最近のホラー映画から
 ホラー映画が大好きでよく観るのですが、最近続けて観た作品が秀作ぞろいだったので、まとめて紹介したいと思います。


B016ZYAH48私はゴースト [DVD]
TCエンタテインメント 2016-02-03

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『私はゴースト』(H・P・メンドーサ監督 アメリカ 2012年)

 大きな屋敷に一人で暮らす女性エミリーは、時折、家の中で違和感を感じつつも暮らしていました。やがて寝室で、自分に話しかける女性の声を聞きます。シルヴィアと名乗る彼女は、驚くべきことを言い出します。エミリーは既に死んでおり、それに気付いていないというのです。霊媒師であるシルヴィアは、エミリーの因果を解き明かせば、成仏できると話しますが…。

 除霊を扱った作品なのですが、なんと、視点を霊の側に置いたという、新感覚の作品です。除霊といっても、儀式とかお祓いをするわけではなく、死者に自分の死を自覚させるというもの。
 しかしエミリーの場合、その生い立ちや死の状況が特殊であったため、死の自覚だけではなく、死に至る理由を解き明かさねばならないのです。エミリーの生前の心理や生い立ちなどを探っていく過程は、なかなかスリリングで、いわば、霊媒師シルヴィアによる、エミリーのセラピーといった形をとります。
 基本的には二人(といっても一人は声だけですが)だけなので、後半までは、かなり地味な展開で、少々退屈するのも事実です。しかし、これはホラーじゃなくて、ミステリーじゃないのかな、と疑問を抱き始めた矢先の急展開がすさまじく、前半が「ため」だったと考えると、もの凄い演出ですね。
 「ゴースト・ストーリー」の新しい形といえる作品で、これは一見の価値があると思います。



B018RFB4C2400デイズ [DVD]
マット・オスターマン
アルバトロス 2016-02-03

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『400デイズ』(マット・オスターマン監督 アメリカ 2015年)

 宇宙探査旅行のシミュレーションとして、候補生の男女4人が、宇宙船内部を模して地下に作られた施設で400日間を過ごすことになります。訓練の途中で、本部との通信が途絶えてしまいますが、これも訓練の一環と考え、そのまま生活を続行することになります。
 訓練の終わりが近づいたある日、突如ハッチを叩く音が聞こえます。4人は訓練を中断し、外に出ますが、そこで見たのは、荒野と化した地表でした…。

 世間と切り離された環境で過ごしている間に、地球に何が起こったのか? 人類は絶滅してしまったのか? 説明してくれる人間は見つからず、砂埃に覆われた地表を宇宙服を着たまま歩き回るシーンは、不条理感に満ちています。
 地表が激変した理由が明確に語られず、登場人物たちの結末についてもはっきりしません。そのため「投げっぱなし」という評もあるようですが、ホラー作品として考えると、これはこれでありだと思います。



B00UULR6CYオキュラス/怨霊鏡 [DVD]
インターフィルム 2015-06-03

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『オキュラス/怨霊鏡』(マイク・フラナガン監督 アメリカ 2013年)

 両親と幸せに暮らしていた姉ケイリーと弟ティム。しかしあるときを境に、父母の様子がおかしくなります。父は母を殺害し、自らも射殺されてしまうのです。弟ティムは父親の殺害犯として捕らえられ、精神病院に送られてしまいます。
 ケイリーは、自宅にあった鏡が呪われた品物であり、父母がおかしくなった原因だと考えていました。再び鏡を手に入れたケイリーは、退院したティムとともに、鏡を破壊する計画を立てますが…。

 呪われた鏡「ラッサーの鏡」の存在感が半端ありません。影響力を及ぼした人間の精神を狂わせ、現実と幻を混同させるのです。鏡の力を知ったケイリーは、綿密に計画を立てます。真正面から壊そうとしても、自分が逆に殺されてしまう可能性があるのです。
 自分たちの姿を録画したり、定期的に恋人から電話連絡が来るようにするなどの対策を取ります。極めつけは、タイマーで一定時間後に作動する錨。自分たちに何かあった場合には、鏡が自動的に破壊されるようにする仕組みなのです。
 しかし、これだけの用意をしたにもかかわらず、姉弟は精神を翻弄されてしまうのです。

