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怪奇幻想読書倶楽部 第16回読書会 開催しました
4334751393新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫)
ロバート・ルイス スティーヴンスン Robert Louis Stevenson
光文社 2007-09-06

by G-Tools
4003725069マーカイム・壜の小鬼 他五篇 (岩波文庫)
スティーヴンソン 高松 雄一
岩波書店 2011-12-16

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 8月26日の日曜日、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第16回読書会」を開催しました。出席者は、主催者を含め8名でした。
 テーマは、第1部「スティーヴンスンの怪奇と冒険」として、課題図書にロバート・ルイス・スティーヴンスン『新アラビア夜話』(南條竹則/坂本あおい訳 光文社古典新訳文庫)、同じくスティーヴンスン『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』(高松雄一/高松禎子訳 岩波文庫)を取り上げました
 第2部は「〈奇妙な味〉について考える」です。

 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。

 今回は人数が少な目だったこと、酷暑であることなどを勘案して、いつもの4時間開催ではなく、短縮した3時間で会を開催しました。
 それでは、以下話題になったトピックの一部を紹介していきます。


●第1部 スティーヴンスンの怪奇と冒険

 第1部のテーマは、「スティーヴンスンの怪奇と冒険」。課題図書として、ロバート・ルイス・スティーヴンスン『新アラビア夜話』(南條竹則/坂本あおい訳 光文社古典新訳文庫)、『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』(高松雄一/高松禎子訳 岩波文庫)を取り上げました。
 『宝島』で有名なスティーヴンスンは、怪奇幻想分野でも名作をいくつか残しています。彼の怪奇幻想作品といえば、日本では『ジキル博士とハイド氏』が圧倒的に有名ですが、スリラー『新アラビア夜話』や奇想に富んだ短篇にも味わい深いものがあります。
 岩波文庫の短篇集『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』には、怪奇幻想ではない作品も入っていますが、それらの作品でもスティーヴンスンの小説作りの上手さは感じられる…というのが共通の感想でした。

■『新アラビア夜話』(南條竹則訳 光文社古典新訳文庫)
 ボヘミアのフロリゼル王子を主人公とする連作短篇集。大きく二部に分かれており、それぞれ「自殺クラブ」3篇、「ラージャのダイヤモンド」4篇から構成されている。「自殺クラブ」は、秘密組織「自殺クラブ」をめぐる物語、「ラージャのダイヤモンド」は、インド由来のダイヤモンドをめぐる陰謀を扱った物語である。

・「自殺クラブ」という組織のインパクトは強烈。

・主人公フロリゼル王子が意外に活躍しない。

・毎話、視点人物が変わっていくのが面白い。

・今読むと結構穴があったり、細かいところが描かれていないのが気になる。

・行き当たりばったりの感覚が強いが、読ませる力はあるのは著者の筆力か。

・『暴れん坊将軍』に印象が似ている。

・お話のプロットは面白いが、キャラクター性は薄い?

・タイトルから、アシモフ『黒後家蜘蛛の会』シリーズのようなスタイルの話かと思ったら大分違った。

・エピソードの最後にアラビアンナイト風の語りがあるが、あまり効果が出ていないような気がする。

・この時代の作品には、よく東洋の宝石の話が出てくる。東洋の方が「神秘的」に感じられるからだろうか。

・それぞれのエピソードは主人公が青年に設定されているが、ほとんどが積極的な活躍をせず、事態に「流されている」印象が強い。

・コメディの印象もある。

・『アラビアンナイト』について。ヨーロッパに訳されたときの訳者によって、いろんなバージョンがある。ガラン版、バートン版、マルドリュス版など。ボルヘス編《バベルの図書館》にも入っている。

・ヨーロッパの人にとっての「東洋」のイメージには、中東、アジアなど広い地域の区別がつかずに入り混じっている。現代でも多少その傾向はある?

・誤解された日本やアジアのイメージをわざと使用した作品について。ゴードン・マカルパイン『青鉛筆の女』、都筑道夫作品など。

・ヴィクトリア朝のイギリスでは、ジャーナリズムが発達し、庶民の殺人事件やゴシップに対する興味が強かった。

・ヴィクトリア朝の長編小説は長いものが多い。ウィルキー・コリンズ、レ・ファニュなど。

・アーサー・マッケン『怪奇クラブ』について。スティーヴンスンの影響があるとも言われる作品。個々のエピソードの怪奇味は、こちらの方がはるかに濃い。

・『新アラビア夜話』には続編があるらしく、そちらも読んでみたい。マッケンの『怪奇クラブ』には、正編より続編の方の影響が濃いらしい。


■『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』(岩波文庫)

「その夜の宿」
 仲間が起こした殺人に巻き込まれ逃げ出したヴィヨンは、金も盗み取られ、一夜の宿を求めて、ある屋敷で施しを受けることになる。屋敷の主人である老人は、身分のある領主だった。やがて老人とヴィヨンとの間で問答が始まるが…。

・非常に世評の高い作品。人生について描かれた作品?

