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日常と空想  イタロ・カルヴィーノ『マルコヴァルドさんの四季』
4001141582マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)
イタロ・カルヴィーノ セルジオ・トーファノ
岩波書店 2009-06-16

by G-Tools

 イタロ・カルヴィーノの『マルコヴァルドさんの四季』(関口英子訳 岩波少年文庫)は、都会に住む男性マルコヴァルドさんの日常の冒険を描いた連作短篇集です。春夏秋冬に属するお話が、それぞれ5話づつ収録されています。

 都会に住むマルコヴァルドさんは、力仕事に従事しています。妻とたくさんの子供がいるため、経済的には楽ではありません。そんな彼が日常において自然や生きものと触れ合う様をしみじみと描く作品…と思いきや、一概にそうも言えないところが作者カルヴィーノのにくいところです。
 このマルコヴァルドさん、大家族であるということもあり、いつもお金に困っています。また、食べ物にも多少意地汚いところがあります。マルコヴァルドさんは、たびたび小狡いところを発揮するのですが、結果はなかなか上手くいきません。通り道に生えたキノコを独り占めしようとしたり、薪にしようと看板を切り落としたりするのです。単純な善人ではないところに味がありますね。

 ちょっとした失敗談というレベルの軽いお話の中に、かなりぶっとんだお話も混じっています。ハチの針がリューマチに効くという話を聞き、ハチをつかまえて医院を開業しようとする「ハチ療法」、黙って連れ帰った病院のウサギが伝染病のウィルス持ちだった…という「毒入りウサギ」、バスの停留所に行くはずが、なぜか飛行機に乗ってしまうという「まちがった停留所」など。
 これらのお話では超自然的な出来事こそ起こらないものの、限りなくファンタジーに近い日常の冒険が描かれるのです。猫の集まる邸を描いた「がんこなネコたちの住む庭」に至っては恐怖小説の趣きさえあります。

 またそれぞれのエピソードには、さらっと植物や生きものなどの自然が登場し、それらは前景には出てこないものの、いい味わいを出しています。おかしなエピソードの中にも時折現れる夜景や星空など、ほんのりと詩情が感じられるのも魅力的ですね。
 魔法がなくても、異世界に行かなくても、都会の日常生活にも「ファンタジー」は現れる…という、なんとも素敵な作品です。児童文学に分類される作品ですが、この味わいは大人が読んでこそ楽しめるものではないでしょうか。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
カルヴィーノ作品で一番好きです。
ぶっとんだ事態に巻き込まれても、次の話では何事も無かったかのように始まるのはドラえもんの様です。猫屋敷は老婦人にとってはホラーですが、施工業者にとってはコントのよう。自然と開発、どちらが勝ったのか知りたい!
【2018/07/07 20:26】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
時々とんでもない展開なのですが、確かに次の話ではなかったかのようになっているのは、様式美みたいで楽しいですね。
猫屋敷の話は、読んでいる方としてはちょっと怖かったです。
全体にユーモアの要素が強いですが、それも「心温まる」タイプとはいえないのがまた、味がありますね。
【2018/07/07 21:19】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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