3月の気になる新刊と2月の新刊補遺
2月28日刊 『ナイトランド・クォータリー vol.8 ノスタルジア』(アトリエサード 予価1836円)
3月2日刊 真魚八重子『バッドエンドの誘惑 なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか』(洋泉社 予価1512円)
3月8日刊 パーシヴァル・ワイルド『悪党どものお楽しみ』(ちくま文庫 予価972円)
3月9日刊 C・S・ルイス『ナルニア国物語3 馬と少年』(光文社古典新訳文庫)
3月11日刊 ダリル・グレゴリイ『迷宮の天使 上・下』(創元SF文庫 予価各972円)
3月中旬刊 ロマン・ギャリ『ペルーの鳥 死出の旅へ』(水声社 予価3024円)
3月16日刊 イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』(白水Uブックス 予価1620円)
3月17日刊 高原英理『怪談生活 江戸から現代まで、日常に潜む暗い影』(立東舎 予価1944円)
3月17日刊 オーリン・グレイ/シルビア・モレノ編『ファンギ 菌類文学アンソロジー』(Pヴァイン 予価1728円)
3月21日刊 ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』(創元海外SF叢書 予価2592円)
3月21日刊 G・K・チェスタトン『ブラウン神父の知恵 新版』(創元推理文庫 予価799円)
3月21日刊 キャンデス・フレミング『ぼくが死んだ日』(創元推理文庫 予価972円)
3月22日刊 小泉喜美子『痛みかたみ妬み 小泉喜美子傑作短篇集』(中公文庫 予価799円)
3月27日刊 『楳図かずお『漂流教室』異次元への旅』(平凡社 予価1296円)


 これはもう、タイトル勝ちですね。真魚八重子『バッドエンドの誘惑 なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか』は、「なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか」を追った評論。

 『ペルーの鳥 死出の旅へ』は短篇集。ロマン・ギャリは、フランスのゴンクール賞作家、いわゆる「文豪」なのですが、邦訳されている短篇は、ちょっと変わった作品が多く、面白く読んだ覚えがあります。『孤島奇譚』『ヒューマニスト』など。ホラーアンソロジーに収録された短篇『終わらない悪夢』は、純粋なホラー作品ではないですが、迫力のある作品でした。
 他の短篇がどんな作風なのか、気になる作家ではありますね。

 イタロ・カルヴィーノ『不在の騎士』は、〈我々の祖先〉三部作のひとつ(他は『まっぷたつの子爵』(晶文社)と『木のぼり男爵』 (白水Uブックス))。この三部作は、カルヴィーノ作品の中でもエンターテインメント度が非常に高い作品なので、オススメです。

 オーリン・グレイ/シルビア・モレノ編『ファンギ 菌類文学アンソロジー』は、キノコや菌類をめぐる作品を集めたアンソロジーとのこと。収録作品の一部が公開されていましたので、載せておきます。

ぞっとするような正当派のホラー
「菌糸」ジョン・ランガン

奇妙なキノコ辞典からの抜粋のような掌編
「白い手」レイヴィー・ティドハー

ある目的のためにキノコの潜水艦に乗った男の悲しい物語
「かわいいトリュフの女の子」カミーユ・イレクサ

スチームパンクと魔法とラヴクラフトをミックスしたウエスタン風物語
「セージの最後の花」アンドルー・ベン・ロミニ

共通の幻覚体験をもたらす特殊なキノコの話
「巡礼する処女たち」クリストファー・ライス

バロック風の奇怪な物語
「ミッドナイト・マッシュランプス」W・H・パグマイア

探偵ものボディホラー小説
「死体の口、胞子の鼻」ジェフ・ヴァンダーミーア

保守的な植民村に暮らす人々の欲望の物語
「山羊の花嫁」リチャード・ギャビン

苦悩と喪失をめぐる美しい物語
「死者が夢見る場所」A・C・ワイズ 

ほか

 ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』は、発刊告知からずっと楽しみにしてきた作品です。紹介文が期待を煽りますね。「謎の支配人、壁に掛けられた抽象画、そして運命の女。偽名でホテルを渡り歩く男が遭遇する異様な一夜に始まる恐怖。J・G・バラード『ハイ・ライズ』+スティーヴン・キング『シャイニング』ともいうべき巨大建築幻想譚!

