奇妙な分身  クリスティーン・キャスリン・ラッシュ、ケヴィン・J・アンダースン『残像を殺せ』
448880117X残像を殺せ (創元ノヴェルス)
クリスティーン・キャスリン ラッシュ ケヴィン・J. アンダースン Kristine Katheryn Rusch
東京創元社 1996-06

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 車の修理の手伝いを求められたところ、突然暴行され、放火されてしまった女性レベッカ。意識を取り戻し、助かったと思いきや、自分の体が男のものになっているのに気がつきます。しかもその姿は、自分が殺されかかった犯人そのものだったのです。
 レベッカを助けたのは、人間によく似た妖精の一族「ダークリング」たちでした。彼らには、体を再生させる能力があるのです。しかし何らかの要因で、再生の際に、体が変貌してしまったというのです。ダークリングが言うには、外見に囚われず、彼女の正体を見破ってくれる人間がいれば、レベッカは元に戻れるはずだと言うのですが…。

 クリスティーン・キャスリン・ラッシュ、ケヴィン・J・アンダースン『残像を殺せ』(藍堂怜訳 創元ノヴェルズ)は、殺された女性が蘇ったものの、犯人の姿形になってしまうという、面白い設定の作品です。呪いを解くために、元の彼女をよく知る人間のもとを訪れるヒロインですが、本人しか知り得ない情報を話したために、逆に怪しまれてしまいます。
 殺害現場を目撃していた少年たちの証言により、レベッカは犯人として追われてしまうことにもなります。唯一の理解者ともいうべき弟に接触しようとするレベッカですが、本物の犯人との遭遇で、それも失敗してしまうことに。

 もともと孤独だった彼女を助けてくれる人間はほとんどおらず、ダークリングたちに援助してもらうことになるのですが、ダークリングたちの中でも、反目や陰謀があり、一筋縄ではいかないのです。
 このダークリングという種族、周囲で人間が死ぬと、その影響で肉体に変貌が及んでしまうという、奇妙な特徴を持っています。例えば、人間に恋をしたダークリングが、肉体が変わってしまったため、本人であると認めてもらえなくなってしまったりします。肉体の変貌だけでなく、それにより魔力を高めることもできるのですが、それを目的に、やがてダークリング内での殺人も発生し、彼らの中でも犯人捜しが始まります。

 元に戻ろうとするヒロインのほか、殺人を続ける犯人、犯人を探す警察、陰謀を進めるダークリング、それを追う別のダークリングなど、視点が次々に入れ替わります。同時進行で複数のパートが進行し、それがサスペンスを高めており、リーダビリティは非常に高いです。

 「ダークリング」という妖精族が登場したり、蘇りの魔法があったりと、題材としてはファンタジーなのですが、精神を病んだ殺人犯や、孤独なヒロインの内面描写など、サイコ・スリラー的な要素も強く、ジャンルが混合したハイブリッド・エンターテインメントになっています。非常に面白い作品です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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