ブックガイド・ガイドブック -ブック・ガイドの愉しみ2 SF編-
「科学小説」神髄―アメリカSFの源流 SF万国博覧会 SFベスト201 図説 ロボット―野田SFコレクション 図説 ロケット―野田SFコレクション 図説 異星人―野田SFコレクション

 どんな本を読んだらいいの? どんな本が面白いの? という人のためにあるブックガイド。とはいっても、世の中にはブックガイドだけでも、たくさんの数があるのです。そもそも、どのブックガイドが有用なのか、ブックガイドのブックガイドまで必要なぐらい。そこで僕がお世話になったブックガイドのいくつかを紹介しましょう。

 前回に引き続き、今回はSFについての本を紹介します。
 まずは、日本SFの育ての親というべき福島正美の著書。SFのテーマについてそれぞれ語った『SFの世界』『SF入門』などがあります。SFの意義を語るなど、力が入っているというか、きわめて生真面目な語り口なのが特徴です。SFが根付いていなかったころの啓蒙書、といった面が強いようです。
 それよりも彼の編纂したアンソロジーの方が今読んでも面白いでしょう。かって講談社文庫から出ていたアンソロジーシリーズはどれも楽しめる傑作集です。作品解説と合わせれば、そのテーマについて理解が深まります。とくに破滅テーマを集めた『破滅の日』、時間テーマの『時と次元の彼方から』、ミュータントテーマ『人間を越えるもの』などが面白いです。
 石川喬司『IFの世界』(毎日新聞社)は、掲載紙の関係からか、初心者向けにSFの各テーマについて懇切丁寧に解説した良書。ところどころに見られる当時の時代風俗が古びているのはご愛敬ですが、非常にわかりやすく書かれています。
 同じく石川喬司『SFの時代』(双葉文庫 日本推理作家協会賞受賞作全集36)は、主に日本SFについての評論集。筒井康隆、星新一、小松左京、広瀬正などの作家論のほか、SF黎明期に出版されたSF小説の時評などを収録。福島正美と同じく、SF普及のアジテーター的な側面が強い著書です。
 野田昌宏『スペース・オペラの読み方』(早川書房)はタイトル通りスペース・オペラについてのエッセイですが、ブラッドベリに代表される名作短篇の紹介コーナーなどもあって、とにかく楽しめる一冊。この人、作品紹介が異様にうまいんですよね。下手をすると、実際の作品よりも面白いかもしれません。とにかく読んで楽しい紹介文では、この人の右に出るものはいないでしょう。
 同著者の『科学小説神髄』(東京創元社)は、戦前の、黎明期アメリカSFの作品の紹介をしています。SFファンでも馴染みのない名前がけっこう出てくるのですが、例によって楽しい語り口なので、安心して読めます。
 同じく野田昌宏編のビジュアル本三部作『図説ロケット』『図説異星人』『図説ロボット』(いずれも河出書房 ふくろうの本)もオススメ。著者のSF関係の蔵書からセレクションしたカバーアートや挿絵など、SFのエッセンスを視覚的に楽しめるシリーズです。
 石原藤夫+金子隆一『SFキイ・パーソン&キイ・ブック』(講談社現代新書)は、SF通史ですがほとんどハードSFにしぼった内容です。これはこれでユニークですね。
 北原尚彦『SF万国博覧会』(青弓社)は、英米に偏りがちなSFガイドの中にあって、その他の国々の作品を紹介している点で、珍重すべき一冊です。フランス・ドイツ・イタリアを始め、東欧やアジアの国のものにもページが割かれています。SFジャンル自体がほとんど存在しない国の紹介では、自然と周辺領域の作品もとりこんでいるため、文学寄りの作品が多く紹介されているのが特徴です。
 ジャック・サドゥール『現代SFの歴史』(早川書房)は、フランス人によるSF通史。英米の作品紹介はもちろんのこと、フランスSFに多くページが割かれているのが、貴重です。個々の作品の紹介は、数行ですまされる簡単なものなので、初心者向けではありません。
 ロジェ・カイヨワ『妖精物語からSFへ』(サンリオSF文庫)。タイトルはSFっぽいのですが、著者の関心がSFとは別のところにあるので、ちょっと期待はずれに思う人もいるかも。まともにSFにふれてるのは第一部だけで、それもどっちかと言えば幻想小説についてのエッセイでしょうか。むしろ第二部の〈夢〉を扱った章の方が面白かったりします。ちなみにこの本、絶版ですが、同著者の『イメージと人間』(思索社)と全く同じ内容ですので、こちらの方が手に入りやすいかもしれません。
 〈破滅と終末〉〈未来ともう一つの歴史〉〈ロスト・ワールドとパラレル・ワールド〉など、SF固有のテーマ別に、解説を行ったものがブライアン・アッシュ編『SF百科図鑑』(サンリオ)です。執筆者もアシモフ、クラーク、シェクリイなど有名作家が顔を揃えており、資料性・娯楽性をともに備えた、このジャンルの決定版事典です。発行から数十年経つので、紹介されている作品はかなり古くなっているのですが、SFのエッセンスを掴むにはいまだに有益です。
 最後に、最近出た伊藤典夫編『SFベスト201』(新書館)を挙げておきましょう。古典よりも現代ものに比重がかかっていたりと、作品選定の基準にはいささか疑問があるのですが、短すぎず長すぎない個々の解説がなかなか参考になります。
 次回は幻想文学・ホラー編をお届けします。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
石川喬司
私は石川喬司の「SF・ミステリおもろ大百科」でSFとミステリの世界に引きずり込まれてしまいました。もっともこの本と出合わなかったとしてもいずれ引きずり込まれていたと思いますが(笑)
サンリオの「SF百科図鑑」は図鑑と名乗っていながら文字情報も沢山でしたから、後年ジョン・クルートの「SF大百科事典」が出たとき、こっちの方が図鑑じゃないかって思いましたよ。
【2006/05/02 19:21】 URL | Takeman #- [ 編集]


