1月の気になる新刊と12月の新刊補遺
発売中 アリス&クロード・アスキュー『エイルマー・ヴァンスの心霊事件簿』(アトリエサード 2376円)
12月18日刊 マヌエル・ゴンザレス『ミニチュアの妻』(白水社 予価2808円)
12月25日刊 ロード・ダンセイニ『ウィスキー&ジョーキンズ ダンセイニの幻想法螺話』(国書刊行会 予価2592円)
12月25日刊 ジーン・ウルフ『ウィザード Ⅰ・Ⅱ』(国書刊行会 予価各2592円)
12月25日刊 カレル・チャペック『ある作曲家の生涯』(青土社 予価1728円
1月5日刊 シャーリイ・ジャクスン『日時計』(文遊社 予価2916円)
1月7日刊 サキ『けだものと超けだもの』(白水Uブックス 予価1512円)
1月7日刊 ロバート・エイクマン『奥の部屋』(ちくま文庫 1026円)
1月8日刊 小鷹信光編 ジャック・リッチー『ジャック・リッチーのびっくりパレード』(ハヤカワ・ミステリ 予価1836円)
1月22日刊 東雅夫編『文豪山怪奇譚 山の怪談名作選 明治・大正編』(山と渓谷社 予価972円)
1月22日刊 『Comic M 早川書房創立70周年記念コミックアンソロジー ミステリ篇』(早川書房 予価1620円)
1月22日刊 『Comic S 早川書房創立70周年記念コミックアンソロジー SF篇』(早川書房 予価1620円)
1月22日刊 パーシヴァル・ワイルド『ミステリ・ウィークエンド』(原書房 予価2592円)


 〈ナイトランド叢書〉の新刊は、アリス&クロード・アスキュー『エイルマー・ヴァンスの心霊事件簿』です。20世紀初頭に書かれたオカルト探偵ものになります。
 内容紹介については、下記のブログが参考になります。
 → http://borderland.txt-nifty.com/weblog_on_the_borderland/2010/02/post-e7bd.html
 それにしても、本当に刊行ペースが速い。1期が完結するまで、数年はかかると思っていました。これで1期の残りはホジスンの未訳作のみになりましたね。

 マヌエル・ゴンザレス『ミニチュアの妻』は、アメリカの新人作家の短篇集。「妻をマグカップ大に縮めてしまう男の話」とか「ハイジャックされた飛行機が20年間飛び続ける話」とか、面白そうな作品集です。

 ロード・ダンセイニ『ウィスキー&ジョーキンズ ダンセイニの幻想法螺話』は、ダンセイニの〈ジョーキンズもの〉を集めた作品集です。
 〈ジョーキンズもの〉は、ジャンルとしては必ずしもファンタジーの形をとらないこともあり、ミステリだったりSFだったりしますが、共通するのは底抜けに楽しいホラ話だということ。ジャック・リッチーとかジェイムズ・パウエルあたりと似た感じの作風なので、むしろミステリ系の読者にオススメしたいですね。イチオシです。

 シャーリイ・ジャクスン『日時計』は、長編でしょうか。あらすじは「ハロラン家にもたらされた“お告げ”。それは世界が天災に見舞われ、たった一晩のうちに破壊されてしまうというものだった。そして「屋敷」は新世界への方舟となる−。」というもの。これは気になりますね。

 『けだものと超けだもの』は、ゴーリーの挿絵つき作品集が好評だったサキの短篇集の第2弾です。風濤社からも2冊ほど〈サキ・コレクション〉が出ていますが、白水社版は原著に従った収録作品であるところがミソでしょうか。この調子だと、そのうち、ほぼ全作品が読めるようになるのかもしれません。

 『奥の部屋』は、難解なゴーストストーリーで知られるエイクマンの怪奇小説集です。怪奇小説の行き着く先というか、何だかよくわからないが怖い、というのがエイクマン作品の特徴です。
 元本が、幻想小説を集めた叢書《魔法の本棚》(国書刊行会)なのですが、あれだけマニアックな叢書から、3冊も文庫化作品が出るとは驚きです。コッパードやウェイクフィールドはともかく、エイクマンが文庫化されるとは。増補作品もあるようなので、元本を持っている人も買いでしょう。

 『ジャック・リッチーのびっくりパレード』は、先ほど亡くなった小鷹信光氏の最後の編著。ジャック・リッチーの未訳作品を中心に編まれた作品集です。これは楽しみですね。

 パーシヴァル・ワイルド『ミステリ・ウィークエンド』は、本格ミステリ長編だそうですが、ちょっと気になります。
 ワイルドの作品って、ユーモアもあり、小説として滋味があるんですよね。『探偵術教えます』とか『検死審問』とか、楽しく読みました。
 『探偵術教えます』の〈P・モーランもの〉短篇も収録されるようです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