・登場人物同士の会話には、どこかキリスト教的な考え方がうかがわれる。そのあたりが日本人には難しいかも。

・荒んだ世の中が舞台ということもあり、読んでいて芥川龍之介の「羅生門」を連想した。ユゴー『レ・ミゼラブル』とも似ている?

・イギリスに比べ、ラテン系の国の人の方が無頼派が多い?


「水車屋のウィル」
 山地で養父母に育てられた少年ウィルは外界への憧れを持つが、長じるにしたがって周りの自然を愛し、そこに居を定めることになる。牧師の娘マージョリーに惹かれたウィルは、彼女に結婚を申し込むが…。

・主人公の人生観が独特。達観しすぎていて、逆にちょっと怖い。

・作者が描きたかったのは「自然人」?

・ヒロインが多少気位の高い女性として描かれているが、これは達観した主人公との対比を意識しているのだろうか。

・結末の超自然的なシーンが面白い。主人公の幻覚なのか、それとも本当に起こったことなのかはっきりしないところが味わいか。


「天の摂理とギター」
 歌や踊りを生業とする芸人夫婦レオンとエルヴィラは、訪れた町の横柄な警察署長が原因で宿を追い出され、持ち物まで盗まれてしまう。野宿を余儀なくされるかというときに、夫婦はイギリス人の青年スタッブズと出会う…。

・徹頭徹尾明るい作品。ミュージカルっぽい。

・前半と後半とのつながりが密接でない感じがする。

・『新アラビア夜話』原著の二巻に収録された作品。


「ねじれ首のジャネット」
 牧師のスーリス師は、家政婦として村でも評判の悪い女性ジャネットを雇うことになる。ジャネットは魔女との噂もある女だった。ある時を境に、ジャネットは首をねじまげた異様な状態で動き回るようになるが…。

・悪魔に憑かれた女の話。どの時点から憑かれているのだろうか。本人は途中から死んでいる?

・途中で悪魔の姿が目撃されるシーンがあるのだが、怖さを追求するならこのシーンはない方がいいような気がする。

・『新アラビア夜話』でもそうだったが、スティーヴンスンは、牧師や司祭を風刺的に描くことが多いような気がする。それほど信仰が深い人ではなかった?

・主人公の牧師がインテリであるために、迷信を素直に信じられない…というのは、面白いところ。


「マーカイム」
 骨董屋を訪れた男マーカイムは、店の主人を殺し、金目のものを奪おうとしていた。しかし殺害直後、誰もいないはずの店から何者かが歩く音が聞こえる…。

・自らの分身が改悛を迫る物語? かなりストレートなテーマの作品。

・『ジキル博士とハイド氏』とも通底するテーマを持った物語。

・『ジキル博士とハイド氏』について。薬で人格が変わるのだが、肉体も同時に変身してしまう。面白いのは、変身後の肉体が元のものより貧弱になってしまうところ。

・ダニエル・キイス作品を始め、一時期、多重人格作品がやたらと出たときがあった。同テーマのサイコスリラーもたくさんあって、食傷してしまった。


「壜の小鬼」
 ハワイのケアウェという男が、豪華な家に住む男からある取引を持ちかけられる。それは何でも願をかなえてくれる小鬼が入った壜を買ってほしいということだった。何でも願いが叶うかわりに、その壜を持ったまま死ぬと永遠に地獄の火に焼かれてしまう。そしてもう一つ、その壜を手放したい場合、買った時よりも安い値段で売らなければならないというのだが…。

・読む限り、願いが無制限であるところが面白い。

・自らの欲望だけを叶えようとした男が、他人(妻)のために自分を犠牲にしようとする…。自己犠牲テーマが強調されている。

・ほぼ同じモチーフを持った作品、フリードリヒ・ド・ラ・モット・フケー「地獄の小鬼の物語」について。こちらでは主人公がやりたい放題で、その潔さが逆に面白い。

・『アラビアンナイト』の「魔法のランプ」とも似ている。

・願い事が叶う…といえば、ジェイコブズの「猿の手」。登場人物の誰もが幸せにならない…という、怪奇小説としては、完璧な構成。


「声たちの島」
 怠惰な男ケオラは、結婚した妻レファの父親カラマケが魔術師であり、その魔術で富を手に入れていることを知る。カラマケに同行したケオラは、魔術によってある島に移動し、そこで拾った貝殻を銀貨に変えていることを知る。ケオラは、島に住む住民からは二人の姿は見えず、声だけが聞こえていることに気付く。欲をかいたケオラはカラマケの魔術により海に放り出されてしまう…。

・魔術の効果が色彩鮮やかに描かれる作品。映画化したら面白そう。

・スティーヴンソン作品の主人公は、欲に弱い作品が多く出てくるような気がする。その方が物語が面白くなる?

