知られざる幻想短篇   西周成編訳『ロシア幻想短編集』
ロシア幻想
 西周成編訳『ロシア幻想短編集』(アルトアーツ)は、ロシアの知られざる幻想小説を集めたアンソロジーです。全7編が収録されています。

ウラジーミル・フョードロヴィチ・オドエフスキー『オルゴールの中の街』
 オルゴールの中の街に入り込んだ少年の冒険を描く童話作品。夢の国だと思っていた少年の考えとは裏腹に、街にも生きるための厳しさがあるという、風刺的な要素の強い作品です。

イワン・ツルゲーネフ『勝ち誇る愛の歌』
 互いに、同じ女性ヴァレリアに思いを寄せる親友同士の青年ファビオとムツィオ。恋に破れたムツィオは、東洋へと旅に出ます。帰ってきたムツィオが奏でる音楽は、その魔術的な効果でヴァレリアを苦しめますが…。
 ロマンチックな作品かと思わせる前半に対し、悪夢めいた状況に陥る後半は、まさに正統派の怪奇小説。力作です。

アントン・チェーホフ『酔っ払いと素面の悪魔との会話』
 悪魔と出会った役人を描く、風刺的なユーモア・スケッチです。

アレクサンドル・イワノヴィチ・クプリーン『夢』
 語り手が見る幻を語った、幻想的な散文詩的作品。

フョードル・クジミチ・ソログープ『獣が即位した国』
 その国では、草むらに置かれた黄金の卵を拾ったものが王になるという決まりでした。通りかかった少年ケニヤは卵を見つけますが、それを欲しがった親友のメテイヤに渡してしまいます。やがて王になったメテイヤは、残忍な行為を繰り返すようになり、やがて友であるケニヤをも疎ましく思うようになります…。
 ファンタスティックな設定の寓話的作品。イメージの喚起力が素晴らしい一篇です。

ニコライ・ステパノヴィチ・グミリョーフ『ストラディヴァリウスのヴァイオリン』
 音楽に打ち込むヴァイオリンの老大家ベリチーニは、自ら所有するストラディヴァリウスのヴァイオリンを愛していました。ある夜、ベリチーニは見知らぬ男が部屋の中にいることに気が付きますが…。
 音楽に取り憑かれた男を描く、音楽幻想小説。

アレクサンドル・グリーン『魔法の不名誉』
 結婚したばかりのポーターは、ある日、美しい娘に、ペットショップから小鳥を買って届けてくれるように頼まれます。何度も店に小鳥を買いに行く用事を頼まれたポーターは不審に思いつつも、娘の魅力に負け、言うなりになってしまいますが…。
 妖しい魅力を持つ美女の正体とは…。短いながらも、非現実的な情景を味あわせてくれる手つきは、まさに「魔法」のよう。グリーンの傑作のひとつだと思います。
 
 編者の西周成さんは、もともと映画畑の方のようですが、自ら立ち上げたレーベルでロシアの小説作品や映画関連書の翻訳書を出されています。
 ロシア関係の中でも、さらに知られざる作品を中心に手がけられているようです。すでに刊行済みのタイトルでは、アレクサンドル・グリーン短編集『灰色の自動車』もオススメです。
 

 アルトアーツの出版物は、以下のストアで購入できます。

 別の生活ストア(Alt-Life Store) http://altarts.cart.fc2.com/

 オンデマンド印刷のようなので、注文から発送まで少し時間がかかるようです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

ロシアの幻想(神秘)アンソロジーは国書刊行会からわずかに出ていたくらいだったので、アルトアーツ社の旺盛な刊行ペースが本当に嬉しいですね。
西周成氏の孤軍奮闘が力尽きてしまわないか多少不安ではありますが、この先も非常に楽しみなシリーズです。
ロシア幻想短編集(Ⅰ)・Ⅱを読んでみて、幻想・神秘・怪奇をほどよく取り交ぜているし、軽み重み長短もバランス良く非常に上質なアンソロジーだと感じました。
【2016/11/13 08:33】 URL | 門前 #- [ 編集]

>門前さん
アルトアーツのアンソロジーは毎回楽しく読ませてもらっていますので、編者の西周成さんには頑張っていただきたいです。
英米作品なんかと異なって、ロシアや東欧は、どのぐらいの作品が眠っているものか、正直、想像もつきません。未紹介のなかにも、まだまだ傑作が眠っていそうです。
ソ連時代には、SFプロパー作家もいたようですし、エンタテインメント分野の作品の訳出も期待したいところですね。
【2016/11/13 10:09】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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