最近読んだ本

4883752372ナイトランド・クォータリーvol.06 奇妙な味の物語
ケン・リュウ ニール・ゲイマン ジョン・コリア 朝松 健
書苑新社 2016-08-26

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『ナイトランド・クォータリーvol.06 奇妙な味の物語』(アトリエサード)
 『ナイトランド』の最新号の特集は《奇妙な味》。ジョン・コリア、サキ、ロバート・ブロック、チャールズ・ボーモント、ネイサン・バリングルード、ニール・ゲイマン、ケン・リュウらの短篇が掲載されています。
 ロバート・ブロック『ひらめきの帽子』は、芸術への創造力を高める「帽子」を手に入れた男の物語、チャールズ・ボーモント『愛車の助言』は、ある日人格を持ち始めた車に翻弄される主人公を描いています。どちらも安定した面白さです。
 いちばんインパクトがあったのが、ネイサン・バリングルード『往く先は風に』。車を盗んだという男と知り合ったシングルマザーの女の情事を描いた作品かと思いきや、予想もしない方向に展開する、まさに《奇妙な味》としかいいようのない作品です。シオドア・スタージョンのある種の作品を髣髴とさせる味わいで、この作家の作品はもっと読んでみたいですね。
 エッセイでは、フィルポッツの異色作品にスポットを当てた、安田均さんの「フィルポッツの奇妙な味」が興味深いです。
 全体に、『ミステリマガジン』の《幻想と怪奇》を思わせるカラーで非常に良かったと思います。本家の『ミステリマガジン』の《幻想と怪奇》特集は、近年すごく薄味になっているので、『ナイトランド』には頑張っていただきたいですね。



4150120854死の鳥 (ハヤカワ文庫SF)
ハーラン・エリスン 伊藤典夫
早川書房 2016-08-05

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ハーラン・エリスン『死の鳥』(伊藤典夫訳 ハヤカワ文庫SF)
 エリスンの、既訳ながら雑誌などに埋もれていた作品を集めた作品集です。とはいえ、それぞれが、本国では何らかの受賞作レベルの作品なので、とんでもなくレベルの高い作品集になっています。
 極端な時間管理が行われる社会に反抗する男の物語『悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった』、全能の機械にもてあそばれる人間たちを描いた『おれには口がない、それでもおれは叫ぶ』、数十万年ぶりに甦った男の人生を神話的に描いた『死の鳥』、ある殺人事件をきっかけに宗教的な畏怖に囚われる都市幻想小説『鞭打たれた犬たちのうめき』など、SFだけでなく、ホラーやファンタジーも含まれたヴァラエティ豊かな作品集でもあります。



4041043557ずうのめ人形
澤村伊智
KADOKAWA/角川書店 2016-07-28

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澤村伊智『ずうのめ人形』(角川書店)
 オカルト専門雑誌の編集部で働く藤間は、連絡の取れなくなったライターが自宅で死んでいるのを発見します。ライターが遺した原稿の中に「ずうのめ人形」と呼ばれる都市伝説を発見した藤間は、これがライターの死の原因ではないかと疑うようになります。
 やがて、藤間の周辺に顔を糸で覆った謎の人形が姿を現します。その姿は自分にしか見えないのです。段々と近づいてくる人形が、自分のもとにたどり着いたとき、死が訪れることを確信した藤間は、霊能力者の真琴と、真琴の婚約者野崎に助けを求めますが…。
 1作目『ぼぎわんが、来る』でもそうでしたが、作中に登場する怪異の破壊力がすごいです。かぼそい霊的現象というレベルではなく、人が数十人単位で死ぬというレベルのため、巻き込まれた人間たちの緊迫感が半端ではありません。
 現在時間で進行する怪異現象と、都市伝説の誕生をめぐる過去とが交互に描かれ、それがクライマックスで交差するという構成も見事です。
 怪異を前に右往左往するのではなく、それらを実在のものとして捉え、その対策を真摯に考えていくという、ゴースト・ハンターものとしても良質な作品でしょう。



4087716686怪談のテープ起こし
三津田 信三
集英社 2016-07-26

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三津田信三『怪談のテープ起こし』(集英社)
 怪奇小説を集めた短篇集です。作者である三津田信三と、その女性編集者が怪異現象に巻き込まれていくという、メタフィクション的な枠物語の形で進行します。
 死ぬ間際の人間の声を録音したテープを起こし、本を作ろうという企画を持ちかけられるという『死人のテープ起こし』、豪邸に夜一人で留守番をするアルバイトをすることになった女子学生の体験を描く『留守番の夜』、ほとんど知らない者同士で山登りを行うことになった一行の体験を描く『集まった四人』、入院中の母親と同室になった老人が繰り返す奇怪な話を描く『屍と寝るな』、全身黄色の雨具を着けて現れる得体の知れない女の恐怖を描く『黄雨女』、不気味な「黒い人」とすれ違い続ける女性を描く『すれちがうもの』の6篇を収録しています。
 怪異のインパクトをストレートに押し出す『留守番の夜』『すれちがうもの』も面白いですが、間接的な語りとおぼろな記憶が不気味さを高める『屍と寝るな』がベストでしょうか。



