連鎖する呪い  マイケル・マクダウエル『アムレット』
4150404763アムレット (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)
マイケル マクダウエル 冬川 亘
早川書房 1988-02

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 ライフル工場が唯一の産業である小さな田舎町で、義母とともに暮らす若妻サラ。徴兵されていた夫は、ライフルの暴発事故により植物状態で家に帰ってきます。介護を要する夫と口うるさい姑との生活の中で、サラは健気に家庭を守ろうとしていました。
 夫がこんな状態になったのは、夫の親友でありライフル工場の責任者でもあるラリーのせいだと逆恨みする義母は、ある日見舞いに訪れたラリーに対し、奥さんへ上げてくれと美しい首飾りを渡します。ラリーの妻は、首飾りを身につけた直後に豹変し、家族を惨殺してしまいます。
 その後も、首飾りを手に入れた人間とその周りの人間が死んでいくことに気付いたサラは、すべては義母の仕業なのではないかと考え始めますが…。

 マイケル・マクダウエル『アムレット』(冬川亘訳 ハヤカワ文庫NV)は、呪いの首飾りをめぐるホラー作品です。主人公サラの義母が間違いなくその元凶であることはわかるのですが、白を切り続ける彼女からは、なかなか真実を聞き出すことはできません。
 この首飾りの威力が強烈で、身につけた瞬間から凶暴になり、あっという間に殺人を犯してしまうというゾンビウイルスそこのけの威力なのです。
 首飾りの呪いについて、具体的な情報がほぼ全く明かされないため、それを拾ったり、触った瞬間に、その人物の死が決定してしまうという恐ろしいもの。首飾りを手にした人物が死に、次に手に入れるのは誰なのか? というサスペンスもあります。

 ある程度話が進むと、首飾りを手に入れた人間が惨劇を引き起こすというパターンがわかってしまうので、その意味で展開に驚きはないのですが、飽きずに読ませるのは、作者の筆力ゆえでしょうか。
 凶行場面の描写が詳細でショッキングなのと(美容院で髪をはぎ取ったり…)、ブラック・ユーモアを交えた人物描写が冴えているせいなのもあるかと思います。ことに主人公サラの義母のキャラクターが強烈です。息子を産んだのは自分が楽をするため。そして、自分と息子以外は、すべて敵であり死ねばいいと、日頃から公言し、嫁のサラに対しても虐待まがいの発言を繰り返します。
 しかし、実の家族を全て亡くし、家もないサラにとっては、この義母の家だけが我が家であり、不具になってしまった夫の面倒を見ることは、自分の義務だと思い込んでいるのです。そんな息のつまるような生活の中、首飾りによる殺人が続き、それが義母の仕業だと確信するようになったサラは、逆に義母と夫に対して憎しみを覚え始めます。

 サラは、首飾りを見つけ破壊しようと町中を探しまわりますが、なかなか出会うことができません。保安官の協力を得るものの、惨劇は続き、やがて町の中心であるライフル工場に首飾りは姿を現します。クライマックスでは、工場を舞台に、大惨劇が繰り広げられるのです。

 ブラック・ユーモアあふれる人物描写と、要所で見せ場となるショッキングシーン。テーマはオーソドックスながら、読ませるホラー作品です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
アミュレットとミス・マックだけ?
一度読んだら忘れられない作品で、この作者の本がもっと出るのを願っています。ミス・マックにも怖い母親が・・・。ヒロインが最後の選択をした後、どうなったか知りたいですが、これ以上失うものは無いですものね。
【2017/07/03 00:40】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
『アムレット』の幕切れは、ブラックかつインパクトがありました。

邦訳は、これ2つだけみたいです。
『ミス・マック』もそうですが、すごく上手い作家だと思います。もっと作品を読んでみたいですね。
映像分野では、『フロム・ザ・ダークサイド』の脚本などに関わっているようなので、意識せずに観ているかもしれません。
【2017/07/03 21:07】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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