5月の気になる新刊と4月の新刊補遺
4月26日刊 オーガスト・ダーレス『ジョージおじさん 十七人の奇怪な人々』(アトリエサード 予価2592円)
5月1日刊 『楳図かずお『漂流教室』異次元への旅』(平凡社 予価1296円)
5月16日刊 イタロ・カルヴィーノ『まっぷたつの子爵』(岩波文庫 561円)
5月17日刊 河出書房新社編集部編『文藝別冊 澁澤龍彦入門』(河出書房新社 予価1512円)
5月19日刊 エイドリアン・トミネ『キリング・アンド・ダイング』(国書刊行会 予価3672円)
5月22日刊 G・K・チェスタトン『ブラウン神父の不信 新版』(創元推理文庫 予価799円)
5月22日刊 M・R・ケアリー『パンドラの少女 上下』(創元推理文庫 予価各972円)
5月24日刊 キャサリン・ダン『異形の愛』(河出書房新社 予価4104円)
5月24日刊 デイヴィッド・ホワイトハウス『図書館は逃走中』(早川書房 予価1944円)5月29日刊
エドワード・ケアリー『穢れの町 アイアマンガー三部作2』(東京創元社 予価3024円)
5月29日刊 柳下毅一郎監修『J・G・バラード短編全集3』(東京創元社 予価3888円)
5月29日刊 パトリック・ネス/シヴォーン・ダウド『怪物はささやく』(創元推理文庫 予価864円)
5月29日刊 アーサー・C・クラーク『地球幼年期の終わり 新版』(創元SF文庫 予価864円)
5月予定 ジュール・ヴェルヌ『蒸気で動く家 〈驚異の旅〉コレクション』(インスクリプト 予価5940円)


  《ナイトランド叢書》の新刊は、短篇の名手オーガスト・ダーレスの傑作集『ジョージおじさん 十七人の奇怪な人々』です。ダーレス作品は、アンソロジーにはよく収録されますが、単行本で邦訳があるのは『淋しい場所』(国書刊行会)のみだったので、ファンには嬉しい刊行ですね。

 イタロ・カルヴィーノの『まっぷたつの子爵』が岩波文庫入り。戦争の事故でまっぷたつになった子爵の左右半身が、それぞれ善と悪を体現するようになるという、寓話的作品の傑作です。
 これでカルヴィーノの《我らの祖先》三部作が、すべて復刊され、手に入りやすくなりました。他の2作も含め、《我らの祖先》シリーズは、カルヴィーノ作品の中では、物語性が強いエンターテインメントなので、オススメしておきたいと思います。

 M・R・ケアリー『パンドラの少女』は、映画化によるタイアップ文庫化でしょうか。ゾンビものの新機軸であり、破滅SF的な要素もある作品です。近年のホラー作品の中では出色の作品だと思います。

 キャサリン・ダン『異形の愛』は、かってペヨトル工房から出ていたものの復刊です。フリークスの一家のサーカスを舞台に、家族の愛憎を描く作品。題材は強烈ですが、中身はかなりまっとうな家族小説で、一読の価値がある作品だと思います。
 
 エドワード・ケアリーの《アイアマンガー三部作》の2作目『穢れの町』が登場です。1作目は非常にハラハラドキドキさせる良質のエンターテインメントでした。続編も楽しみです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

収益としては、決して幸先が良いわけではないでしょうに、
アトリエサードは着々と発行を勧めていて、嬉しい限りですね。
応援と感謝の意を込めて、絶対に中古では買えませんね。

そういえば、ヘレン・マクロイの「Man in the Moonlight」、
今年の刊行は確かなのですが、いつ頃なのか、
彼女の作品は非常に好きなので楽しみです。
記憶が正しければ、あとは「The long bady」の翻訳によって、
ウィリング博士ものは全て揃いますね。
【2017/04/23 23:27】 URL | ぽんぽこ狸 #- [ 編集]

>ぽんぽこ狸さん
とりあえず《ナイトランド叢書》に関しては、応援の意味も込めて、今まで全て新刊書店で購入しています。論創社ミステリみたいに百巻超えしてくれれば嬉しいですが、そこまでは流石に無理でしょうか…。

マクロイはコンスタントに訳されてきてますね。僕も買ってはいるものの、積読になっているものが多いので、そのうちまとめて読みたいと思ってます。
【2017/04/24 21:26】 URL | kazuou #- [ 編集]

