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無垢な悪魔  バーナード・テイラー『神の遣わせしもの』
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神の遣わせしもの (1980年) (海外ベストセラー・シリーズ)
バーナード・テイラー 武富 義夫
角川書店 1980-12

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 画家のアランは、妻ケイトと4人の子供とともに、休暇旅行としてピクニックに訪れていました。そこで出会った妊婦と言葉を交わしたケイトは違和感を覚えます。何人も子供を産んだといいながら、妊婦はまるで子供に対して興味がないようなのです。しかもケイトが抱かせた赤ん坊に対する態度を見る限り、子供を抱いたこともないかのようでした。
 ある日突然、夫妻の家を訪問してきた妊婦は産気づき、そのまま女児を産み落とします。しかし赤ん坊を放ったまま、妊婦は行方をくらませてしまいます。
 捨てられた赤ん坊はボニーと名付けられ、夫妻の養子となります。その直後、夫妻の末っ子の赤ん坊が窒息死し、その後も子供の突然死が続きます。ボニーが犯人ではないかと気付いたアランは、ボニーを家族から引き離そうとしますが…。

 バーナード・テイラー『神の遣わせしもの』(武富義夫訳 角川書店)は、養子にした子供が家族を崩壊に導くという恐怖小説です。
 両親とも最初はボニーをかわいがりますが、語り手アランの方は、だんだんとボニーの不審な行動に気付き始めます。親の前では純真な子供を演じながら、義兄弟たちには悪意ある行動を繰り返すのです。実子の訴えが事実だと確信したアランは、ボニーを家族から引き離そうとします。
 しかし、妻のケイトはボニーを溺愛しており、アランの話を信じようとしません。やがて実子を引き離そうとしたことが誘拐行為と捉えられてしまい、夫婦の仲も悲惨なことになっていくのです。

 語り手アランが、すでに悲劇が起こってしまった後に回想しているという体裁の作品なので、物語が悲劇的な結末で終わることはわかっています。また犠牲になるのは皆子供だということもわかっているので、その点後味は非常に悪いです。
 ボニーの犯行は、一度も直接的には描かれないので、彼女が超自然的な存在だとは、最後まで明確にされません。しかし、読んでみるとどう考えても超自然的存在だとしか取れないようになっていて、その辺りの描き方のバランスが非常に上手いですね。
 ボニーが本当はいったいどういう存在なのか? ボニーの母親は何者だったのか? といった部分は最後まで全く明かされません。この手のテーマの作品で、「悪魔的な子供」を描くのに、宗教的・オカルト的な背景を全く使わないところは逆に新鮮に感じます。全体に不気味なトーンの支配する恐怖小説の佳作でした。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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