2016年を振り返って
 もうすぐ2016年が終わります。今年は、とても変化のある年になりました。
 ブログ開設10周年を迎えたこと、twitterを始めたことなど、いろいろありますが、何といっても、いちばんの変化は、テーマ別のフリートーク読書会「怪奇幻想読書倶楽部」を始めたことですね。11月に第1回、12月に第2回を行いました。
 僕自身、人前で話したり、積極的に企画を考えたりするタイプではない…と自認していたので、何とか開催を終えて、自分で自分にびっくりしているぐらいです。
 フリートークという点で不安を感じつつも、またそれゆえに話が盛り上がることもありました。フリートークで一番いい点は、自分が話したい話題をすぐ出せる、というところですね。他の人があまり興味がなくて続かない場合もありますが、またすぐに別の話題が出てきます。
 参加者同士の相性、テーマとの相性などもあり、毎回どういう方面に話が流れるか、事前には全然わかりませんが、それがまた面白いところでもあります。

 まだ2回ほど開催したのに過ぎませんが、自分でも課題というか、問題点などがいくつか思い浮かんでいて、そのあたりを、これから改善していけたらな、と思っています。


 それでは、2016年度刊行で面白く読んだものをまとめておきたいと思います。


日時計 鳥の巣 (DALKEY ARCHIVE) 処刑人 (創元推理文庫) くじ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
 まずは、シャーリイ・ジャクスン。今年は、生誕100周年ということもあり、ジャクスンの邦訳が、改訳・新訳含めて多く刊行されました。
 ブラック・ユーモアに満ちた終末もの『日時計』(渡辺庸子訳 文遊社)、多重人格をめぐるサスペンス『鳥の巣』(北川依子訳 国書刊行会)、青春幻想小説『処刑人』(市田泉訳 創元推理文庫)、いわずと知れた名短篇集の改訳『くじ』(深町眞理子訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)など。
 一気に邦訳が進んだ感じですが、未訳の作品も刊行してもらえると嬉しいですね。


虚構の男 (ドーキー・アーカイヴ) 人形つくり (ドーキー・アーカイヴ)
 刊行が開始された《ドーキー・アーカイヴ》(国書刊行会)は、風変わりなエンターテインメント作品を収録するシリーズです。どんでん返しの頻発するサスペンス、L・P・デイヴィス『虚構の男』(矢口誠訳 国書刊行会)、官能的な幻想小説集である、サーバン『人形つくり』(館野浩美訳 国書刊行会)は、どちらも魅力的な作品でした。


〈グレン・キャリグ号〉のボート (ナイトランド叢書) 塔の中の部屋 (ナイトランド叢書) ウェンディゴ (ナイトランド叢書)
 《ナイトランド叢書》(アトリエサード)からは、ウィリアム・ホープ・ホジスン『〈グレン・キャリグ号〉のボート』(野村芳夫訳)、E・F・ベンスン『塔の中の部屋』(中野善夫・圷香織・山田蘭・金子浩訳)、アルジャーノン・ブラックウッド『ウェンディゴ』(夏来健次訳)が刊行されました。
 ホジスン作品は、かなりアクション要素の強い怪奇冒険小説、ベンスン、ブラックッドの作品集は安定した作りで、クラシック・ホラー好きには格好の贈り物となりました。


狂気の巡礼 奥の部屋: ロバート・エイクマン短篇集 (ちくま文庫) 南十字星共和国 (白水Uブックス) むずかしい年ごろ ロルドの恐怖劇場 (ちくま文庫) 10の奇妙な話
 怪奇幻想分野の作品集としては、ステファン・グラビンスキ『狂気の巡礼』(芝田文乃訳 国書刊行会)、ロバート・エイクマン『奥の部屋』(今本渉訳 ちくま文庫)、ワレリイ・ブリューソフ『南十字星共和国』(草鹿外吉訳 白水Uブックス)、アンナ・スタロビネツ『むずかしい年ごろ』(沼野恭子、北川和美訳)、アンドレ・ド・ロルド『ロルドの恐怖劇場』(平岡敦編訳 ちくま文庫)、ミック・ジャクソン『10の奇妙な話』(田内志文訳 東京創元社)などが良かったですね。


ロシア幻想短編集 名前のない街: ロシア幻想短編集Ⅱ 灰色の自動車: A・グリーン短編集 鼠捕り業者 他2篇: アレクサンドル・グリーン短編集Ⅱ (アルトアーツ) ロシアSF短編集
 アルトアーツから刊行された、ロシアの幻想小説ものも未訳のものばかりで、貴重な収穫でした。西周成編訳『ロシア幻想短編集』と続編の『名前のない街 ロシア幻想短編集Ⅱ』、アレクサンドル・グリーン短編集『灰色の自動車』『鼠捕り業者』『ロシアSF短編集』も珍しいラインナップでした。