早いものでもう12月。いつも本のご紹介ありがとうございます。
リッチーは買いですね。また「魔法の本棚」もっているけど・・・文庫化されると・・・になってしまいます。

今年は、家庭の事情で以前より本が読みにくくなってしまいましたが、
がんばって「読む」つもりです。
来年もよろしくお願いいたします。

【2015/12/20 15:10】 URL | fontanka #- [ 編集]

>fontankaさん
こちらこそ、よろしくお願いいたします。

リッチーは楽しみです。『ミステリマガジン』の特集号で見た限りでは、未訳作品がまだたくさんあるようですが、これからも紹介があるんでしょうか。

ただの文庫化ならスルーするんですが、改訳とか増補とかされてしまうと、やっぱり買ってしまいますね。
【2015/12/20 18:40】 URL | kazuou #- [ 編集]

すっかり年末・・・
これまで、つど拝見してきて、沢山の充実した記事それぞれにコメントしたいことはあったものの、果たせないままに今に至ります・・・

個人的にはジャクスンの「日時計」にはびっくりしました。というのは、この作品、確かキングが「ファイアスターター」辺りの献辞をジャクスンに捧げた際、「くじ」「山荘奇談」「ずっとお城で暮らしてる」と並べて挙げていた作品名で、その故に気になっていたので。
キングの賛辞は必ずしも当てにならないという話もありますが、これは他に挙げている3作が納得の傑作だったこともあり、期待しています。
因みに、先日出た作品集の方は読みましたが、既に紹介済みの「悪の可能性」やコメディ調の子供が主役の話やエッセイが面白かったかなぁというくらいの印象で、全体的には名作の数々にはちょっと及ばないかなぁと・・

エイクマンの増補版は藤沢研究室で予告されていたものですね・・・
(驚きといえば、ちくま文庫からというのも何となく驚きです。まぁちくま文庫には確かホラー漫画なんかもあったので、驚くにはあたらないのかもしれませんが。)
増補作品は「スタァ誕生」というタイトルのようで、他の作品同様内容の予測がつきませんが、やはり女性が主役クラスとなる話の匂いがしますね。放蕩を尽くした生活の成果か、女性の他者との距離感を巡る描写が女性読者の心に引っかかるようなので、増補作品にもそんな面白みが見られるかもと。ファンとしてはもう1篇くらい新規紹介の話が欲しかったところではありますが。
(因みに同じく文庫化されたコッパード、ちょっと気になったので読みました。人間とは、人生とはこんなもの、という印象の作品としか印象をダイジェストしようがない感じの作品で、彼にしか描けない作品としか要約の使用がないというのは何となく分かる気がしました)

リッチーの作品集、小鷹信光氏の最後の編著ですか・・・前のリッチーの作品集での寄ってらっしゃい見てらっしゃい調のまえがきが愉しかったのを思い出します。
「パパライスの船」他、エッセイ・解説の評判は聞いてはいたものの、特に読むことはせずに今に至っているので、個人的に印象深いのはマシスンの「激突!」の編訳およびあとがきでしょうか。個人的にマシスンといえば、「13のショック」とこの作品集、という感じです。

ナイトランド叢書、今期分は買わないかなと思っていたのですが、『幽霊海賊』を書店で目にした時、ソフトカバーで白水uブックスのようなサイズ、厚みもその程度で、もっとごつくて分厚いものを想像していた(よく考えてみれば、ボーダーランド3部作の1冊、『異次元を覗く家』は結構薄かったのだから他の作品もその程度の長さである可能性の方が高かったですね・・ どうしても『ナイトランド』の印象に引きずられてしまっていました)ので、意外性の余り購入してしまいました。
内容もそれなりに面白かったです(もうちょっと牧歌的な内容を想像していたので、乗組員の全てがああなる運命だとまでは予想していませんでした。)
次期は古典ホラーが好きなマニアが対象なのかなというラインナップですね。個人的には購入するかはちょっと微妙な感じですが…

早川のコミックアンソロジーは、自社で出したものが対象と想像されるので、~マガジン掲載の小説なんかかと比べると興味は薄いかなと言う感じ。
そういえば小説のアンソロジーは、海外編の方はSF、ミステリ両方読みましたが、勿論どれも良い作品なのでしょうけれど…大御所の作品を多く集めてあるせいか(特にSF)、意外性は薄く、落ち穂拾い的な印象すら持ってしまいました(一般的には評判は良いようですが)・・・
ミステリの方が作家のバリエーションがあった分(とはいえ、作品集が刊行されたような作家がほとんどでしたが)、より意外な作品・作風に出会えた印象で、(SFも、スターリングの「江戸の華」みたいなものは面白く読みました。クラークなんかは古い分ということか、ストレートでも結構面白かったですが・・・)
むしろ、kazuouさんが紹介しておられるような、作品集が出ることが無いような作家たちの傑作を選んだ方が面白いものが出来たのではという気もしてしまいましたが、大御所の名前がないのはやっぱり売り上げ上厳しいんだろうなと・・・でも、半々にするとか、別に1冊出すとか、やりようはあったのではと・・・

