FC2ブログ
闘争と逃走  『プリズナーNo.6』
プリズナーNo.6 Blu-ray Collecter's BOX(5枚組) 『プリズナーNo.6』完全読本
 1967~1968年にかけてイギリスで放映されたテレビドラマシリーズ『プリズナーNo.6』。放映から50年以上が経ちますが、今でもその前衛的かつシュールな内容は高く評価され、カルト的な人気を博しています。
 最近、初めて全17話を鑑賞する機会があったのですが、よくこんな内容をテレビドラマでやろうと思ったなあ、というのが正直な感想です。

 一話完結の番組なのですが、毎回シュールなストーリーが展開されてびっくりします。 基本のストーリーは次のようなもの。諜報員らしき主人公が、職場を辞職して家を出ようとしたところ、拉致され謎の村に連れてこられます。その村では人々は数字で呼ばれていました。主人公は「No.6」と名付けられ、辞職した理由を聞かれ続けますが、絶対に話そうとしません…。

 村のトップは「No.2」と呼ばれる存在なのですが、毎回、主人公にいろいろな手段で口を割らそうとします。一方、主人公は村を脱出しようとしますが失敗してしまいます。いろいろバリエーションはあるものの、基本のストーリーは毎回このパターンです。

 ユニークなのは、敵方のトップ「No.2」が毎回変わること。特に説明はされないのですが、毎回「No.2」が新しくなるのです。その「No.2」も男だったり女だったり、若かったり年配だったりと様々。エピソードによっては、思わぬ人物が「No.2」だった…というパターンもあります。
 毎エピソード、「No.2」が交代するのはもちろん、一話の中で交代することもあります。更にその交替劇がプロットに組み込まれたエピソードまであるという複雑さ。

 敵の組織が秘密を聞き出すために行う手段や作戦が、非常に持ってまわったもので、村全体で主人公をあざむいたり、脱出できたように見せかけたりと、大掛かりかつ手間のかかるものばかりなところが、シュールな印象を強めています。
 面白いのは、主人公以外のレギュラーキャラが基本的に登場しないところ。それゆえキャラの掘り下げがなく、人間同士の関係性で話が展開してゆく…ということもありません。主人公を補助するキャラが登場しても、それが敵か見方かもわからないのです(大抵は敵なのですが)。

 主人公含め皆が番号で呼ばれること、舞台となる「村」や登場する機械類やガジェットにどこか「作りもの感」があること、ストーリー自体に抽象性が強いことなど、作品が全体に寓話的な空気を帯びているのも特徴ですね。

 このドラマに登場するユニークなガジェットの一つに、村人を監視・拘束する謎の白い球体「ローヴァー」があります。後半はあまり登場しなくなるのですが、存在感は強烈です。主人公が外部に逃げようとしても、大抵これにつかまってしまうのです。

 傑作エピソードは前半に集中している感じでしょうか。後半はかなりだれるエピソードも多い印象です。ただ最終二話はシュールさの桁が外れている感じで、一見の価値があるかと思います。
 面白かったエピソードとしては、壮大な脱出劇が虚構だったことがわかる第2話「ビックベンの鐘」、秘密を聞き出すため夢をコントロールされるという第3話「A,B&C」、閉鎖された村で行われる選挙を描く皮肉な第4話「われらに自由を」、主人公の偽者を用意し主人公自身が本物を演じている偽者だと思わせるという第5話「暗号」、村全体が突然もぬけの殻になる第7話「皮肉な帰還」、敵のはずの「No.2」を守る羽目になるという第11話「暗殺計画」、人格入れ替わりが行われるSF色の強い第13話「思想転移」などが印象に残ります。

 観ていて、あの作品に設定が似ているな…と思わせることが多いのは、後続の作品に広い影響を与えているという証拠でしょう。閉鎖空間に閉じ込められるというテーマの作品も、現在では珍しくなくなりました。ただ閉鎖空間なのに「デスゲーム」的展開にならないというのもこのドラマのユニークな点ですね。主人公がいくら反抗しようとも、敵の組織は彼を殺そうとはせず、また主人公も相手を殺そうとはしないのです。
 その意味で、主人公と相手の組織との関係は「馴れ合い」と見える部分もあり、作品全体が「箱庭」であるかのような印象も受けます。

 シュールかつ不条理なスリラーです。フランツ・カフカ、ホルヘ・ルイヘ・ボルヘス、ディーノ・ブッツァーティ、カリンティ・フェレンツ。あるいは、リチャード・マシスン、J・G・バラード、トマス・M・ディッシュ。こうした作風の作家が好きな方には、面白く観れるシリーズではないでしょうか。

  ちなみに、尾之上浩司編「『プリズナーNo.6』完全読本」(洋泉社)は非常に参考になるガイドブックで、これを片手に視聴すると、より楽しめるかと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

まとめてくださってありがとうございます
撮影はセットだけでなくロケで本当の建物を使っていていますが、それなのに作り物のような感じがいいですね
拉致され監視されるという悪夢のような いやな怖さがありますが (日本では現実にありましたが)
NO6が立ち向かうことでそれだけで終わらない作品になっていますね
【2018/11/11 19:50】 URL | ちゃちゃ #- [ 編集]

>ちゃちゃさん
まとめて観賞する機会をいただき、感謝です。
いろいろ深読みできる(それを意図していたかどうかは別として)作品で、今見ても斬新な作品でした。お話自体だけでなく、建物や舞台も「作りもの感」があるのは、作品のカラーにすごく合っていたと思います。
【2018/11/11 20:53】 URL | kazuou #- [ 編集]


この記事に対するコメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


この記事に対するトラックバック
トラックバックURL
http://kimyo.blog50.fc2.com/tb.php/847-28958dc5
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する