ナイトビジョンその8
 今週放送分の『ナイトビジョン』のレビューです。

「迷路」
 女子大生スーザンは、人付き合いが苦手だった。デートを申し込んできたウェスの誘いも、あっさりと断ってしまう。ある日スーザンは、大学に行く途中でウェスを見かけるが、顔を合わせないように、そばにあった生垣の迷路に入ってしまう。
 迷路を出ると、なぜか大学は静まりかえっている。どこにも人のいる気配がないのだ。そこへふと音楽が聞こえる。音に誘われてその部屋に入るとそこは音楽の講義室だった。前の座席に座っている学生たちを見つけたスーザンはほっとする。彼らに声をかけようとしてスーザンは絶句する。なんと彼らは死んでいたのだ!
 そこへ女教師が現れる。彼女は何事もなかったかのように授業を始め、スーザンにも座れと促す。逃げようとするスーザンに教師は狂ったようにおそいかかる。
 何とか逃げ出したスーザンは調理室にあったナイフを手に校内を探索する。そこへ突然、近くの電話のベルが鳴る。電話の主は「そんなナイフなど役にたたない。みな死ぬんだ」と奇怪な言葉を洩らすのだが…。
 不思議な世界に迷い込んでしまった女子学生の物語です。話の展開からして、迷路を通して別世界に入り込んだだろうことは予想がつくのですが、その世界がどんなものなのかが判明するまでのサスペンスには素晴らしいものがあります。
 内向的で人付き合いが苦手という主人公の性格が、ストーリーと有機的に結びつけられているのがミソ。彼女が出来事を通して成長する、という展開になっているのです。その点、序盤で軽くスケッチされるスーザンの性格描写は、短いながらも実によく出来ています。
 結末は、この番組には珍しいハッピーエンド。とはいってもそれは主人公にとってであって、客観的な状況としてはアンハッピーエンドではあります。極限状況において人間性がためされる…という、いわゆる〈破滅SF〉のヴァリエーションです。

「ハーモニー」
 都会での生活に倦み、当てもない旅行中の青年イライは、車が故障したため、歩いて最寄りの町ハーモニーにたどりつく。そこで出会った若い女性ルシンダは、車の修理工場も宿も紹介してくれる。ルシンダだけでなく、そこで出会った人々は誰もが親切であり、彼はこの町が旅行の目的地だったのではないかと、ふと考える。宿の主人フィンチ夫人もまた、イライを歓迎してくれるのだが、彼が口笛を吹いたとたんに、恐ろしい剣幕で激昂する。
 散歩に出たイライは、墓地で葬儀に出くわす。祈りの歌も歌わない葬儀にイライは不審に思うが、ルシンダとその弟ティムと出会い、死んだのはティムの親友の少年であることを知る。そしてティムは町のことを非難する。
 イライは、ハーモニーではまるで音楽というものが聞こえないことに気がつく。口笛や鼻歌でさえも聞こえないのだ。そしてある夜、イライのもとにティムが忍んでくる。この町から連れだしてくれとティムは懇願する。この町の人々は音楽によって怪物が呼び覚まされるという伝説を信じ切っているのだという。この前の死んだ少年も音楽を聴いたために、母親に殺されたのだというのだ!
 夜中、墓地に現れたイライは、墓石がほとんど十代の子どものものであることに驚く。するとふと人影が。それは先日死んだ少年の母親だった。彼女の言葉から少年は殺されたことを知ってイライは驚くのだが…。
 一見平和で牧歌的な田舎町が、実は恐るべき因習のはびこる場所だった!というパターンをひねった話です。音楽で怪物が呼び覚まされるという伝説を信じる人々に、イライはその迷信を責め、人々は改心する…という展開なのですが、その後のオチには、やられた!という感じです。よくできたアイディア・ストーリーです。

テーマ:海外ドラマ(欧米) - ジャンル:テレビ・ラジオ

この記事に対するコメント
生垣の迷路!
生垣の迷路を出てくると世界が変わっていたという設定がいいですね。日本のちゃちな迷路しか知らないでロンドンに旅行したとき、近郊のお城の庭園で初めて本格的な生垣迷路を体験しました。①生垣の密度が半端じゃない、②生垣が高くてとても乗り越えることができない、③迷路が広い。結果、なかなか出ることができなくて、バスの集合時間に遅れるかもしれない、それどころか一生ここを出られないとさえつかの間思ったものでした。
迷路の酩酊感、そこを脱出したときに感じる世界が変わった感覚。それを巧みに使った設定だと思います。
ところで「ハーモニー」。私だったら、"改心した"町のみなさんが楽しく演奏を楽しんでいると、その背後から‥というオチにしますね。
【2006/04/21 22:34】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

当たり!
本場の迷路を体験されたとは、羨ましい限りです。個人的にも、迷路、迷宮ネタを扱った作品というのは大好きなのです。江戸川乱歩の『幽霊塔』とか、最近では恩田陸の『MAZE』なんかは面白く読みました。
「迷路」に出てくる生垣の迷路は大したものではないのですが、別世界への入り口という設定からすると、なかなかだと思います。
「ハーモニー」実は、迷跡さんの考えた通りのオチです。 フレドリック・ブラウンばりのアイディア・ストーリーなのでした。
【2006/04/21 23:08】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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