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「執念」の物語  木犀あこ『奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ』
B07BJY6VGD奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ (角川ホラー文庫)
木犀 あこ
KADOKAWA / 角川書店 2018-03-25

by G-Tools

 第24回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作品だった、木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』(角川ホラー文庫)は、 新人ホラー作家の熊野(ゆや)惣介と、怪奇小説誌『奇奇奇譚』の編集者である善知鳥(うとう)が、小説の取材のために心霊スポットを訪れ、さまざまな怪奇現象に巻き込まれる…という体裁の作品でした。
 霊を「見る」ことができるが「怖がり」の熊野と、霊に「強い」が「見る」ことはできない善知鳥のコンビの掛け合いが楽しい作品でもあります。

 今回刊行された『奇奇奇譚編集部 幽霊取材は命がけ』(角川ホラー文庫)は、『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』の続編になります。大きく3つに別れた連作短篇集になっています。

 「惑星怪人エヴィラ」では、熊野が、特撮作品に登場する邪悪な怪人エヴィラに実際に襲われるという事件が描かれます。善知鳥が特撮ファンであることが明かされるなど、楽しい作品なのですが、その裏で「恐怖とは何か?」「人間はなぜ恐怖を求めるのか?」といった真摯なテーマが展開されているという意欲的な作品です。

 「ひざのさらおいてけ」は、四国に住む同世代の作家、安達原を訪ねた熊野が、現地の観音像内部の博物館において遭遇する怪異を扱っています。「作家はなぜ小説を書くのか」「作家の行動原理」など、小説論的なテーマも興味深いですね。

 「不在の家」は、幽霊屋敷テーマの作品。アウトサイダー・アートの大物、渡会ヱマが生前に作品を書き残した家は、彼女の親の意向によりそのまま保存されていました。しかし過去、その家に入った3人の有名アーティストたちは全員変死していたのです。家を取材に訪れた熊野たちは、奇怪な現象に巻き込まれますが…。
 アーティストたちはなぜ死ぬことになったのか? 渡会ヱマが残したものとは何だったのか? 明かされる真相は非常に斬新。
 幽霊屋敷ものの名作、シャーリイ・ジャクスン『丘の屋敷』が作品の重要なテーマとして扱われているのも目を惹きます。ある種の『丘の屋敷』論になっているといってもいいぐらいかもしれません。
 シャーロット・パーキンス・ギルマンの「黄色い壁紙」や、デュ・モーリア作品についても言及されるのは、怪奇小説ファンにとっては嬉しい趣向でした。

 今回の作品では、全体に「霊の存在理由」について考察されているのが目を惹きますね。「あの霊はなぜ現れ続けるのか?」「なぜ、あの霊はああいう形で出現する必要があったのか?」といった疑問に対し、非常に知的に考えられています。
 また、そうした霊現象と並行して、主人公熊野の小説を書く動機について、徐々に明かされていくという趣向も面白いです。何より「霊現象」と「小説を書くこと」が、しっかり結び付けられているところに感心させられます。
 集中での一番の力作は間違いなく、巻末の「不在の家」なのですが、この作品では、小説を書く動機どころか、生きる動機までも問われるという、スケールも大きな作品になっています。個人的には、諸星大二郎のある種の作品を連想しました。

 前作もそうでしたが、霊現象や怪奇現象が、物語を彩るただの「ファッション」ではなく、登場人物たちの「動機」や「人生」にしっかりと絡んで、意味を持ってくるところが素晴らしいです。丁寧に構成された工芸品のような怪奇小説、といっていいかと思います。

 前作『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』の感想はこちら

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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