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深海からの侵略  ジョン・ウィンダム『海竜めざめる』
B000J8U40E海竜めざめる (1977年) (ハヤカワ文庫―SF)
ジョン・ウインダム 星 新一
早川書房 1977-10

by G-Tools

 民間放送会社に勤めるマイク・ワトソンは、妻のフィリスとともに、空から謎の火球が海へと落下するのを目撃します。世界中で同様の目撃が相次ぐとともに、船が次々と姿を消します。
 火球の落下地点が全て海であることから、ボッカー博士は、宇宙からの知的生命体が深海へと侵入し、潜んでいる可能性を示唆します。やがて海から、有機体で構成された戦車が地上に上陸し、人類を捕獲し始めます。
 また、侵略者たちは氷河を溶かし、海面を上昇させ始めます。都市を水没させようというのです。数年のうちに、海面の水位は危機的な状態にまでなってしまいます。マイクとフィリスは高層ビルに籠城することになりますが…。

 ジョン・ウィンダム『海竜めざめる』(星新一訳 ハヤカワ文庫SF)は、宇宙から飛来した謎の生命体により、人類が絶滅寸前にまで追い詰められるという、いわゆる「破滅SF」に属する作品です。
 「侵略」とはいえ、最初の火球のほかは、侵略者そのものは全く姿を見せず、彼らの行いが間接的に及ぼす影響のみが描かれるのがユニークなところ。
 圧巻なのは、侵略者が作った戦車のような兵器が、人間を襲うシーンでしょう。一見生物のように見えますが、有機的な物質を組み合わせて作ったようなユニークな造形なのです。

 「侵略もの」といえど、人類対侵略者の戦い!みたいなことにはなりません。海で核爆弾を爆発させたりと、人類側の攻撃もあるのですが、基本的には侵略者側からの一方的な攻撃が続いていきます。やがて海面上昇により、都市の機能がマヒしていき、ゆっくりと人類が衰退していきます。
 後半は、侵略者側の動きはそれほど目立たず、都市を追われた人間たちの様子がじっくりと描かれていきます。ウィンダムの抑制のきいた筆致と、淡々とした記述もあって、寂寥感の感じられる味のある作品になっています。

 H・G・ウェルズの『宇宙戦争』をかなり意識したと思しい作品で(実際『宇宙戦争』に関する記述も出てきます)、侵略の様子とか、攻撃に使われる機械、結末の処理に至るまで、かなりの類似点があります。
 侵略者との戦いよりも、世界が海に沈み始めた後の、人類の黄昏の部分の方に力点が置かれた感じで、実際そちらの部分の方が味わいがありますね。
 古典的な作品ですが、今読んでも充分に面白い作品です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
宇宙というより海洋サスペンスで
ウィンダム作品は他にもあっさり解決しちゃうラストなものがありましたが
そういえば宇宙戦争にも似てますね
個人的には「深海のYrr」が、これに人間ドラマと最新科学を詰め込んでアップデートしたような印象でした
【2017/10/06 22:15】 URL | ガンビー #- [ 編集]

>ガンビーさん
ウィンダムは「大団円」とか「カタルシス」とかに、あんまり興味がない感じがしますね。結末に至るまでは面白いので、ちょっと不満が残るのですが。
『宇宙戦争』も最初に読んだときは、なんか投げやりなラストだなあと思ったのですが、後から考えると、あれはあれでリアリティがあるなあと。

『深海のYrr』って、そういう話だったんですか…。未読なので、機会があったら読んでみますね。
【2017/10/07 18:55】 URL | kazuou #- [ 編集]

昔読んだ記憶があります
この話は、小学生5,6年の頃に「子供向けSFシリーズ」の1つとして
読んだ記憶があります。
文が簡単に短く編集され、挿絵も入っていました。
題名も「深海の宇宙怪物」だったと思います。
特に人類衰退の部分が大きくカットされていた様に思います。

当時この手の話をほとんど読んだ事がなく、免疫のない状態だったためか
子供心に非常にショックを受け、しばらく怖くて仕方がありませんでした。

読んでから20年弱経ちますが、話自体は(挿絵も)今でも結構覚えています。
特に、地球温暖化の知識が身についたばかりだったので、
海面を上昇させる、という攻撃手段がとてもリアルに感じました。
【2017/10/12 22:44】 URL | bear13 #- [ 編集]

>bear13さん
ウィンダム作品は、ドキュメンタリーみたいに淡々と話が進むことが多いので、逆に「怖い」ことがありますよね。この作品では、人類が襲われたり、死んでしまう部分も結構淡々としていて、インパクトがありました。

発表年代を考えると、地球環境を変化させる…という手段も先駆的な試みかもしれません。
【2017/10/13 19:31】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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