 ほかに短篇集で面白かったものとしては、

あまたの星、宝冠のごとく (ハヤカワ文庫SF) ルーフォック・オルメスの冒険 (創元推理文庫) ゴッド・ガン (ハヤカワ文庫SF) 死の鳥 (ハヤカワ文庫SF) 伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ (ハヤカワ文庫SF) 楽しい夜 30の神品 ショートショート傑作選 (扶桑社文庫)
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『あまたの星、宝冠のごとく』(伊藤典夫、小野田和子訳 ハヤカワ文庫SF)
カミ『ルーフォック・オルメスの冒険』(高野優訳 創元推理文庫)
バリントン・J・ベイリー『ゴッド・ガン』(大森望、中村融訳 ハヤカワ文庫SF)
ハーラン・エリスン『死の鳥』(伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫SF)
『伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ』(伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫SF)
岸本佐知子編訳 『楽しい夜』 (講談社)
江坂遊選『30の神品 ショートショート傑作選』(扶桑社文庫)


 長編作品では、

ラスト・ウェイ・アウト (ハヤカワ・ミステリ文庫) ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫) ジグソーマン (扶桑社ミステリー) カエアンの聖衣〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF) 奇妙という名の五人兄妹
フェデリコ・アシャット『ラスト・ウェイ・アウト』(村岡直子訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)
クレア・ノース『ハリー・オーガスト、15回目の人生』(雨海弘美訳 角川文庫)
ゴード・ロロ『ジグソーマン』(高里ひろ訳 扶桑社ミステリー)
バリントン・J・ベイリー『カエアンの聖衣 新訳版』(大森望訳 ハヤカワ文庫SF)
アンドリュー・カウフマン『奇妙という名の五人兄妹』(田内志文訳 東京創元社)

 日本作家の作品では、

三丁目の地獄工場 (角川ホラー文庫) ずうのめ人形 怪談のテープ起こし QJKJQ やみ窓
岩城裕明『三丁目の地獄工場』(角川ホラー文庫)
澤村伊智『ずうのめ人形』(角川書店)
三津田信三『怪談のテープ起こし』(集英社)
佐藤究『QJKJQ』(講談社)
篠たまき『やみ窓』(KADOKAWA)

 コミック作品では、

カナリアたちの舟 (アフタヌーンKC) 異世界の色彩 ラヴクラフト傑作集<ラヴクラフト傑作集> (ビームコミックス) 闇に這う者 ラヴクラフト傑作集<ラヴクラフト傑作集> (ビームコミックス) ぐらんば (バーズコミックス) 盆の国 (torch comics) 宇宙のプロフィル (ヤンマガKCスペシャル)
高松美咲『カナリアたちの舟』(講談社アフタヌーンKC)
田辺剛『異世界の色彩 ラヴクラフト傑作集』(エンターブレイン)
田辺剛『闇に這う者 ラヴクラフト傑作集』(エンターブレイン)
押切蓮介『ぐらんば』(バーズコミックス)
スケラッコ『盆の国』(リイド社torch comics)
こがたくう『宇宙のプロフィル』(ヤンマガKCスペシャル)

などを面白く読みました。


 それでは、2017年もよろしくお願いいたします。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
書物に対する思いの丈
十年ブログを継続するだけでも真似できないことですが、読書会まで開催して下さって。毎月の新刊紹介やテーマ別の記事もレベルを保ったままで感動します。こちらは、楽しませて貰うばかりで申し訳ないです。今年は大好きな作家様の待ちわびた作品集が何冊も出て、夢ではなかろうかと頬をつねる始末。キューゲルと共に歳を越せるなんて。
【2016/12/30 18:58】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

>奈良の亀母さん
いつも応援ありがとうございます。ブログも読書会も、自分が好きでやっているので苦にはなっていないです。

本や出版業界の縮小が言われてから久しいですが、それに反するように、海外の翻訳小説に関しては、よりマイナーなタイトルが刊行されるようになってきた気がします。初版を逃したらあっという間に書店から消えてしまう…というのは如何ともしがたい状況ですが、我々にできるのは、新刊を購入して応援することぐらいですね。
【2016/12/30 20:34】 URL | kazuou #- [ 編集]

今年は大変お世話になりました
kazuouさま、今年は楽しい読書会を開いていただきありがとうございました。
また本の話ができる機会を楽しみにしております。よいお年をお迎えください!
【2016/12/30 23:30】 URL | さあのうず #- [ 編集]

>さあのうずさん
こちらこそ、楽しい時間を過ごすことができました。
来年もお付き合い願えましたら、嬉しいです。それでは、よいお年を。
【2016/12/31 08:50】 URL | kazuou #- [ 編集]


今年はいろいろお世話になりました。
来年もよろしく御願いいたします。
【2016/12/31 16:08】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
こちらこそ、お世話になりました。
来年も変わらず、よろしくお願いいたします。
【2016/12/31 19:14】 URL | kazuou #- [ 編集]


別の記事でご言及されていますが、出版界の低迷をよそに、SF、ホラー、ミステリ、奇妙系の愛読者にとってはうれしい悲鳴の出版事情になっていますね。
こちらのブログもそれと連動してますます深く広い書きぶり、楽しく読ませていただきました。
明年もよろしくお願いいたします。
【2016/12/31 22:52】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

