人かペンギンか  トラウト、カレンバーグ『ペンギンのペンギン』
4122041546ペンギンのペンギン
デニス トラウト Dennis Traut Thomas Calenberg
中央公論新社 2003-01

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 動物を擬人化した物語というのは、わりとよくあります。そして、実物もかわいいペンギンは、絵本に登場する率も高いように思います。この絵本『ペンギンのペンギン』(デニス・トラウト作、トム・カレンバーグ絵 谷川俊太郎訳 中公文庫)に登場するペンギンも多分にもれず、擬人化されているのですが、その擬人化の仕方が実にユニークなのです。服を着たり、運動をしたりと、人間がするようなことをペンギンにやらせているのですが、その表現が妙に淡々としています。その狙いは、元来ペンギンが持つ愛らしさを出そう、とかいうのとは全く別の方向に向かっているようです。
 ペンギンが繰り広げるどこかとぼけた情景をそれぞれ、一コママンガにしてあります。そしてその絵の下に短いキャプションが付されています。特筆すべきは、このキャプションです。普通この手の絵本では文章は添え物になりがちなのですが、本書に限っては、絵の魅力を十二分に引き出しています。ほんの短い言葉が、ときには絵と拮抗しあう。そしてときには、うまく溶け合って、そこはかとないユーモアを醸し出しているのです。
 キャプションの例をいくつかあげてみましょう。

 「ペンギンはばかげた旗に敬意を表わす。」
 「ペンギンはレジャーのすごしかたを心得ている。」
 「ペンギンは兎に対して、いわれのない軽蔑の念を抱く。」
 「ペンギンは決して赤面しない。」

 かなりリアリスティックな絵なのですが、そこで描かれるペンギンの行動や恰好は突拍子のないものばかり。そしてそれに付けられたキャプションが、シュールな世界を作り出しています。
 子どもではたぶん、この絵本のおかしさを十分に理解できないのではないでしょうか。単なるかわいいペンギンの絵本にはとどまらない作品です。まさに〈大人の絵本〉と呼ぶにふさわしい傑作。

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テーマ:絵本 - ジャンル:本・雑誌

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