暗い時間に、この場所で  アンドレア&カネパ監督『-less レス』
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レイ・ワイズ ジャン=バティスト・アンドレア ファブリス・カネパ
ハピネット・ピクチャーズ 2005-08-26

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 例えば『シックス・センス』であるとか『アイデンティティー』あるいは『フォーガットン』など、超常現象をからませたスリラー映画というものが、最近よく作られているように思います。昔からスリラーやサスペンスでは、常識では考えられないような事態に巻き込まれる主人公、というのがよくありました。しかしこの手のジャンルでは、飽くまで現実的に事件は解決されます。その意味で超常現象を持ち出すのはルール違反という考え方もあるでしょう。しかし作り方次第では、実に面白いものが出来上がる可能性もあるのです。この作品、ジャン=バティスト・アンドレア&ファブリス・カネパ監督『-less レス』(2003 仏・米)もそんな一つ。
 クリスマス・イブの夜、車で毎年恒例の親戚のパーティーに向かうハリントン一家。今年に限って、近道をしようと人気のない森を抜けていくことになりますが、行っても行っても出口が見えてきません。
 突然、道ばたに赤ん坊を抱いた白いドレスの女が現れ、車はあわてて停車します。何を聞いても答えず、しかも怪我をしているらしい女を放っておくこともできず、車に同乗させることになります。携帯電話も通じないため、やがて古びた山小屋を発見した一家は、そこで電話を借りようとしますが、つながりません。
 そのとき悲鳴が起こります。娘マリオンの恋人ブラッドが、謎の黒いクラシックカーで連れ去られてしまうのです! 運転者の顔は全く見えず、ブラッドが助けを求める姿を目の前に呆然とする一家。あわてて追いかける一行ですが、やがて道ばたにブラッドの変わり果てた姿を見つけます。
 恐怖を感じながらも、車を進める一家の前に「マーコット」という名の標識が現れます。しかし、地図で確かめても、そんな名前の町はないのです。
 パンクを直そうと、父親フランクが車の修理をしている最中、息子リチャードの姿が見えなくなります。すると再び黒いクラシックカーが現れます。そしてその中にはリチャードの姿が! そしてまたリチャードも無惨な死体で発見されるのです。
 息子の死で、母親ローラは精神的におかしくなってしまうのですが、マリオンは車を止めるたびに誰かが死ぬと、飽くまで車で走り続けることを提案します…。
 車を止めるたびに次々と連れ去られる家族。いつまで経っても抜け出せない道。何度も現れる同じ標識。黒いクラシックカー。謎の白いドレスの女。謎だらけの展開は、サスペンスたっぷりです。
 全編暗い夜のシーンで、しかも、車で走っているのがほとんどの映画なのですが、ツボを押さえた演出でまったく飽きさせません。殺人や死体の直接描写が全くないのも特徴的。死体を見る家族の目線と表情だけで、それを表現しているのは非常に技巧的です。
 あまりに不条理な展開になってゆくので、これを現実的に解釈するのは不可能だと思うことでしょう。これは超自然的、もしくはSF的なオチにもっていかなければ、うまく説明できないだろうなと思っていたら、案の定ではありました。
 その点、結末になってしまうと、拍子抜けしてしまうのも確かです。しかし、その結末に至るまでの過程はサスペンスが途切れず、素晴らしい作品になっています。前半があまりに素晴らしいので、はっきり言って結末がどうなってもいいような気がするほどです。一応タネ明かしがあるのですが、この作品の場合、謎を謎のまま不条理な終わり方をしても、ありなのではないかと思えます。
 〈トワイライトゾーン〉風の異色スリラー。『SAW ソウ』と比較する向きもあるようですが、シンプルな効果に特化した分、個人的には『SAW ソウ』などよりも傑作なのではないかと思います。

テーマ:ホラー - ジャンル:映画

この記事に対するコメント
風呂敷広げすぎ?
車を止めて何か作業をすると、男が連れ去られてしまう。なかなかおもしろい設定ですね。
読んだ印象では「白いドレスの女」は日本版雪女といったところでしょうか。
最後に残る男はお父さんなのかな?でも、ガス欠で止まってしまって連れ去られるんでしょうね…たぶん。
【2006/04/12 20:39】 URL | 加納ソルト #- [ 編集]


雪女…、当たらずといえど遠からず、といったところでしょうか。
家族が連れ去られるパターンが続くので、その点で次の予想がつくのですが、わかっていても、これほどサスペンスフルな作品は久しぶりに見ました。
【2006/04/12 20:50】 URL | kazuou #- [ 編集]


日本版雪女は変ですね。フランス版雪女です。
全く予想がつかないので、観て確かめたいと思います。
【2006/04/12 21:05】 URL | 加納ソルト #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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