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

ミステリとしては文庫化・新版が増えてきたなと思います。
必死に探し回った自分が遠く感じられます。
【2017/02/25 00:49】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
そうですね。結構マニアックな作品も文庫になったりして、びっくりすることがあります。

クイーンとかカーとか、ミステリとしては基本図書みたいな作家の作品も、本国では手に入りにくくなっている、みたいな話を聞いたことがありますが、その点日本では、わりとクラシックに対して良心的ですよね(とはいっても、こぼれおちる作家・作品もたくさんあるわけですが)。

新訳はともかく、活字を大きくしただけの新版は、購入するかどうか、いつも迷います。とりあえず、『ブラウン神父』シリーズは、拾い読みしかしていなかったので、新版で揃えようと思っています。
【2017/02/25 07:36】 URL | kazuou #- [ 編集]

菌類文学⁈
すぐ思いつくのはブラッドベリの「ぼくの地下室へおいで」に、漫画ですけど松本零士は「男おいどん」のサルマタケ🍄
ホラーにもいろいろありそうですね。
とりあえずは立ち読みでラインナップをチェックしたくなります。
【2017/02/25 12:49】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

>迷跡さん
『ファンギ 菌類文学アンソロジー』、収録作品の一部が公開されていたので、記事に追加紹介しておきました。SF・ホラー中心の作品集みたいですね。とりあえず購入予定です。

キノコといえば、確かに「ぼくの地下室へおいで」が真っ先に思い浮かびますね。あとは、定番ですがホジスン作品とか。西岸良平の短篇マンガに、地下鉄のトイレに閉じ込められた青年が、トイレの水でキノコを栽培して生き延びる…というのがありましたが。
【2017/02/25 13:05】 URL | kazuou #- [ 編集]

まだ見ぬ作家たち
先日、東京の大書店に寄った際にナイトランド・クウォータリーがバックナンバー含め書棚に並んでいるのを見る機会があり、中を見ると装幀も落ち着いていて、なるほど、薄めの短編集といった感じ。ジフコヴィッチの最初の短編集もあんな感じでしたね(あそこまで薄くない…?)。興味のありそうなテーマの作品だけでも買ってみようかとも思ったのですが、やっぱりちょっと高いかなぁ・・・ ハードカバー本1冊、文庫本2冊買える値段ですからね…
今回、ノスタルジアをテーマとして扱ってきたか、というところですが、連想する名前といえばブラッドベリ、ヤングとかリーミイ、ネイサンなんかですが、ブラッドベリはさておき、他は半知り、もしくは未知の作家名が多めな印象で、その点で興味を引かれました。テーマに対してどんな作品を揃えているのかなというのはありますが(単純に前述した作家の作品の "現代版" になるんでしょうか… それとも… )、今回、買ってみようかなぁ…

今回も、水声社、立東舎、洋泉社など、その刊行予定をどこで見られるのかすら知らないような出版社名が多めでその情報収集力に驚きますが、やはり目につくのが『ファンギ 菌類文学アンソロジー』(Pヴァイン…?)ですね。
そんなもの刊行する出版社が、マイナー方面に存在するんだ、という… ぱっと連想するのはホジスンの「夜の声」なんかですが、タイトルが学名っぽかったりしてちょっと違った方向を狙っていそうな・・・・でも内容紹介を見ると結構ホラー方面な感じもしますね。
知らない作家名も多く、興味を引かれますが(一般書店で手に入るんだろうか…)そういえばジフコヴィチの作品集が黒田藩プレスから出たときも、それまでの出版傾向と関係ない感じで突発的に出て、それきりな感じでしたから、この辺は個々の編集者の興味・情熱と出版の現状とのバランスで、超新星爆発みたいに低頻度だけれども "宇宙のどこかで" 一定の割合で確実に起こってくること、なんでしょうかね・・・・

