撃コミックスNEXT) 僕だけに優しい物語 (torch comics) 水上悟志短編集「放浪世界」 (BLADE COMICS) セイキマツブルー (ガムコミックス)
 マンガ作品は今年はあまり読めていないのですが、その中で印象に残った作品としては、芯はホラーでありながらそれ以外のテーマも感じさせる『魔法はつづく』(オガツカヅオ リイドカフェコミックス)、ユニークなホラーが集められた『顔ビル/真夜中のバスラーメン』(呪みちる トラッシュアップ)、田辺剛さんのラヴクラフト漫画化シリーズ最新作『時を超える影』(ビームコミックス)、不老不死テーマのSF作品『銀河の死なない子供たちへ』(施川ユウキ 電撃コミックスNEXT)、シュールなユーモアが楽しい『僕だけに優しい物語』(田所コウ トーチコミックス)、秀作揃いの『水上悟志短編集「放浪世界」』(ブレイドコミックス)など。
 年末に出た『セイキマツブルー』(ヒロタ シンタロウ ガムコミックス)は、モンスターものの中に少女同士の友情と恋を交えた、なかなかの佳作でした。



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 中川潤さんが個人出版で出されたルヴェルの作品集2冊、『ルヴェル新発見傑作集 仮面』(中川潤訳 エニグマティカ叢書)と『ルヴェル第一短篇集 地獄の門 完全版』(中川潤訳 エニグマティカ叢書)も収穫でした。


不気味な物語 言葉人形 (ジェフリー・フォード短篇傑作選) (海外文学セレクション)
 年末ギリギリで出た、ステファン・グラビンスキ『不気味な物語』(芝田文乃訳 国書刊行会)、ジェフリー・フォード『言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』(谷垣暁美訳 東京創元社)はどちらも素晴らしい作品集でした。
 官能的な幻想作品が集められた『不気味な物語』、密度の濃い幻想小説・ファンタジーが集められた『言葉人形』、どちらもお薦めです。


 新年初めには、また記事を更新したいと思いますが、今年は一旦これで終了としたいと思います。一年間ありがとうございました。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
アップされた作品だけでも圧巻。
古典から話題作まで幅広く取り上げて下さり、またとない読書案内です。来年も、どうか宜しくお願いいたします。正月はペルッツの林檎ちゃんを読もうと思います。
【2018/12/31 13:11】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
いつもコメントありがとうございます。
来年もよろしくお願いしますね。
【2018/12/31 18:22】 URL | kazuou #- [ 編集]


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火のないところに煙は 著者 芦沢央

火のないところに煙は 著者 芦沢央 『新たな知識を求めてこの本と出逢う。』 題名だけで手にした本、これは1つの巡り合わせであり出会いである。 人はいつ、どこで、誰と、どんなモノに出逢うかわからない。 だからこそ、好奇心旺盛になり色々な『体験』を求めて旅に出る。 それもまた、人生である。 人間はどうして怖い話に夢中になるのであろうか? 人間はどうして怖いもの見たさにな... 読書と足跡【2019/03/21 08:01】

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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