怪奇マンガ強化週間
4865370595戦後怪奇マンガ史
米沢 嘉博 赤田 祐一
鉄人社 2016-07-22

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 米沢嘉博『戦後怪奇マンガ史』(鉄人社)を購入し、さっそく一読しました。
 この本は、漫画評論家の米沢嘉博が、戦後の怪奇マンガの歴史を辿った本です。1980年代の中頃から終わり頃までホラー雑誌に連載されていたものなのですが、その当時すでに古典になりつつあった作品を中心に紹介されており、あまり新しい作家は扱われていません。
 貸本時代の作品から始まり、水木しげる、楳図かずお、古賀新一、萩尾望都、山岸凉子、日野日出志、手塚治虫、諸星大二郎、永井豪、つのだじろうなどが取り上げられています。怪奇専門の作家だけでなく、一時的に怪奇ものに手を染めた作家にも触れられています。
 全体に、古典よりの作品に力が入っているのですが、類書が全くないので、資料的にも貴重な本になるのではないでしょうか。

 もともと、怪奇マンガは大好きなジャンルなのですが、この本を読んで、怪奇マンガ熱が高まってしまいました。そんなわけで、最近読んだ中から、新旧合わせて、いくつかの作品を紹介していきたいと思います。



B016XZZPXM人面蝶
池上 遼一
グループ・ゼロ 2015-10-21

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池上遼一『人面蝶』(講談社KCスペシャル)
 劇画の巨匠として知られる作者の、初期に書かれた怪奇もの作品集です。
 表題作の『人面蝶』のインパクトが強烈です。蝶の採集に訪れた青年は、山の中で男が落石に会う場面に遭遇します。岩がそれたにもかかわらず、全身をつぶされて死んでしまうのを見た青年は、蝶に卵を産み付けられた人間は、蝶が死ぬと同時に死んでしまうのではないかと考えますが…。
 他に、狂った鳩が人間を襲う『狂い鳩』、鬼女に惑わされる三人の足軽の運命を描いた『安達ケ原の鬼女』など。

 

4063131084佐伯かよのSFミステリー傑作選 アリスの13時間 (KCデラックス)
佐伯 かよの
講談社 1989-11-13

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佐伯かよの『アリスの13時間』(講談社KCDX)
 表題作『アリスの13時間』は、難破した船の乗客たちが無人島にたどり着くものの、ラジオにより13時間後にその島で核実験が行われることを知り、実験が始まる13時間以内に島を脱出しようとする物語。外的な脅威に加え、仲間内で争いが始まり…というサスペンスたっぷりな話です。
 理由もなく、次々と自殺する人間たちの謎を追う『黄泉からの声』、人の心が読める少年が人々の心の醜さを暴いていくという『ジムニイの箱』、脳が異常発達し、知能が急激に上がった少女を描く『割れたカップ』など、SF味の強いホラーといった感じでしょうか。
 あらゆる現象が願った通りになる少女の登場する『午後5時1分前…!』は、破滅SFもののバリエーション。
 佐伯かよのの初期作品は、アイディアに富んでいて、今でも面白く読めるものが多いです。



4197805330怖すぎる永井豪 (トクマコミックス)
永井 豪
徳間書店 2012-07-03

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永井豪『怖すぎる永井豪』(トクマコミックス)
 収録作品中でいちばん有名なのは、突然大人たちが子供を殺し始める『ススムちゃん大ショック』でしょうか。レ・ファニュの原作を漫画化した『シャルケン画伯』、亡き親友の恋人と結婚した男の体験を描く『遺品』、いじめっ子たちがいじめられた子の怨念に殺される『雪』など。
 少年向けでも、永井豪作品は描写に容赦がないので、迫力がありますね。



4344836340ぐらんば (バーズコミックス)
押切蓮介
幻冬舎 2016-02-24

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押切蓮介『ぐらんば』(バーズコミックス)
 長年虐げられてきた老婆が、突如煉獄から来た巨大な化け物たちに襲われ、一人立ち向かう…というアクションホラーマンガ。ギャグすれすれの設定なのですが、怪物の造形や、その破壊力がすさまじく、まるでアメコミの実写化を観ているような迫力で楽しめます。



4845844273盆の国 (torch comics)
スケラッコ
リイド社 2016-07-11

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スケラッコ『盆の国』(リイド社torch comics)
 ご先祖様の霊を見ることができる少女は、お盆の同じ一日を何度も繰り返していることに気付きます。霊の話を聞くことができる青年と出会った少女は、協力して止まった時間を動き出させようとしますが…。
 青年の正体、少女の能力の由来、家族の過去…。絵柄はシンプルながら、丁寧に作られた作品です。盆が舞台になっているというのもありますが、清涼感のあふれるファンタジーです。



4022131470眠れぬ夜の奇妙な話コミックス りんたとさじ (ソノラマコミックス 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
オガツ カヅオ
朝日新聞出版 2009-10-07

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オガツカヅオ『りんたとさじ』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
 霊能力を持ち、怪奇現象に関わるバイトをしている「りんた」と、その恋人の「さじ」が巻き込まれる事件を描いた連作短篇集です。ユーモアの溢れる日常シーンと怪奇シーンとの落差が絶妙です。日常の風景が突然奇妙な情景に移り変わる瞬間が素晴らしい。
 どのエピソードも読み応えがありますが、新婚の妻の話が、だんだんと不穏な方向に向かう『炬燵の人』、両親を殺した男が時空のひずみに取りこまれる『穴の人』、愛猫の死を悲しむ男が隠していた真実が暴かれる『鳴く人』などが、印象に残ります。
 とくに、人生の真実が二転三転し、それが見事に怪奇現象と直結している『鳴く人』は、傑作だと思います。

テーマ:漫画 - ジャンル:アニメ・コミック

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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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