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引き継がれる愛  フランク・デ・フェリータ『オードリー・ローズ』
B000J8U45Oオードリー・ローズ (1977年)
フランク・デ・フェリータ 広瀬 順弘
角川書店 1977-06

by G-Tools

 ビルとジャニスのテンプルトン夫妻は、娘のアイヴィーとともに幸せな生活を送っていました。ある日、夫妻は、変装した姿で娘の近くをうろつき回る男の存在に気がつきます。
 警戒する夫妻の元を突然訪れた男は、自らをフーヴァーと名乗ります。かって資産家だった彼は、車の事故で妻と娘を失ったというのです。たまたま出会った霊能力者に、娘は生まれ変わってこの世に生きているという助言を受けたフーヴァーは、テンプルトン夫妻の娘アイヴィーこそ、自分の娘オードリー・ローズの生まれ変わりだと断言します。
 フーヴァーの話を信じないテンプルトン夫妻でしたが、やがてアイヴィーは発作を起こしパニック状態になります。その姿は、焼け死んだというオードリー・ローズの最期の姿を再現するかのようなのです。放っておけばオードリー・ローズの霊によってアイヴィーもまた死んでしまうというフーヴァーを、夫妻は追い返します。
 同じマンションに引っ越してきたフーヴァーは、ある日発作を起こしたアイヴィーを助けるためと、テンプルトン家の部屋に入り込み、自分の部屋にアイヴィーを運びます。フーヴァーの考えを妄想だと信じるテンプルトン夫妻は、フーヴァーを誘拐罪で告訴します。
 フーヴァーを弁護することになった若手弁護士マックは、インドの行者や霊能力者らを証言に立て、生まれ変わりを実証しようと考えます。アイヴィーが霊的にはフーヴァーの娘だと証明できれば、誘拐罪は成立しないことになるのです。
 飽くまで生まれ変わりを信じないビルに対し、ジャニスはだんだんとフーヴァーの言葉を信じ始めますが…。

 フランク・デ・フェリータ『オードリー・ローズ』(広瀬順弘訳 角川書店)は、生まれ変わり、輪廻転生を扱ったオカルトホラー小説です。
 序盤こそ、生まれ変わりが真実なのか?という疑念がきざすものの、すぐにアイヴィーの発作が描かれ、その超自然的なトーンから、読者としては、生まれ変わりがほぼ真実であることがわかります。
 フーヴァーはテンプルトン夫妻の説得に失敗し、それは裁判に持ち越される形になるわけですが、そこで フーヴァーの弁護側は、霊能力者や超心理学者を総動員して、生まれ変わりを陪審員に納得させようとします。
 その過程で、ジャニスもまたフーヴァーの言葉が真実ではないかと、考えを変え始めるのです。

 スピリチュアルな要素の強い作品ですが、作者がそれを客観的に描いているので「トンデモ系」といった感じにはなりません。
 全体を通して、生まれ変わり、引いては東洋的な宗教観が描かれており、その描かれ方は真摯なものです。その証拠に、現実主義的だった登場人物の幾人かは、最終的には、その世界観を受け入れたことを示唆する描写も見られます。

 読み所は、やはり作品の大部分を占める裁判シーンでしょうか。法廷で生まれ変わりを実証することができるのか?といったメインの興味の他にも、自己の利益のために動く弁護士や検事らの生々しい感情なども描かれます。
 そして裁判を通して、テンプルトン夫妻の間の軋轢も描かれていきます。現実主義者の夫ビルと、必ずしもそうではない妻ジャニス、裁判がほぼテンプルトン夫妻側の勝利に終わろうとするときに行ったジャニスの決断とは?

 裁判シーンが終わった後にも、また大きな起伏が用意されており、最後まで飽きさせません。「オカルト小説」「ホラー小説」の肩書きのつく作品ですが、それを差し引いても力強い筆致で描かれた作品で、小説として魅力のある作品だといえます。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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