『時間のないホテル』はこちらも煽られて楽しみにしています(笑)。
モダンホラー系統の長編作品が、どうもどれも同じ印象の話になってしまっている気がする昨今ですが(実は昔から…?)、ちょっと毛色が変わっていそう、単純に内容予測が出来ない感じなのがいいですよね。単純に文芸調の話よりはいろいろな仕掛けを用意してくれていそうですし。

ロマン・ギャリ 以前はロマン・ガリという訳し方で名前を何回か目にした覚えがありますが、何で目にしたのかはさっぱり思い出せないですね… でも、モラヴィアのことを考えると、文豪の異色作は意外と目が離せないのかも、と思いだしていて、これも買いなのかな、とも。
小泉喜美子さんは翻訳者としても名が知れていて、チャンドラーやウールリッチの魅力の紹介者としても有名ですし、作家としても「弁護側の証人」が有名な方ですが(ダイナマイト・ワルツは未見なので興味あり。特に再刊された様子はないですが…)、亡くなられてから結構経ちますよね。昨今再刊を多く目にする気がしますが、何か契機でもあったのでしょうか…
【2017/02/25 15:26】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]


自分はきのこと言えば、岸本佐知子さんの「気になる部分」くらいしか・・・笑。
西岸さんは、「鎌倉ものがたり」でもちょくちょくキノコを出してますね(主に食事として)

いつの間にか文庫化していて、こんな作品が!と驚いたのは、
「どんがらがん」と「無伴奏ソナタ」です。(後者は新訳ですけど、また出るとは思いませんでした)
【2017/02/25 16:04】 URL | ぽんぽこ狸 #- [ 編集]

>Greenさん
『ナイトランド・クォータリー』、確かに高めで薄いですが、いまや怪奇幻想系作品を載せる雑誌としては、ほぼ唯一の媒体なので、応援の意味で購入してます。
最初の頃は、クトゥルー要素がかなり強かったのですが、最近はいろいろテーマも工夫してきている感じで、先行きは楽しみですね。たまに、初紹介作家の紹介などもありますし。

『ファンギ 菌類文学アンソロジー』の版元のPヴァインは、音楽関係の会社の出版部門みたいですね。内容は書き下ろしのような感じですが、紹介文を読む限り、なかなか面白そうです。

『時間のないホテル』は、煽り文句がすごいので、期待して待ってます。

ロマン・ギャリは、あんまり邦訳はないみたいですが、本国では才人として知られた人ですね。僕も短篇は、アンソロジーとか雑誌で数篇しか読んだことはないですが、ちょっと期待しています。

小泉喜美子復刊ブームは、なんかきっかけがあるんでしょうかね。僕的には、エッセイなどで、翻訳ものの啓蒙者的な活動が記憶に残っています。
作品としては、やはり『弁護側の証人』とか『血の季節』でしょうか。『ダイナマイト円舞曲』は、いわゆるロマンチック・サスペンスで、少女小説的な要素が強かった覚えがありますね。
【2017/02/25 17:37】 URL | kazuou #- [ 編集]

>ぽんぽこ狸さん
『鎌倉ものがたり』でも、出してるんですか(そちらは未見です)。サバイバル作品などで、よくキノコを栽培して生き延びる…という展開をたまに見ますが、そんなに簡単に栽培できるんだろうか…という気はしますね。

河出文庫は、たまにさらっとマイナー作品の文庫化をしてきたりしますから侮れません。『無伴奏ソナタ』はいい作品集だと思うので、復活してよかったです。
【2017/02/25 17:41】 URL | kazuou #- [ 編集]