・貝殻が銀貨に変わるのか、魔術で銀貨に見せているだけ?

・島自体は、別世界でなく同じ世界?

・カラマケの脅威だけでなく、人食い民族が登場したりと、物語の盛り上げ方が上手い。


・「マレトルワ邸の扉」について。
 館に閉じ込められ、結婚を強制される青年の物語。非常にロマンティックな作品。後味は良い。

・ポオの詩作品について。非常に解釈が難しい。


●第2部 〈奇妙な味〉について考える

・江戸川乱歩の〈奇妙な味〉について。乱歩が読んだ当時の英米ミステリ作品に共通する傾向として、乱歩が提唱した概念。「無邪気」「残酷」がキーワード? 乱歩が言及しているのは短篇だけでなくて、エラリイ・クイーン『Yの悲劇』などにもその傾向があると書いている。

・若島正の「異色作家」の定義について。ジャンルからはみ出した「不器用」な作家が「異色作家」? シャーリイ・ジャクスンなど。

・新版の《異色作家短編集》で追加された若島正編のアンソロジーは、けっこう難しい。

・《異色作家短編集》中でも、本当に「異色」の作家は少ない? スタージョン、ジャクスンなど。

・お薦めの異色女性作家について。ミュリエル・スパーク、パトリシア・ハイスミス、ジョイス・キャロル・オーツなど。

・《奇想コレクション》について。SF作家がメインだが、内容は異色短篇的な内容が多い。ダン・シモンズや、ジョージ・マーティンはホラー系作品が多い。

・《奇想コレクション》で一番難しいのは、ジョン・スラデック『蒸気駆動の少年』?

・《晶文社ミステリ》について。埋もれていた異色作家を発掘した。ジャック・リッチー、デイヴィッド・イーリイなど。

・ヘレン・マクロイ『歌うダイアモンド』について。ちょっとSF風な奇想が入った短編集。「Q通り十番地」はディストピアSF。

・ミステリ分野でSF的な技法が使われている作品は、評価が高くなる傾向がある?

・カフカ作品について。不条理な出来事が起こるが「物語」としては展開されない。

・不条理小説について。同じ不条理小説でも、英米系の作家は「物語」の形を成していることが多いが、他のヨーロッパ諸国だとそうでないことが多い? ブッツァーティ『タタール人の砂漠』、ミヒャエル・エンデ作品など。

・フランク・シェッツィング『深海のYrr』について。最初はすごく魅力的だが、そのあとが続かない。

・サキ作品について。ブラック・ユーモアが強い。「意地悪」な作家。

・レイ・ブラッドベリ作品について。邦訳がほとんど絶版にならずに再刊されているのは、今でも人気がある証拠? ブラッドベリの傑作は初期に集中していると思う。

・M・R・ジェイムズ作品について。怪異の盛り上げ方が上手い。「笛吹かば現れん」など。

・スティーヴン・キング作品について。『ランゴリアーズ』『図書館警察』について。特に「ランゴリアーズ」は面白い。短篇は凡作が多いと言われるが、実際読むとそれなりに面白い。キングは、ネタが陳腐でも筆力で読ませられてしまう作品が多い。「第四解剖室」など。

・フィリップ・K・ディックで面白い作品は? 初期のサスペンスSF短篇、長編『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』など。


次回「第17回読書会」は、2018年10月7日(日)に開催予定です。

テーマは
 第1部:課題図書 レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国』(創元SF文庫)
 第2部:マイ・フェイヴァリット・短篇集

の予定です。詳細は後日告知いたします。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

今回、残念ながら参加できませんでしたが、岩波文庫は読みましたので、非常に参考になりました。私はハワイものがすごく気に入りました。おおらかな感じがいいですよねー( ´∀`)
次回は是非参加させていただきたいと思います。
【2018/08/27 20:04】 URL | あたびー #- [ 編集]

>あたびーさん
 スティーヴンソンの南海ものは楽しいんですよね。狭義の怪奇幻想ものでなくても、彼の作品には「ファンタジー」があることが多いです。今でも生命を失っていない作家だと思います。

 また機会があったらご参加いただければ嬉しいです。
【2018/08/27 21:06】 URL | kazuou #- [ 編集]

宝島以外にも作品多数。
声たちの島、ケオラはダメンズかもしれないけど女性にはもてるのですね。日本なら狸の木の葉のお金かしら。南国情緒一杯で楽しい。ジャネットの話は映像化したらエクソシスト並に怖いかも。こちらは南国とうって変わった陰鬱な北国の景色ですが、事件の後に任地を変わらず牧師を務めるのが不思議で、彼も悪魔に魅いられた?
【2018/08/29 09:05】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
南洋だったり、陰鬱な北国だったりと、スティーヴンスン作品の舞台は様々で楽しいですよね。
意思が弱いタイプの主人公が多いのも、作者の人間性に対する認識ゆえでしょうか。
【2018/08/30 19:33】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。
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