 子供時代の惨劇を描く過去パートと、成人した姉弟が鏡に挑む現代パートとが同時進行する過程はサスペンスたっぷり。過去パートの映像が、現代パートの幻影としても描かれるあたりの演出は素晴らしいです。
 鏡の力で幻覚が起こることが示されるため、登場人物たちの行動が現実なのか、幻覚なのかが観客まで段々わからなくなってきます。暴力やスプラッタシーンではなく、純粋に心理的な恐怖感とサスペンスで見せる技巧作です。



B017B9AZ70パラドクス [DVD]
アメイジングD.C. 2016-02-03

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『パラドクス』(イサーク・エスバン監督 メキシコ 2014年)
 
 刑事に追われた犯罪者の兄弟は、マンションの非常階段に逃げ込みますが、刑事の発砲した弾丸で兄は負傷し、逃亡をあきらめます。しかし、非常階段のドアから出ようとしても、ドアはどこの階も開かないのです。
 しかも、階段は上っても下っても、同じところに戻ってきてしまいます。階段内に設置された自動販売機の飲食物は、食べてもなぜか補充されるため、食料には困りません。しかし負傷した兄は、衰弱し、死が近づいていました…。
 一方、幼い兄妹は、義父と母とともに、車で旅行に出かけます。家族は、車で一本道を走っている途中、何度も前に来たところを走っていることに気がつきます。道だけでなく、左右からどこかに行こうとしても、同じところに戻ってきてしまうのです。やがて妹が喘息の発作を起こしますが、唯一の吸入器を義父が誤って壊してしまいます…。

 特定の空間に閉じ込められた人々を描く、いわゆる《ループもの》作品のバリエーションと言えるのですが、作品内では時間は経過し、登場人物は歳を取るので、ループしているのは、あくまで空間です。
 この手のジャンルでは、時間にせよ空間にせよ、閉じ込められたループ内からいかに脱出するか?というのがテーマになると思うのですが、この『パラドクス』はその点、じつにユニークです。
 脱出の試みは確かになされるのですが、それはすぐに失敗してしまいます。その後、閉じ込められた空間内でいかに生きていくのか?という点に焦点が当てられるのです。
 閉じ込められた人々のうち、年上の人々はすぐに諦め自暴自棄になったり、錯乱したりします。それに対して、子供や若者は体を鍛え、日常生活が送れる環境を自ら作り上げるのです。
 ループをすると、食料や持っていた荷物などの物質が元に戻る(物が増える)ため、それを使って、生活用具を作れます。例えば、ペットボトルを糸で大量に吊るし、シャワー代わりにしたりと、手持ちのアイテムを上手く使って、日常生活を生きるために利用します。このあたりの描写はアイディアに富んでいて、映像で見せられると新鮮な驚きがあります。

 階段に閉じ込められた兄弟がかばんの中に持っていたペーパーバックのタイトルがフィリップ・K・ディックの『時は乱れて』だったり、一本道に閉じ込められる家族の家に飾ってあるのが、エッシャーの版画だったりと、細かい小道具が作品のテーマを象徴しています。
 また、全編を通して、シューマンの交響曲4番が上手く使われていて、作品を引き立てます。

 ループの理由については、結末で明かされますが、作品内で語られる2つの事例が、さらに他の事例につながっているという、まるでエッシャーの版画を思わせるような作りになっています。
 もし自分がこの環境に置かれたら…と、思わず想像してしまうようなリアリティがあり、想像すると心底から怖くなってしまうような迫力があります。SFホラー映画の傑作といっていいでしょう。

 『パラドクス』を観ていて、《ループもの》についての興味が再燃したので、次回は、ちょっと《ループもの》について、書いてみたいと思います。

テーマ:ホラー - ジャンル:映画

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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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