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448801659612人の蒐集家/ティーショップ (海外文学セレクション)
ゾラン・ジヴコヴィッチ 山田 順子
東京創元社 2015-11-28

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ゾラン・ジヴコヴィッチ『12人の蒐集家/ティーショップ』(山田順子訳 東京創元社)
 セルビアの幻想小説家ジヴコヴィッチの作品集です。

 『12人の蒐集家』は、様々なコレクターたちの奇妙な生態を描いた連作短篇集です。彼らが集めるのは、単なる物にとどまらず、記憶や夢など摩訶不思議なものばかり。それらを集めるコレクターたちもまた、エキセントリックな人物ばかりなのです。コレクションに執着する人間たちの人生が、ブラックユーモアたっぷりに描かれます。

 併録の『ティーショップ』は、メタフィクション的な趣向を持つ物語です。鉄道の待ち時間にティーショップに入った女性がメニューに見つけたのは「物語のお茶」でした。一口お茶を飲むと、目の前のウエイターは物語を語り始めます。その後もお茶を飲むたびに、別の人間が物語の続きを始める…という、魅惑的な物語です。それぞれの物語の中の登場人物が、微妙に関連していたり再登場したりするところも魅力的。

 東欧の作家というと、敬遠されてしまう向きもありそうですが、これは強くオススメしたい一品。それぞれの短篇は短いのですが、そのなかで物語に没入させる手つきは実に鮮やかです。
 作者には「東欧のボルヘス」の異名もあるようですが、無国籍風の人物や舞台、文章の読みやすさなど、個人的に共通点を感じたのは、日本の星新一ですね。



4864911924神さまがぼやく夜 (ヴィレッジブックス)
マイクル・Z・リューイン 田口俊樹
ヴィレッジブックス 2015-01-20

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マイクル・Z・リューイン『神さまがぼやく夜』(田口俊樹訳 ヴィレッジブックス)
 私立探偵小説で知られるリューインの、ユーモア小説です。天界の生活に飽きた「神」が下界に降り立ち、様々な騒動を惹き起こすという、楽しい作品です。
 相手を「神」だとは思っていない人間たちとの会話や、眷属である天使や聖人とのやり取りが笑いをそそります。人間を知り、それに伴い「神」が自分のことも改めて再認識していくという、意外と深いテーマもあったりします。いい感じに肩の力が抜けた良作だと思います。



4150413568黙示〔上〕 (ハヤカワ文庫NV)
サラ・ロッツ 府川 由美恵
早川書房 2015-08-21

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サラ・ロッツ『黙示』(府川由美恵訳 ハヤカワ文庫NV)
 世界各地で、四件の航空機墜落事故がほぼ同時に発生します。乗客だけでなく、墜落現場にいた人も含め多数の犠牲者が出ますが、それぞれの事故現場から3人の子どもだけが生き残っていました。彼らの生存は奇跡だと話題を呼びますが、3人ともが事故前とは人格が変わっていました。家族や遺族の人間は不気味さを感じつつも、事故の後遺症だと考えるようにしていました。
 一方、子どもたちの生存は神の裁きの予兆だと考えるグループが現れます。子どもたちを「黙示録の四騎士」だと考えるグループは、4番目の子どもの捜索を開始しますが…

 インタビューや、本の内容、メールやチャットなど、さまざまな媒体や人の独白を積み重ねるという、ドキュメンタリータッチの作品です。子どもたちの様子やそれを観察する大人たちの違和感をじっくり描きこんでいく重厚な作品です。
 日本が主要な舞台になっており、ネット掲示板など、現代の日本文化が描かれるところも、なかなか興味深く読ませますね。
 後半まで作品のテーマがはっきりせず、それどころか読み終わっても、これがホラーなのかSFなのかがわからないという、曖昧な話ではあるのですが、不気味さは比類がありません。似た雰囲気の作品を探すと、黒沢清監督の映画『回路』あたりでしょうか。
 ものすごく読者を選ぶ作品だとは思いますが、一読の価値はあるかと思います。続編があるそうですが、気になりますね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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