マヌエル・ゴンザレス『ミニチュアの妻』、面白そうですね。買おうと思います。パーシヴァル・ワイルドの名前は気にしたことがなかったのですが、ユーモアと言うと、例えば例えば「魔術師を探せ」とか、M・Z・リューインの作品みたいな感じでしょうか?
ダンセイニは面白いの?と半信半疑ですが、そういえば「二瓶の調味料」が買ったまま積読状態なので、先ずはそこからか・・・

これまでの月の気になる新刊なんかについてもここで触れようかと思っていましたが、ここまでで十分長すぎるのでまたおいおい…(片づけ等が待っています…)
【2015/12/27 12:45】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]

>Greenさん
ジャクスンの『日時計』、本国での評判は高い作品みたいですね。とりあえずは、購入予定です。僕は、オリジナル作品集の方はまだ未読なのですが『悪の可能性』は『エドガー賞全集』に入っていたものですよね。あれは傑作だと思います。

エイクマンは、アンソロジーに入っていた短篇も含めて、毎回じっくり読んでいるはずなのですが、筋がぜんぜん覚えられないという…。もともと「筋」なんかあるのかも微妙ですね。嫌いじゃないんですが。

コッパードは、おそらく厳密にはホラーでもファンタジーでもないんですよね。ジャンル小説的な関心で読むと、あまり興味を惹かれないかもしれません。

小鷹信光さんの評論集は、ハードボイルド関連でも、だいたいミステリ全般や短篇なんかに関する章が混じってるので、そちら目当てで読みました。初心者に対する啓蒙家的な側面もあった人だと思います。

《ナイトランド叢書》、二期は完全に古典ホラー中心ですね。翻訳権の問題もあるんでしょうけど、戦後の作品もちょっと入れてほしいなと思います。
ただ、ファンとしては、ここで買い支えないと、いつ出るかわからないような作品が多いので、応援はしていくつもりです。

ハヤカワ文庫のSF・ミステリアンソロジーに関しては、僕もビッグネームの落ち穂拾い、という印象が強かったです。単行本未収録作家ばかりにすれば、「隠れた傑作」集になるんでしょうけど、やっぱり商売的には難しいんでしょうね。

パーシヴァル・ワイルドのユーモアは、とぼけた感じのユーモアですね。くすりと笑えるような感じ。人物描写がしっかりしているので「お話」として読ませます。

ダンセイニは、「面白い」といっても、面白さの質が独特なので、あまり読んだことのない人には、単純に勧めがたいですね。いわゆる「起承転結」とかを無視した作風なので、これで終わり?みたいな終わり方をする作品も多いです。
《ジョーキンズもの》は、その中でも割と「起承転結」がしっかりしてるので、初めて読むダンセイニとしては、お勧めでしょうか。
【2015/12/27 14:22】 URL | kazuou #- [ 編集]

ミニチュアの妻
図書館に入ってました!日時計とジャック・リッチーの新刊も入りますように。表題作とゾンビの話が一番印象に残ります。マグカップ大になっても、サバイバルや戦闘力は大幅アップ!南くんの恋人みたいな可愛いちびさんではありません。
【2016/01/28 14:01】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]


表題作は、妻が「異物」になっていく過程がリアルですよね。僕はホラーとして読みました。
【2016/01/28 19:45】 URL | kazuou #- [ 編集]

ジャック・リッチーのびっくりパレード
日時計は貸出し中でしたが、こちらは借りる事が出来ました。年代毎に付けられた注釈といい、作者への敬愛に満ちたあとがきといい、往年のままで少しの衰えも感じさせません。最後のインディアンの話を読んで泣いてしまいました。
【2016/02/05 20:37】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]


近所の書店では、小鷹さん追悼として、リッチーの前作品集と一緒に並んでいました。
発売日に購入したのですが、もったいなくて、まだ読んでいません。
ゆっくり読みたいと思います。
【2016/02/06 07:10】 URL | kazuou #- [ 編集]

日時計
日時計、読み応えがありました。街角の書店収載のアルフレッドの方舟を思い出します。唐突に終わりを迎えるのですが、その後どうなったか気になって仕方ありません。丘の屋敷と違って家族の生活が営まれたままで庭園も美しく調えられているのですが、一瞬でも滞在したくない。本好きには耐えられない描写も出てきます。
【2016/02/19 07:54】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]

再レスすみません。
世界の終わりというテーマからメランコリアという映画を思い出します。あの映画の前半のハチャメチャな人間関係と底意地の悪い視線ときたら!ヒロインの姉夫婦の御屋敷が舞台ですしね。ただヒロインの甥が良い子だったのに対し、日時計の孫娘は邪悪です。
【2016/02/19 12:02】 URL | 奈良の亀母 #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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