4063828255宇宙のプロフィル (ヤンマガKCスペシャル)
こがたくう
講談社 2016-07-20

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こがたくう『宇宙のプロフィル』(ヤンマガKCスペシャル)
 SFマンガ短篇集です。
 遠未来、巨木「エルキド」の幹に住む有角人たちを描く『エルキドの巨木』、宇宙船で別の人間になっている夢を見続ける少女を描く『京子の夢』、海王星を目指す5人のチームの一人が呼びかけに応えなくなるという『ハッピーエンド』、天文学者が自らの人生を回想する『小さな彗星』、太陽が燃え尽き、最後が迫る地球で一人待ち続けるロボットを描く『地球最期の日』を収録。
 どれも秀作ですが、巨木や有角人など、ファンタジー的な設定が結末に至ってSF的な解釈が施される『エルキドの巨木』、二重のどんでん返しが面白い『ハッピーエンド』、情感豊かな『地球最期の日』などが面白いですね。
 特に、50億年も何かを待ち続ける『地球最期の日』はスケールの大きさと相まって、感銘を受ける作品です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
エリスンの魅力とは?
エリスン『死の鳥』、エリスンは武勇伝などで有名な印象で、逆に作品の方はと言うと作品集はほとんど出ていないし、「世界の中心で愛を叫ぶ獣」の印象がさほどでもなかったので、あまり作家の魅力についても印象が無いのですが、エリスンの魅力、どんなところにあると思われますか?
(各作品世界設定の武骨と言うかゴリゴリした感じ(???)は、「エリスンらしい」と個人的に感じますが・・・)

三津田信三『怪談のテープ起こし』、疑似実話怪談だとすると、小野不由美の『残穢』 (この作品は読んでいて、ラストシーンとか、結構よく出来た作品だと思いましたが) の成功を受けてというのもあるのかなとちょっと連想たりもしましたが、
ご紹介を見ると、いかにも「怪談」と感じられる各エピソードはそれぞれが魅力的で印象に残りますね。読んでみたくなりました。
澤村伊智さんの各作品も一読したいですが、今はどちらかと言うと本がたまっているので、こちらは文庫落ちを待ってしまうかも… ただ、いかにも"日本もの"と言う味付けの作品で怪異が大掛かりなものは、一時期流行のように出現した女流作家たちの有名作品のほかはあまり見ない気がするので、その意味でも興味を引かれてはいるのですが。

ナイトランド・クォータリーvol.06 奇妙な味の物語』、魅力的な未知の作家には引かれますが、1篇か(ご紹介にないだけで他にも多少は紹介されているのでしょうが)…という。もうちょっと頑張って未知の世界を掘り起こして頂けると、食指が動くのですが… 商業的にあまり冒険できないのは分かりますが…

SF系マンガ作品、これまでにご紹介頂いた各作品、魅力的だと感じつつも書店に行った時はもう無くて…といった経緯で買えていなかったのですが、どこか落ち着いたタイミングでまとめて買いたいなと思っています。
もっともどうしても冊数が多くなるマンガ作品は電子書籍で…などと考え始めると機種選定ほか考えることも多くてまた先延ばしになってしまうのですが、さて……
【2016/10/10 23:26】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]

>Greenさん
僕も『世界の中心で…』の方は、印象が薄かったです。作品集自体が他になかったので、アンソロジーや雑誌に訳載されたものしか読んでいないわけですが、正直、単品で読んでもの凄く印象に残っているというのはあまりないんですよね。
ただ、今回まとめて読んでみて、やはり只者ではないな、とは感じました。個人的にはエリスンって、ロジャー・ゼラズニイやコードウェイナー・スミスに似た感じを受けています。まったく世界観の説明なしに、物語を進める語り口とか、飛躍の多い文章とか。物語の内容というよりは、スタイルに惹かれるタイプの作品ですね。

三津田信三の怪奇短篇って、着想としてはそれほど目新しくないのですが、正攻法で押してくるタイプの怪談なので、このジャンルが好きな人には楽しめると思います。

澤村伊智作品はオススメですよ。怪異現象が繊細な正調怪談でもなく、かといってホラ話スレスレのモダンホラーでもなく、その間のバランスが見事だと思います。非常にメリハリがあるんですよね。

近年の『ミステリマガジン』の特集なんかでも言えるのですが、テーマ特集の際の収録作品が少ないんですよね。翻訳権の高騰なども関係しているのかもしれないですが。昔の『SFマガジン』や『ミステリマガジン』って、特集の収録作品が10篇以上あったりすることもありましたよね。
【2016/10/11 20:22】 URL | kazuou #- [ 編集]


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kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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