恐るべき子供たち  ジョン・ウィンダム『呪われた村』
4150102864呪われた村 (ハヤカワ文庫 SF 286)
ジョン・ウィンダム 林 克己
早川書房 1978-04

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 ある夜、郊外の村ミドウィッチに未確認飛行物体が着陸した直後、周辺のあらゆる生物が眠らされてしまいます。住民はすべて無事でしたが、村に住む受胎可能な女性の全てが妊娠していたのです。生まれた子供は、みなが同じく銀色の髪と金色の瞳を持っており、異常なまでのスピードで成長します。成長した子供たちは集団で行動するようになり、村の人々は彼らを恐れはじめますが…。

 ジョン・ウィンダム『呪われた村』(林克巳訳 ハヤカワ文庫SF)は、ホラー的要素の濃いSF作品です。
 異星人らしき存在の子供たちが成長するにしたがい、不気味な行動を見せ始めます。集団で行動する彼らは意識を共有しており、誰かが知識を得ると、他の仲間も同じ知識を得るのです。また自分たちに危害を与えようとする人間に対しては、テレパシーで相手を操り殺すことも可能なのです。
 危険な存在は排除すべきだと考える人間、いくら異星人の子供でも自分で生んだ子供は殺せないという母親、政府が極秘に村を監視するなか、子供たちと村人たちの対立は日に日に大きくなっていきます。

 子供たちの「親」である異星人は序盤で退場した後、まったく姿を現しません。あくまで彼らが残した子供たちと、地元の人間たちとの対立が静かに描かれていくという作品です。人間とは異質の子供たちの動向と思想、そして彼らに対する大人たちの考察などが地道に描かれるので、派手さはあまりありません。
 事件らしい事件は、成長した子供たちが、自分たちに危害を与えようとした人間に報復する場面ぐらいで、それに対しても冷静に対処しているのです。異質とはいえ、姿形は人間であり、意思の疎通もある程度できるところから、怪物じみた印象は受けず、またそれゆえ逆に、不気味さを感じさせる存在なのです。

 子供が相手だけに、親子の情愛が葛藤を引き起こすのかと思いきや、登場人物たちは、意外なほど情愛的な面では淡白です。排除すべき敵であると冷静に判断しているのは、イギリス作品ならではでしょうか。そのあたりも、この作品に「静かな」イメージを受ける要因の一つかもしれません。

 日常に徐々に非日常的な要素が忍び込んでくる…。地味ながら、全体に抑制の利いた語り口で描かれる作品は、モダンホラーの一つの原型的な作品ともいえますね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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