西岸さん、初期〜の短編集や『夕焼けの詩』こそ奇妙な味わいがあり、ノスタルジィと絡み合って楽しめましたが、中期辺りからパターン化が激しくなり、ノスタルジィは昭和の風景に代表されるのみ、平凡な作品になってしまったようです。特に荒唐無稽さでは『鎌倉ものがたり』が群を抜いており…

元々は、自分が大好きな細野晴臣の友人と知り読み始めましたが、最近は買ってませんね。『夕焼けの詩』も、最初の5巻位までは短編集にひけを取らない気がするのですが
【2017/02/26 00:12】 URL | ぽんぽこ狸 #- [ 編集]


漫画『ダメおやじ』でも、確か椎茸か何かを、酒のつまみとして一番初めから挑戦していましたが、結構時間を要していたような…
【2017/02/26 00:16】 URL | ぽんぽこ狸 #- [ 編集]

>ぽんぽこ狸さん
僕の場合、西岸良平は初期の短篇集しか読んでいなくて、『夕焼けの詩』とか『鎌倉ものがたり』はほとんど読んでないんですよね。「荒唐無稽さ」というのは何となくわかります。確か家の二階から電車の車両に飛び移るエピソードがありましたよね。
初期作品のSFやファンタジー的な作品は、センス・オブ・ワンダーと情緒が入り混じった感じで、すごく好きでした。

フィクションにおける、サバイバル時のキノコ食は、ある意味「記号表現」的な要素が強いような気がします。
【2017/02/26 08:20】 URL | kazuou #- [ 編集]


昨日はどうもありがとうございました。

『ファンギ 菌類文学アンソロジー』は、自分のストライクゾーンにハマっていそうな雰囲気なので楽しみにしています。文庫化されるかどうかはわからないので、応援の意も込めて単行本で購読するつもりです。

しかし茸ホラー……「マタンゴ」くらいしかパッと思い浮かびません。日本の民話ならいくつか思い出せますがw
カビとか胞子とかも含めば読んでたのかなぁ。

あとは、高原英理さんの『怪談生活』もちょっと惹かれています。
以前読んだ短編集『抒情的恐怖群』がかなり面白かったので。
【2017/02/27 18:51】 URL | るね #ADJD0lrw [ 編集]

>るねさん
こちらこそ、ありがとうございます。

『ファンギ 菌類文学アンソロジー』は、作品紹介を見る限り、『マタンゴ』とか、あのへんの作品に近い雰囲気のアンソロジーのようで、期待が高まります。
菌類テーマの作品は確かに難しいですね。SFで、菌類によって人類が進化する話とかはありそうですけど。

『抒情的恐怖群』は僕も大好きでした。この方の作品って、血が結構出ますけど、様式美があって綺麗なんですよね。今回の本はエッセイ的なもののようですが、購入するつもりです。
【2017/02/27 21:07】 URL | kazuou #- [ 編集]


菌類ではありませんが、そういえばカール・ジャコビに「苔の島」という短編がありましたね。
アーカムハウスの短篇集でしたが、カール・ジャコビって物凄い怖い!というのは少ないのですが、一定の質を保っていて裏切らず、物語のオチがわかっても読ませる作家ですよね。
良質と思って出版社を見れば、やはり国書刊行会なんですよねえ。

ところでドーキー・アーカイヴ、ちょっと遅い気がしますが次巻はいつ出るのかしら。
【2017/03/03 21:47】 URL | ぽんぽこ狸 #- [ 編集]

ジャコビ
ジャコビ、いいですよね。《アーカム・ハウス叢書》の中ではいちばん好きな作家かもしれません。怪奇ムードの醸成が上手いんですよね。『落書き』なんか、面白いアイディアの作品でした。

《ドーキー・アーカイヴ》は、気長に待っています。積読本を消化していると、刊行予定が延びてもそんなに気にならないという…。
【2017/03/03 22:23】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
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