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アンニュイな冒険  ピエール・ルイス『ポーゾール王の冒険』
pozoru.jpg世界大ロマン全集〈第23巻〉ポーゾール王の冒険 (1957年)
ピエール・ルイス 中村 真一郎
東京創元社 1957

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 好事家として知られたフランスの詩人・作家、ピエール・ルイス(1870-1925年)の小説作品『ポーゾール王の冒険』(中村真一郎訳 東京創元社)は、これまた人を喰ったようなユーモアにあふれたファンタジー作品です。

 ヨーロッパの架空の国トリフェームの王ポーゾールは、快楽を好む享楽主義者であり、366人の后を後宮に住まわせていました。王の娘「真白きアリーヌ姫」が「とてもやさしい男」とともに出奔してしまったことを知ったポーゾールは、官吏タクシス、小姓ジリオと共に姫の後を追いかけることになります。
 アリーヌ姫が駆け落ちした相手は、男装の女性ミラベルであったことがわかります。一方、王がいなくなった後宮では、后たちがストライキを起こしていました…。

 駆け落ちしてしまった娘を探すため、旅に出た王様の奇想天外な冒険を描いた作品です。19世紀末フランスのディレッタント作家による、アンニュイなファンタジー。
 主人公のポーゾール王は、快楽主義者で何事にも億劫になるという性格。裁判においても結果は適当にあしらってしまうような人物です。何しろ王の発布した法令はたった二つから成るものなのです。「1.隣人を無視するな。2.それがわかったら好きなことをせよ。」。
 旅の共である官吏タクシスは有能で、いち早く姫の行方を突き止めますが、娘が見つかったという報告を受けても、面倒くさがりの王は後にしろという始末です。一方、色男の小姓ジリオは、村娘や王の后に言い寄っていました…。

 「冒険」といっても、王が動く範囲はたかだか数キロ。しかも基本的に王は最後までほとんど何もせず、物語を動かすのは、姫や王妃、小姓といった周りの人物たちなのです。村や町を訪れ、そこでの見聞が王を変える…という話かと思いきや、どう読んでもやっているのは単なる旅行なのが笑えます。
 もともと「寛容」である王が、娘に対しても最終的に「寛容」になるという、何とも人を食った物語。「教訓」などは全くなく、「華美」で「怠惰」で「快楽」に満ちた物語です。これだけ軽やかなファンタジーはそうそうないのではないでしょうか。

 『ポーゾール王の冒険』は、東京創元社の《世界大ロマン全集》の一冊。冒険小説、SF、ミステリなどが主体のこのシリーズ中では、かなり異色の巻だったのではないかと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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