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L・ロン・ハバードのホラー小説を読む
 L・ロン・ハバード(1911-1986)はアメリカの作家。初期はパルプマガジンにSFやホラー小説を発表していました。後年、新興宗教めいた活動をしたことで評判の悪い人ですが、パルプマガジンに発表されたエンターテインメント作品には、なかなか面白い作品があります。
 邦訳のある中では、1940年代に書かれたホラー小説『死の代理人』(島中誠訳 ニュー・エラ・パブリケーションズ・ジャパン)と『フィアー 恐怖』(島中誠訳 ニュー・エラ・パブリケーションズ・ジャパン)が佳作といっていいかと思います。
 都会的なファンタジーで知られた雑誌『アンノウン』に掲載されただけあって、ファンタジー要素の強いホラー小説になっています。


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死の代理人
L. ロン・ハバード L. Ron Hubbard
ニュー・エラ・パブリケーションズ・ジャパン 1994-04

by G-Tools

『死の代理人』
 カナダ空軍パイロット、クレイ・マクリーン大尉は、戦闘中に飛行機を撃墜され死を覚悟した瞬間、不思議な声を耳にし、その直後、奇跡的に命を取り留めます。
 ある夜、枕元に立った使者に連れられて訪れたのは謎の宮殿でした。そこの王座に座っている何者かは「破壊」と名乗り、彼に仕えるか、さもなくば死なねばならないと宣言します。要求をはねのけるクレイでしたが、目覚めた後から不思議な事件が連続して彼を襲います。
 身の回りで事故が起こったり、クレイ自身も事故に巻き込まれる事件が頻発するのですが、彼は毎回助かる代わりに、周りの人間が大量に死んだり負傷したりしていたのです。 自分のせいで他人が犠牲になることを気に病んだクレイは、自ら命を絶つため再び軍に志願しますが…。

 あることをきっかけに事故を引き寄せる体質になってしまった男を描く作品です。
 主人公の命運を握っているのが「破壊」を名乗る神であることが序盤でわかってしまうので、ホラーというよりはファンタジーの要素が強くなっています。死を引き寄せてしまう主人公が自らの命を絶とうとするものの、全てが逆効果になりさらに犠牲者を出していくという展開は強烈です。
 
 『死の代理人』には、短篇「幻の四十八時間」が併載されていますが、こちらもなかなかの秀作です。
 孤独な老女メレディスは、天使から能力を与えられ、若く美しい姿になり町に出ます。そこで美青年トーマスと出会ったメレディスは、トーマスから求婚され、それを受け入れます。しかし天使の力は48時間しか持たないのです…。
 48時間以内ならあらゆる望みをかなえられるが、その時間が終われば全てが元通りになってしまうという能力を持つ「天使」が、人間を試すために賭けをする…という物語です。寓話的な要素の強い作品ですね。



4931223141フィアー―恐怖
L.ロン ハバード L.Ron Hubbard
ニューエラパブリケーションズジャパン 1998-12

by G-Tools

『フィアー 恐怖』
 合理主義者である人類学教授ロウリーは、三流新聞に書いた記事が原因で、学長から解雇を言い渡されてしまいます。
 親友のトミーに相談に訪れたロウリーでしたが、家を出た後から4時間ほどの記憶がないことに気がつきます。その直後から、ロウリーの身の回りに不可解な現象が起こり始めます。彼が出会う不思議なものたちは揃って、失われた4時間を見つければ死が待っている…と予言するのですが…。

 ある日、4時間分の記憶を失ってしまった大学教授が不可解な目にあうという不条理ホラー小説です。
 主人公の4時間の記憶が失われた理由や、身の回りに起こる超自然現象の理屈が最後まで全くわからないため、かなり「不条理」な雰囲気が濃いです。
 後半に出現する、「世界」がぺらぺらの書割のようになってしまうというファンタジー的な情景が素晴らしいです。その情景が反転し、「残酷な現実」が現れるというクライマックスのインパクトも強烈ですね。


 作者のL・ロン・ハバードは、SF作家として出発するものの、後年、新興宗教的な活動がメインとなり、今ではそちらの活動の方が有名な人だと思います。ただ、邦訳をいくつか読む限り小説家としての腕は確かで、『死の代理人』『フィアー 恐怖』は非常に面白い作品でした。
 『死の代理人』ではSF、『フィアー 恐怖』ではミステリやサスペンス的な技法が使われており、1940年代に書かれた作品としては、非常にモダンで新しいタイプのホラー小説だと思います。
 特に『フィアー 恐怖』は「ニューロティック(神経症的)・スリラー」の趣きもあって、例えば、ジョン・フランクリン・バーディン、マーガレット・ミラー、デイヴィッド・イーリイなどの作品にも通底する雰囲気が感じられますね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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