8月の気になる新刊と7月の新刊補遺
発売中 グザヴィエ・フォルヌレ『失われた時』(風濤社 予価3240円)
7月25日刊 『ミステリマガジン 9月号 幻想と怪奇 乱歩輪舞ふたたび/追悼:ルース・レンデル』(早川書房 1296円)
7月27日刊 ウィリアム・ホープ・ホジスン『幽霊海賊』(アトリエサード 予価2376円)
8月2日刊 シェリー・ディクスン・カー『ザ・リッパー 切り裂きジャックの秘密 上・下』(扶桑社ミステリー 予価各1026円)
8月7日刊 ブレイク・クラウチ『ラスト・タウン 神の怒り』(ハヤカワ文庫NV 予価1058円)
8月12日刊 ケヴィン・ウィルソン『地球の中心までトンネルを掘る』(東京創元社 予価1944円)
8月21日刊 ロバート・チャールズ・ウィルスン『楽園炎上』(創元SF文庫 予価1490円)
8月21日刊 エラリイ・クイーン『九尾の猫 新訳版』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1296円)
8月21日刊 早川書房編集部編『海外ミステリ・ハンドブック』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価907円)
8月21日刊 早川書房編集部編『海外SFハンドブック』 (ハヤカワ文庫SF 予価1080円)
8月21日刊 トーマス・スウェターリッチ『明日と明日』(ハヤカワ文庫SF 予価1123円)
8月21日刊 クリストファー・プリースト『双生児 上・下』(ハヤカワ文庫FT 予価各972円)
8月21日刊 サラ・ロッツ『黙示 上・下』(ハヤカワ文庫NV 予価各907円)
8月28日刊 サマセット・モーム『ジゴロとジゴレット モーム傑作選Ⅰ』(新潮社 予価637円)
8月28日刊 『江戸川乱歩妖美劇画館 3巻 白髪鬼/闇の顔』(少年画報社 予価864円)
8月29日刊 マーガレット・ミラー『まるで天使のような』(創元推理文庫 予価1296円)

 突然の刊行予告でびっくりしたのは、グザヴィエ・フォルヌレ『失われた時』とウィリアム・ホープ・ホジスン『幽霊海賊』の2冊です。

 グザヴィエ・フォルヌレ(1809-1884)はフランスの作家。資産家の息子として生まれ、詩や戯曲、小説などを発表しますが、生前は全く評価されませんでした。アンドレ・ブルトンを始めとするシュルレアリストたちによって、死後の再評価が進みました。我が国では、澁澤龍彦がほれ込んだことで有名ですね。澁澤の著書『悪魔のいる文学史』でも、一章がフォルヌレに割かれています。
 邦訳は『草叢のダイヤモンド』『幻燈だよ! 摩訶不思議!』『白痴と《彼の》竪琴』など、数篇しかないと思いますが、黒いユーモアに満ちた、奇想天外な幻想短篇の書き手です。

 一方、ウィリアム・ホープ・ホジスン『幽霊海賊』は、刊行が予告されていた〈ナイトランド叢書〉の第一弾。
 『幽霊海賊』は、<ボーダーランド三部作>と呼ばれる三作のうちの一作。ホジスンお得意の海洋綺譚のようなので、期待が膨らみます。〈ナイトランド叢書〉は、続刊も楽しみな作品が続いているので、応援していきたいと思います。

 『ミステリマガジン』の最新号は、<幻想と怪奇>特集です。隔月刊化して、<幻想と怪奇>はどうなるんだろうと心配していましたが、続けていくようなので安心しました。内容は前年度に続き、乱歩絡みのようです。

 ケヴィン・ウィルソン『地球の中心までトンネルを掘る』は、シャーリイ・ジャクスン賞受賞作の短篇集だそうで、何やら異色短篇の香りがしますね。楽しみです。

 早川書房からは、『海外ミステリ・ハンドブック』『海外SFハンドブック』が同時に刊行です。90年代初頭に出ていた『ミステリ・ハンドブック』『SFハンドブック』の新版ということになるのでしょうか。

2015年8月1日追記

4883752097失われた者たちの谷〜ハワード怪奇傑作集 (ナイトランド叢書)
ロバート・E・ハワード 中村 融
書苑新社 2015-08-07

by G-Tools

8月7日刊 ロバート・E・ハワード『失われた者たちの谷 ハワード怪奇傑作集』(アトリエサード 予価2484円)

 ホジスン『幽霊海賊』が発売されたばかりなのですが、時間を置かず、〈ナイトランド叢書〉 第2弾が登場です。ハワード傑作集『失われた者たちの谷 ハワード怪奇傑作集』です。収録作品は以下のようなもの。

『鳩は地獄から来る』
『トム・モリノーの霊魂』
『失われた者たちの谷』
『黒い海岸の住民』
『墓所の怪事件』
『暗黒の男』
『バーバラ・アレンへの愛ゆえに』
『影の王国』

紹介ページはこちらになります。
このペースだと、ホジスン三部作も意外と早く刊行されそうですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
ナイトランド叢書!
今月の新刊 楽しみに拝読しておりましたら
「ナイトランド叢書」の名がッ!!!
自分を落ち着かせつつ アトリエサードのホームページで確認し
思わずガッツのこぶしp(^O^)q

ついに始動ですね。
寂しい思いもしましたが 待った甲斐がありました。
このジャンルは読者の絶対数が少ないのが心配ですが
アトリエサードさんに頑張ってほしい❤

特にトライデント・ハウスさんで頓挫してしまった作品群の刊行を期待しています。

いつも発信 ありがとうございます。
【2015/07/20 04:03】 URL | みん #- [ 編集]