クリフハンガー
「堆塵館」は、まだ読み終えて間もないのですが、読み始めしばらくはイギリスの階級社会を思わせる閉塞的な世界の描写が続き、これはどこまで面白くなるかなぁと半信半疑でしたが、主人公二人が出会う辺りから緊迫の度合いを増し、最終的にはクリフハンガーでブツッと切って終わりでしたね。面白かったのですが、この分で行くと次作でもクリフハンガーで待たされるんだろうなぁと。
(面白くなるまでに時間がかかるといえばゴーメンガースト3部作もそうだったなぁと… あと、クリフハンガーで放置されるのは、『氷と炎の歌』シリーズなんかもそうなので、まぁ慣れっこといえば慣れっこなのですが)

最近読み終えたといえば、「時間のないホテル」。エンタテインメントでよくあるような、初めの一撃で読者を引き込む、というようなこともなく、序盤は享楽的な?主人公の周辺が淡々と描かれてゆき、これは文芸系の話だったか…面白くなるのかなぁ…という感想だったのですが、やがて現実的な側面から主人公の日常が怪しくなって行き、中盤でいきなりホテルがその正体を現し、ホテルに見いられた下僕のような人物まで現れてからは、なんだかモダンホラーのような感じに。そういうものとして面白く読み終えましたが、一方で期待していたもの(もっと怪奇小説風な感じ?)とはかなり違うなぁというふうにも感じました。
バラードみたいというのはまぁそうかな、でも「シャイニング」に例えるのはさすがに違うだろうという印象でもありましたが。

あとジャクスンの「鳥の巣」は、面白く読み終えました。さすがに人の生死に直結している最後の2作品と比べるとちょっと牧歌的な印象もありますが、人物同士の駆け引きが読ませますね。出現する人格が、人生経験に乏しい未熟な、ある意味子供みたいな人格ばかりなのは頷けますし、人の暗部を見透かしていたジャクスンらしい設定ですが、悪戯小僧のような強い人格までもが母を求める子供としての姿をあらわにする辺りにはちょっと驚かされました。プライドを踏みにじられた医師がいったん手を引いてしまい、手を貸すように頼まれてもなかなか同意しない辺りもジャクスンらしく、エンタテインメント的な展開を気にしていないのか途中間延びしたりといった部分も含め、とても彼女らしい作品だったかなと。

まだ現物は手にしていませんが、先月の気になる新刊にあった『夜の夢見の川』、アンソロジーだけに現物に当たらないといかほどのものかも予測がつかない感じですが、やはりエイクマン作品が読めるのは楽しみ(作品内容も、紹介文を見た限りでは好きな作品の一つ『恍惚』に近そうな印象ですし)。
訳者の今本さんが、恐らくドーキー・アーカイヴのエイクマン自伝にかかりきりになるだろうから、作品の翻訳紹介はその後かなぁと思っていたので、予想外のプレゼントのような感じです。
【2017/04/27 06:15】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]

>Greenさん
『堆塵館』は、最初は世界観を丁寧に描写していく…という感じでしたね。基本的には実在イギリスのパラレルワールド的な世界観なのかなと思います。
 主人公の能力や「物」の秘密が明らかになってくるあたりから、かなり面白くなってきて、最後のあたりは確かに「クリフハンガー」的な面白さがありました。

『時間のないホテル』は、ちょうど僕も読み終えたところなのですが、バラード+キングという謳い文句はちょっと言い過ぎかなあとは思いました。どちらの成分もあるといえばあるのですが、どちらも要素が薄いというか…。
序盤の、主人公が会場から閉め出されて、二進も三進もいかなくなる…というあたりは、ちょっとカフカ風で興味をそそりますが、やはり本題に入るまでが長いですね。
やはり中盤、ホテルの秘密が明らかになって、ホラー風味を増していくあたりからが読みどころですね。ただ、敵となる存在が、融通無碍な能力の持ち主にしては、ちょっと小粒なのが物足りなかったり、主人公の父母に対する思いの描写などは必要だったのかな、というあたりが、気にはなりました。
建築関係の仕事をしていた人だけあって、ホテルや建造物の描写は生彩があり、なかなか魅力的ではありましたね。全体としては、面白く読みました。

ジャクスン『鳥の巣』は、ある種コメディ的な面もある作品ですよね。多重人格ものというと、たいていは人格同士の争いなどになりがちなのですが、この作品では、単純な対立関係にはならなかったりと、一筋縄ではいかないところは、さすがジャクスンというべきでしょうか。

『夜の夢見の川』は、さっそく手に入れました。前作のアンソロジーが傑作揃いだったので、こちらも楽しみです。
【2017/04/28 19:24】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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