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知られざる惨劇  ジョン・ソール『惨殺の女神』
4150404410惨殺の女神 (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)
相沢 次子 ジョン・ソール
早川書房 1987-04

by G-Tools

 ボストンから引っ越してきた医者一家の養女ミシェルは、本当の娘と変わらぬ愛情を持って育てられていました。しかし、落下事故で片足をくじいてから彼女の運命は変わり始めます。
 片足が不自由になったミシェルは、学校の生徒たちとも上手くいかなくなり始めます。妹が生まれてから、両親からの愛情も失ったと思い込んだ彼女は、内にこもってしまいます。彼女の友人は、自分にだけ見えるという「アマンダ」だけだったのです。
 やがて、ミシェルをいじめていたクラスメイトが事故死します。直前まで、ミシェルと二人でいるところを目撃されたことから、ミシェルが殺したのではないかという噂が広まります。それ以降も、ミシェルと接触した子供たちが突然死を遂げるという事件が相次ぎますが…。

 ジョン・ソール『惨殺の女神』(相沢次子訳 ハヤカワ文庫NV)は、過去に恨みを持って死んだ少女の霊が、現代の少女に取り憑き惨劇を繰り返す…といった感じの作品です。 ミシェルが亡霊に憑かれていることは、序盤から明確にされているのですが、そのことは最後まで周囲の人間にはわかりません。超自然的な現象が多発しているにもかかわらず、それらは皆、少女の責任とされてしまうのです。

 とにかく、主人公の少女ミシェルがいじめ抜かれます。クラスメイトや学校の生徒だけではなく、感情的な行き違いから、父親からも放置されるようになってしまいます。
 かって子供を治療できず死なせてしまったミシェルの父親は、自分の娘を含め、子供に対して恐怖を抱いてしまうのです。やがて、かっては可愛がっていた自分の娘との距離もおかしくなってしまいます。

 殺害されるのも子供、そして容疑者扱いされ虐待されるのも子供という、非常に後味の悪い作品なのですが、なぜか最後まで読ませられてしまうのは、ソールの筆力ゆえでしょうか。
 怪異現象やそれに翻弄される子供に対し、救いの手もなく、またそれらに対する解決もありません。そもそも怪異現象があるという事実さえ、登場人物たちには認識されないのです。
 認識しているのは読者だけなのですが、この作品形式、何かに似ています。読者には初めから手の内を明かしておいて、何も知らない登場人物がどうなるのかやきもきさせる…。考えてみたら、シャーロット・アームストロングのサスペンスに似ている気がするのです。その意味で、読者を焦らせる…という手法をホラーで実践しているのが、ジョン・ソールということになるのでしょうか。

※この作品は、ブログ「閑中忙有」をやっておられる、るねさんのご厚意でお譲りいただきました。面白い作品を読む機会をいただき、ありがとうございました。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



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