ボーダーランドと本の価格
フォルヌレ、どんな作家が面白く読める人ならOKそうでしょうね? (作品の一部しか知らない状態でこんなこと聞かれても困るかもしれませんが…)。例えばルヴェルとかは毛色が違いそうですし…
ただ、フランスものはブラックユーモアと相性がいいような気はしているので気持ちはちょっと動いています
(と言いつつも、実際はあまり読んでいないので単なるイメージだけですが…。トポールくらい?
ヴィアンは結構読んでいて好きな作品も多いですが、あれはブラックユーモアとはというかそもそもユーモアとは何か違う感じがしますし…生真面目というか(青春もの?)、笑えるというより違和感ばかり残るというか、悪ふざけをしているけれど笑えないというか…
私的感覚ではウォーの「囁きの霊園」くらいがこれぞブラックユーモアという感じなのですが)

ボーダーランド三部作といえば、昔々、「ナイトランド」が分厚いハードカバーで出て、三省堂だったかで籠に平積みしてあって、あれをどれだけの人が買うんだろうと心配になった記憶がありますが、他の作品もあんな感じで長大なんでしょうか…?
私はホジスンの「異次元を覗く家」や「夜の声」などはそれなりに好きですが、「異次元を覗く家」みたいな感じであれだけの長さのものを読むのは…という感じで「ナイトランド」は購入を検討すらしませんでしたが、もし読まれていたらご感想など……

シャーリイ・ジャクスン賞受賞作というとどんな感じかと思ったのですが、出版社の紹介文を見ると、どちらかといえばジェームズ・サーバーを連想するような(といっても笑える話というよりはシリアスそうですが)、ジャクスンであればニューヨーカー寄稿者としてのジャクスンを思わせる作品という印象ですね。

ミラー・ファンとしては傑作「まるで天使のような」が復刊されるのは嬉しいのですが、あの長さで文庫で1300近くですか… クイーンの「九尾の猫」は分厚いのを知っているので(しかし未読)、今はそのくらいの価格かなぁと思うのですが…
本の売れ行きがはかばかしくないらしい現在、高くなっていくのはまぁしょうがないかとは思いつつ…
(因みに「悪意の糸」は個人的にミラー節を堪能しました。筋立てそのものはありがちな感じもする内容でしたが、何でもない始まりのように見えて、そこが実際に事件の開始点だったりする辺りなど、「らしい」作品だったかと)

「~ハンドブック」は、先だってオールタイムベストの選び直しをしていた記憶があるので、それを紹介する内容かとは思いますが、昔のベストをみている人間には、新しく選ばれた作品と、抜け落ちた作品、あとはベスト以外のコラムの充実度が、読むとすれば注目点でしょうかね…
それにしても、ミステリマガジンの新刊紹介コラムは、注目作品を確か2-3点各1ページで紹介し、その他はまとめて一段の半分以下で紹介、といった感じになりましたが、個人的にはこれによって、どちらを読んでも一向にわくわくしなく(面白そうと感じなく)なってしまい、参考に出来なくなってしまいました。
狙いとしては、もともとの長さが中途半端なので推す作品はもっと長く、それ以外はもっと簡潔にという感じでめりはりをつけたのでしょうが・・・
個人的に、本探しの際の参考書が一つ減った感じです。

そういえば、グラビンスキがまだ刊行日も決まっていない感じですが、さすがに大半は訳出済みのはずでもあり、まぁいつかは出ますよね…?「ブリッジ」なんかはさすがにもう無理そうな気がしてきましたが…
【2015/07/20 07:39】 URL | Green #mQop/nM. [ 編集]

>みんさん
ナイトランド叢書、もっと準備期間があるのかと思ってました。ホジスンは大好きな作家なので、うれしい限りです。デニス・エチスンとか、旧ラインナップも復活させてほしいですね。
【2015/07/20 08:21】 URL | kazuou #- [ 編集]

>Greenさん
 うーん、短篇を数篇しか読んでないので何とも言えませんが、アンリ・トロワイヤ(の短篇)とかレオノーラ・カリントンとか、あのあたりと近い感触でしょうか。フランスものは、幻想・怪奇小説でもユーモアがあって楽しいものが多いですよね。
『囁きの霊園』は、本当にブラック過ぎて、僕はきつかったです…。

 『ナイトランド』は、著者畢生の大作なんですが、壮大な失敗作だという評価もあるみたいです。翻訳されているものも、実は縮約版で、完全版はもっとずっと長いとか。
 僕は、月刊ペン社の《妖精文庫》版で読んでるのですが、個人的にはすごく面白かったです。世界観がすごく魅力的で、太陽が死んだ超未来、異次元からの巨大な怪物が進入しつつある世界で、生き残った人類が巨大な建造物の中で暮らしている、という設定です
 その世界で恋人を探しに行く主人公の冒険行が描かれるのですが、著者が描きたいのが、どうやら「運命の恋」らしくて、そのあたりが怪奇小説としては不純点だと捉えられてるようですね。

 過去の傑作が復刊されるのは嬉しいですが、文庫でも軒並み千円越えになってますね。若い読者が気軽に手に取れる、という文庫本の良さがなくなりつつある気がします。

 もともと『ミステリマガジン』の新刊欄って、いまいちな印象がありますね。やっぱり十分に紹介できるスペースが取れていないというか。あの欄を読んで、読みたくなった本があった覚えがあんまりないので。風間賢二さんとか大森望さんとかが、1ページ使って紹介している欄の方がずっと参考になります。

 グラビンスキの発売日は、7月27日になったようです。『ブリッジ』は予定からも消えてしまっているみたいですが…。
【2015/07/20 08:56】 URL | kazuou #- [ 編集]


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Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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