幽霊の掟  岩城裕明『煉獄ふたり』
4062195445煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる (講談社BOX)
岩城 裕明 スオウ
講談社 2015-05-13

by G-Tools

 幽霊を主人公にしたファンタジーはままありますが、この作品ほど、物理世界に囚われた幽霊も少ないのではないでしょうか。岩城裕明『煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる』 (講談社BOX)は、幽霊の探偵コンビの活躍を描く連作短篇集ですが、幽霊や、彼らが属する世界が細かく設定されており、その設定が物語の重要な伏線にもなっているという、丁寧な作りの作品です。

 この世に未練を抱いて死んだ人間は、煉獄に幽霊となって残ります。幽霊たちは、それぞれ死ぬ直前に肉体から持ち込んだ「現世の欠片」と呼ばれる品物を持っています。それは指であったり、目玉であったりといろいろ。それらを使うことによって、一時的に現実世界に干渉できるのです。また「欠片」を集めれば幽霊は生き返ることができるという噂もありました。
 噂を信じる幽霊キリンは、コンビニに探偵事務所を開きます。霊を見ることのできる生者の友人イツキの協力も得ながら、連れの少年アオバを生き返らせるため、幽霊たちの問題を解決し、その代わりに「欠片」を集めようとするのですが…。

 各話の最初に、客観的な視点からの霊的事件が描写され、本篇ではそれが幽霊たちのどんな行動によるものかが解き明かされる…という体裁になっています。
 幽霊たちの人間くさい側面が描写される、ユーモアファンタジー的な味わいが強いのですが、煉獄や幽霊のルールが細かく設定されており、それが上手くストーリーを盛り上げていくのが面白いところ。
 例えば、煉獄は、幽霊にとっての世界であり、見た目は現実世界と変わりません。幽霊たちは、物理的なものを動かすことはできず、物質をすり抜けることもできません。部屋に閉じ込められれば、誰かが開けてくれるのを待っているしかないのです。
 現実世界に干渉できず、普通の人間には見えない幽霊たちが唯一、現実に影響を与えられるのは「欠片」と呼ばれるアイテム。それは幽霊たちによって様々なのですが、指であれば、それを使い人に触れることができ、目玉であれば、それを生きた人間にはめこむことにより、幽霊たちの姿を見せることができるのです。
 恨みを残して死んだ女の霊を演じる幽霊の劇団の話、いじめられている少女の「守護霊」になり、少女を助けようとする男の物語、トンネルと一体化し、他の霊を取り込む女の霊の話など、ひねったストーリーが多く楽しめます。
 話が進むにつれ、探偵キリンがなぜアオバを生き返らせようとするのか、霊を見ることのできるキリンの友人イツキが、なぜアオバだけ見ることができないのか、などの疑問も解消されていきます。伏線が綺麗に回収されていくので、読んでいて爽快感がありますね。
 どこかとぼけた味わいの中に、ハートウォーミングな展開もありと、読後感も非常によい作品です。

 同じ作者の『牛家』(角川ホラー文庫)や 『三丁目の地獄工場』(角川ホラー文庫)が非常に面白かったので、この作品にも手を出してみたのですが、期待にたがわぬ面白さで、ちょっと追いかけてみたい作家の一人になりました。
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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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