『SF・ミステリおもろ大百科』も紹介しようと思ったんですが、SFとミステリにまたがってるんで、どちらにしようか迷った結果、省きました。要領よくまとまった良書なんですが。
そうそう! 『SF百科図鑑』は、図版が少ないんですよ。でも情報量は抜群で好きな本です。実は、ジョン・クルートの方はまた買ってないんですよねえ。立ち読みして何か違うなあ…という気がしたもので。
本当は、SFマガジンに連載されていたピーター・ニコルズの『SFエンサイクロペディア』を単行本化してほしいんですけどね。
【2006/05/02 19:41】 URL | kazuou #- [ 編集]


客観的な内容はともかくとして、福島正実が編纂した『SF入門』が思い出深いですね。私の中学時代のバイブルでした(ちょっとおおげさ)。その中でもたぶん野田昌宏が担当していたんでしょうか、SF英雄群像が好きでした。
伊藤典夫もなつかしい名前(現役で活躍していますが。)。氏が執筆していたSFマガジンの海外SF紹介コラム「SFスキャナー」のあらすじは実物よりもおもしろかった。
同じくSFマガジンに連載されたヨコジュンの「日本SF古典コテン」でしたっけ、毎回楽しく読んでました。ここからその後の氏の明治ものSF小説が生まれたのですね。
【2006/05/02 21:53】 URL | 迷跡 #- [ 編集]


福島正美の本は、今読むとかなり堅い印象を受けてしまうんですよねえ。それにくらべて、野田昌弘は、昔から全く文体が変わってないところが逆にすごいです。サービス精神満点のあの文章は驚異的ですよ。
横田順彌『日本SFこてん古典』も考えたら、相当独創的な連載ではありました。
伊藤典夫は、あらすじ紹介も非常にうまいのですが、やっぱり翻訳が、めちゃくちゃうまいです。先日とりあげたジョン・コリアの短篇の訳もこの人のものだったのですが、レトリックの使い方が目を見張るほどでした。相当遅筆で知られる人のようですけど、このレベルなら致し方ないなあと思います。
【2006/05/02 22:22】 URL | kazuou #- [ 編集]


「SF大百科事典」は……無理して買う必要がないと思います。それなりに有用なんですが、コストパフォーマンスがやっぱり悪いですね。
あらすじというと「世界のSF文学総解説」は、結末まで完全なあらすじが書かれているものがあったりして凄かったです。読んだ気になってしまうのが困りものでしたが。
【2006/05/03 16:27】 URL | Takeman #- [ 編集]

総解説シリーズ
そうですか。『SF大百科事典』は古本屋なんかで安く見かけたら、買おうかと思います。
『世界のSF文学総解説』はSFだけでなくて、ミステリとか幻想文学とか、シリーズが出ていましたが、どれも結末まで書いちゃってますよね。これってどうなんでしょう? 絶対読む気のない本の内容を知るのには最適だと思いますが。『…幻想文学総解説』に載ってた聖書とか神曲のあらすじは参考になりました(たぶん元本は一生読まないでしょうしね)。
【2006/05/03 18:45】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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