侵略する雨  イサーク・エスバン監督『ダークレイン』
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アメイジングD.C. 2017-04-05

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 世界中が激しい豪雨に見舞われていたある夜、人里離れたバスの待合所内では、数人の人々がバスを待っていました。しかしバスは数時間も遅れており、一向にやってくる気配がありません。
 客がいらだちを募らせるなか、ウィルスに感染したらしい人間が現れます。やがて一人一人感染者が増えていきますが、なぜか待合所からは出られません。ガラスは防弾になっており、銃ですら開けることができないのです。
 ラジオからは、世界中で同じように、伝染病でパニックが起きているらしいことがわかりますが…。

 イサーク・エスバン監督『ダークレイン』は、1960年代のメキシコを舞台にした超常スリラー映画です。
 序盤から、世界中で何かが起きているらしいこと、バスが一向に現れないこと、待っている客たちがいらだちを募らせていることなどがわかりますが、それに加えて、登場人物たちがどれも不穏な状況を抱えているらしいことが、見ている者の不安に拍車をかけます。
 妻の出産にかけつけようとしている夫、暴力をふるう夫から逃げ出してきた臨月の妊婦、言葉が通じないシャーマンの老婆、反政府運動に従事しているらしい医学生、重い障害がある息子とその母親など。そんな人物たちが閉鎖的な環境に閉じ込められたことから、互いに不信感を抱き、争いが起き始めます。
 ウィルス感染らしき患者が現れたことから、それが政府の陰謀だと思い込んだり、悪魔の呪いだと言い出したりする人間がいるなか、とうとう暴力が発生してしまいます。

 作品のメインとなる「病」が単なる病気というよりは、超自然的な様相を持つものなので、「病」の原因は合理的なものではないことが予想はできるのですが、加えて、一向にやまない雨や、なぜか出ることのできない待合所などの要素も、超自然的な印象を高めます。
 出来事の原因や全体像が一向につかめない中盤までの展開は、とてもサスペンスフルです。中盤あたりから事態の原因がなんとなくわかってくるのですが、そこからはまた別の異様な要素が投入され、違った味わいの作品になっていきます。

 舞台は、ほぼ待合室の中だけに限定されています。おそらく低予算ゆえなのでしょうが、待合室の外、そして世界がどうなっているかが全くわからず、ラジオから断片的な情報だけが流れてくるという演出が、観ている者の想像力を高めます。
 また、「病」が蔓延した結果、世界中が変化してしまうのですが、その「病」の内容が人間の本質を問うものであったり、1960年代という時代が登場人物の設定に深みを与えるなど、いろいろと細かい部分で工夫がされています。

 監督のイサーク・エスバンは、ループものの新機軸というべき『パラドクス』を撮った人ですが、本作も、単純なSFやホラーには当てはまらない怪作です。前作もそうですが、SFやホラーに、ちょっと哲学的なスパイスを利かせた感じの作風が特徴です。
 この監督、非常に癖があるので、一般受けは難しいかもしれませんが、非常に独創的な作品を作る人なので、次回作が楽しみですね。

テーマ:洋画 - ジャンル:映画

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