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霊さまざま  木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』
4041061377奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い (角川ホラー文庫)
木犀 あこ
KADOKAWA 2017-09-23

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 新人ホラー作家の熊野(ゆや)惣介は、怪奇小説誌『奇奇奇譚』の編集者である善知鳥(うとう)とともに、心霊スポットを訪れ取材を重ねていました。
 霊を「見る」ことのできる熊野と、霊に「強い」善知鳥は、体験した怪奇現象をネタに作品を書こうというのです。
 複数の場所でそれぞれ違う形の霊と遭遇する二人でしたが、それらの霊には共通点がありました。霊は奇妙な音の組み合わせを発し、意志の疎通をしようとするかのように見えますが、それが叶わないと消えてしまうのです。霊現象の背後を調べるうちに、二人はある人物に行き当たることになりますが…。

 木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』(角川ホラー文庫)は、第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作。ホラー作家と編集者のコンビが、心霊現象を調査していくという作品です。霊を見ることができるが対抗する力はない熊野と、逆に霊は見えないが対抗する力を持つ善知鳥を組み合わせているのが面白いところですね
 幽霊は存在するのかどうか?という点は疑問にされません。幽霊自体の存在は明確にされており、その上で、その霊がどういうものなのかを調査するという形になっています。

 怖がりである熊野と自信家である善知鳥のキャラクターの掛け合いもあり、心霊現象に遭遇しても陰惨な印象はありません。
 登場する個々の霊現象に関しても、それぞれ工夫がされていますが、特に面白いと思ったのは、植物園で起こる「謎の発光体」に関わる事件でしょうか。面白い形の霊が描かれ、それを認識する主人公の霊の捉え方も目から鱗でした。
 霊現象全体の謎の真相もなかなかユニークで、こういうアプローチの作品はあまり読んだ覚えがありません。作品全体に「メタな趣向」が使われているのですが、作家と編集者を主人公にしている必然性がちゃんと感じられるところに、非常に感心しました。

 わりと短い枚数の作品ですが、テンポは良く、リーダビリティは高いです。序盤で、「全く別の霊が、共通した振舞いを示すのはなぜなのか?」という謎が提示され、主人公たちの目的が明らかになるのが早いのも影響しているのでしょうか。
 作家である主人公の作品名がたびたび言及されますが、「さもなくば胃は甘海老でいっぱいに」「付喪神デッドパレード」「家具とそうでないものとの区別がつかない男性作家」など、面白そうなタイトルで、こちらも読んでみたくなりますね。
 善知鳥の力の由来が何なのかはまだ描かれておらず、続編が書かれるならそちらで描かれることになるのでしょうか。
 アイディアに溢れた丁寧な作品で、怪奇小説ファンとしては非常に満足のゆく作品でした。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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