3月の気になる新刊と『ナイトランド・クォータリーvol.04』の感想など
3月4日刊 マイクル・コーニイ『ブロントメク!』(河出文庫 予価972円)
3月9日刊 コードウェイナー・スミス『スキャナーに生きがいはない 人類補完機構全短篇1』(ハヤカワ文庫SF 予価1296円)
3月9日刊 バリントン・J・ベイリー『カエアンの聖衣 新訳版』(ハヤカワ文庫SF 予価1080円)
3月12日刊 ショーン・ステュアート『モッキンバードの娘たち』(東京創元社 予価2052円)
3月12日刊 ウィリアム・アイリッシュ『暁の死線 新装版』(創元推理文庫 予価1188円)
3月25日刊 オスカル・ド・ムリエル『悪魔のソナタ』(角川文庫 予価1339円)
3月26日刊 ワレリイ・ブリューソフ 『南十字星共和国』(白水Uブックス 予価1620円)
3月刊 イーデン・フィルポッツ『極悪人の肖像』(論創社 予価2376円)

 コードウェイナー・スミス『スキャナーに生きがいはない 人類補完機構全短篇1』は、《人類補完機構》シリーズの短篇を集成する全3巻の第1巻です。
 スミスの作品は、異様な設定や壮大な世界観を持っていて、一見とっつきにくそうなのですが、じっくり読んでみると、物語の骨格はロマンティックなおとぎ話だったりするというアンバランスさが魅力です。
 現役本で手に入るのは、『ノーストリリア』のみでしょうか。代表作の『鼠と竜のゲーム』でさえ絶版とは。それだけにこの短篇集成の刊行は、嬉しい知らせですね。
 
 ショーン・ステュアート『モッキンバードの娘たち』は、「母が亡くなり、解放された娘のわたし。が、彼女が遺した〝六人の奇妙な存在が降りてくる能力〟は、わたしの人生を思わぬ方向に導いて──母娘と家族の絆を深く伝える物語。」
 ファンタジー的な作品だと思いますが、面白そうですね。

 ウィリアム・アイリッシュ『暁の死線 新装版』は、タイムリミット・サスペンスの新装版。原型となった短篇『バスで帰ろう』ともども、名作だと思いますので、ぜひ。
 そういえば、創元推理文庫から出ている《アイリッシュ短篇集》は、全6巻のうち、『ニューヨーク・ブルース』以外は品切れみたいですね。門野集さんが編纂した《コーネル・ウールリッチ傑作短篇集》シリーズ(白亜書房)も絶版みたいですし。アイリッシュ(ウールリッチ)は、短篇に本領があると思うので、ここらでぜひ入手しやすい短篇集を出してもらいたいものです。

 3月でいちばん気になる新刊は、ワレリイ・ブリューソフ 『南十字星共和国』ですね。20世紀初頭のロシアの作家による幻想小説集です。このところの白水Uブックスは、じつに渋いところを刊行してきますね。

 イーデン・フィルポッツ『極悪人の肖像』は、倒叙探偵小説の名作として知られる作品。個人的にフィルポッツって好きなんですよね。もともとこの人の作品って、ミステリというよりは、文学味のあるサスペンスといった感じが強いと思うので、今読んでも、あまり古びた感じがしません。



4883752232ナイトランド・クォータリーvol.04 異邦・異境・異界
アトリエサード
アトリエサード 2016-02-25

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『ナイトランド・クォータリーvol.04』が刊行され、さっそく目を通しました。特集は《異邦・異境・異界》、異界に遭遇する物語を集めています。
 掲載作品は粒ぞろいですが、とくに良かったのは、ジョー・R・ランズデール『月あかりの草原』とシェーン・ジライヤ・カミングズ『プラハの歌声』でしょうか。
 『月あかりの草原』は、列車で一夜を明かすことになった男が、深夜の草原で、あるものに出会う…という作品。これは雰囲気が素晴らしい作品です。
 『プラハの歌声』は、次のような話。プラハで、男はなぜか自分を惹きつける歌を歌い続ける娘に出会います。その歌はなんという歌なのか訊ねる男に対し、娘の姉は教えられないと突っぱねます。歌を邪魔しようとする若者たちが現れるのに及び、歌うのを邪魔されると恐ろしいことが起こると姉は話しますが…。
 ボルヘスやダンセイニを思わせる幻想小説です。

 ホジスン『海の悪魔』は、海を舞台にした怪奇小説。語り手の船を追いかけてくる船に乗っていたものとは…。怪物が登場してからの物語の推進力は、この作者ならではでしょうか。
 ホワイトヘッド『チャドボーン奇談』は、ホワイトヘッドお得意の魔術をテーマにした作品。スティーヴ・ラスニック・テム『黒い鳥のいる麦畑』は、かって姉が失踪した草原を訪れた弟と母を描く、寂寥感あふれる作品です。
 サイモン・ストランザス『凍土の石柱』は、北極に調査に訪れた男が、そこで出会った石柱をめぐる奇談。《クトゥルーもの》の一種でしょうか。
 あとは、ラヴクラフトの音楽怪談『エーリッヒ・ツァンの楽曲』の新訳など。

 新連載として、安田均さんのエッセイ『STRANGE STORIES 奇妙な味の古典を求めて』が始まりました。我が国で未訳や未紹介の《奇妙な味》の作品を紹介していく、というコンセプトだそうで、これは楽しみです。第1回として、J・D・ベリスフォードが取り上げられています。

 新創刊後、ブックガイド的なページが増えていますが、今回の特集ガイドは充実していて、良かったと思います。「異邦と異境の小説ガイド」として、コッパード、バーカー、ホジスン、フィニィ、デュ・モーリア、筒井康隆など、日本と海外織り交ぜて作品が紹介されています。

 この号で、正式に《ナイトランド叢書》の第二期ラインナップが紹介されています。 改めて、並べてみましょう。

クラーク・アシュトン・スミス『魔術師の帝国』安田均編
M・P・シール『紫の雲』南條竹則訳
マンリー・ウェイド・ウェルマン『ジョン・サンストーンの事件簿』尾之上浩司訳
E・F・ベンスン『塔の中の部屋』中野善夫訳
オーガスト・ダーレス『ミスター・ジョージ』中川聖訳
アルジャーノン・ブラックウッド『ウェンディゴ』夏来健次訳

 長編は『紫の雲』のみ。『ジョン・サンストーンの事件簿』は連作短篇集。スミス、ベンスン、ダーレスは短篇集、ブラックウッドは中篇集になるようです。短篇集・傑作集中心になっており、短篇派としては嬉しいところです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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