>迷跡さん
こちらこそ、来年もよろしくお願いいたします。

刊行予定を見ていて、まさかこの作家のこの作品が出るとは、と驚くようなことが毎月あるというのは、ある意味、読者としては幸せな環境ではありますね。
【2016/12/31 23:37】 URL | kazuou #- [ 編集]


明けましておめでとうございます。
昨年は読書会でいろいろとお世話になりました。
今年もまた機会がありましたら、面白い本のお話をできればと思います。
それでは本年もよろしくお願いいたします。
【2017/01/01 00:32】 URL | sugata #8Y4d93Uo [ 編集]

明けましておめでとうございます。
昨年は読書会で直接お世話にもなりましたが、ブログの方も今年は特に更新が多く、内容的にも多彩だった気がします。読書会、twitter等はkazuouさん自らが生み出した変化だということを考えると、かなり心身ともに充実していらしたのでしょうか。
何れにしても、昨年はいろいろとお世話になり(コメント中の疑問や問いかけへの返信、いつもありがとうございます)、また記事は愉しく拝見させて頂きました。コメントさせて頂いた記事も(いつもながら長文申し訳ないです)、できなかったりしなかったりする記事もありますが、いずれも興味深く、楽しみに拝見させて頂いています。
本年も楽しみにさせて頂きます。

リストを拝見して、あぁ、ドーキー・アーカイヴもの以外は皆記事になっているな… などと思いつつ過去記事をさらっていたら・・・ドーキー・アーカイヴ初回分の感想もアップされていたんですね。これは見落としていました。何故かと振り返ってみると、この頃帰宅もままならない状態だったため、PCもほとんど起動も出来ず、記事も拝見できていなかったなぁと。。。
そんなこんなで(あと、「ある夢想者の肖像」「黄金時代」読了に時間がかかったのも効きました・・・)読書量も激減しており、リストアップされた本のほとんどが積読状態(ファンであるはずのジャクソン作品すらです)。通勤途中で本を読みだしても途中で眠くなってしまうことしばしばというありさま。こういう状態が続くと、読書そのものへのモチベーション自体が下がってくるのですが、こちらで魅力的な本をご紹介頂いていることもあって、新たな本への期待感自体は維持できています。
感謝。

見落としていたドーキー・アーカイヴ紹介の記事を拝見して、なんだ、「人形つくり」、面白そうじゃないかと。
若干の余裕が出来て来た頃になって、東京の大書店に寄ったのですが、その際、『虚構の男』は買った(海外小説の棚の下に平積みでした)のですが、『人形つくり』(こちらは棚に1冊だけでした)の方は、パンフレットによるとSMものという感じみたいだし『虚構の男』が面白かったら買えばいいか・・・という感じで買わなかったのでした。
でも、内容のご紹介を読むと、むしろ怪奇・幻想小説系のテイストの作品で、どこか耽美性が魅力な作品ではないかと。SMといっても "もろに" というものではなくて、関係性を考察すると(支配・被支配関係がそこから導き出され)そうだと言える、というレベルのものなんですね、多分。
今度目にしたら、買おうと考えています。

リストにないものの中で気になるものは「堆塵館」でしょうか。といってもこちらも積読なので自分で内容は確認できていませんが。
書店で探した際、海外文学の棚で見当たらないな・・・と思っていたら、何と子供向けの本の棚にあって、そうなのかと驚きましたが…

他にもありますが、取りあえずまた別の機会に。
本年もよろしくお願い致します。
【2017/01/01 07:23】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]

>sugataさん
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
今年もいろいろお話できれば嬉しいです。
【2017/01/01 09:42】 URL | kazuou #- [ 編集]

>Greenさん
あけましておめでとうございます。
今年も、ブログ・読書会ともに、いろいろお話できれば嬉しいです。

お仕事の関係で、なかなか読書時間を取れないこともありますよね。僕も深夜まで…というのは滅多にありませんが、そういう時でも帰宅してから短篇集の一篇だけ読む、なんてことはよくあります。
時間的に読めないときでも、買ってある本が目の前にあると、読書のモチベーションは下がりにくいと思うので(そういう意味で、積読は有効なのでは?)、僕はどんどん本は積むタイプです。

《ドーキー・アーカイヴ》は、ジャクスン作品含めて、今まで出た3作はどれも面白く読みました。『人形つくり』は、SM的な要素をやたら強調していますけど、普通に怪奇幻想小説として楽しめる作品だと思います。よく、吸血鬼ものなどで「支配・被支配」みたいな要素を云々されることがありますが、そういうレベルでしょうか。

『堆塵館』は、ちょうど年末に読み終わったところです。本国ではヤングアダルト向けに出されたということで、児童文学扱いになってるんじゃないでしょうか。漢字に沢山ルビが入っていたりしますし。
 巨大な屋敷が舞台で、エキセントリックな登場人物や設定が多く出てくるのも楽しいです。物語はほとんど屋敷内で起こるにもかかわらず、ストーリーは波乱万丈という作品でした。3部作ということですが、結末の「引き」もなかなかで、続編が楽しみです。
【2017/01/01 10:01】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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