『ナイトランド・クォータリーvol.01 吸血鬼変奏曲』感想など
488375202Xナイトランド・クォータリーvol.01 吸血鬼変奏曲
アトリエサード
書苑新社 2015-05-12

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 昨年末に、創刊準備号が出てはいましたが、今回、本格的に復活することになったホラー専門誌『ナイトランド』。一号である『ナイトランド・クォータリーvol.01 吸血鬼変奏曲』が刊行されました。

 まずは全体の感想から。
 翻訳短篇の数は8篇、日本作家の創作が3篇、あとはコラムやエッセイといった構成になっています。以前の本誌に比べると、翻訳の数を増やし、コラム・エッセイを減らしたような印象を受けます。
 掲載されているコラムやエッセイも、ほとんど特集内容である《吸血鬼》に関連したものになっています。以前のような連載コラムがなくなっているのが残念ですね。樋口ヒロユキ氏によるエッセイ(評論?)『魔の図像学(1)』は、「1」となっているので、続き物なのでしょうか。今回は吸血鬼特集に合わせて、ムンクの《吸血鬼》について語っています。

 翻訳作品の質はかなり高いと思います。E・F・ベンスンの古典的名作『塔の中の部屋』の新訳を初め、使い古された吸血鬼テーマを扱っていても、面白く読める作品を集めています。
 西部劇と吸血鬼を融合させたアクションもの『復讐の赤い斧』(エドワード・M・アーダラック)、破滅した世界で君臨する謎の吸血鬼を描く『長い冬の来訪者』(ウィリアム・ミークル)、死を間近にした少女と吸血鬼の女性との友情を描くハートフルな『エイミーとジーナ』(セシル・カステルッチ)などが面白く読めます。
 巻末の作品、スティーヴ・ラスニック・テム『家族の肖像』は、なんと衰弱する吸血鬼の家族を救おうとする父親を描く、異色の吸血鬼介護小説で驚きました。
 日本作品では、耽美的な『In the gathering dusk』(石神茉莉)が力作ですね。

 以前からの『ナイトランド』の路線を忠実に受け継いでいて、怪奇小説ファンとしては安心して読める、非常に上質な仕上がりになっていると思います。唯一、要望を挙げさせてもらうと、以前連載されていたようなコラムを、もう少し増やしていただきたいな、というところでしょうか。

 さて、噂になっていた《ナイトランド叢書》復活の件ですが、新たに第1期シリーズ刊行の予告がなされていました。内容は以下のようなもの。

ロバート・E・ハワード『失われた者たちの谷 ハワード怪奇傑作集』(中村融訳)
ブラム・ストーカー『七つ星の宝石』(森沢くみこ訳)
アリス&・クロード・アスキュー『心霊探偵エイルマー・ヴァンス』(田村美佐子訳)
ウィリアム・ホープ・ホジスン『<グレン・キャリグ号>のボート』(野村芳夫訳)
ウィリアム・ホープ・ホジスン『異次元を覗く家』(荒俣宏訳)
ウィリアム・ホープ・ホジスン『幽霊海賊』(夏来健次訳)

 昨年中止になった企画の中からは、ハワード傑作集のみが採用されているようです。ストーカーの作品は結構有名な古典的名作で、たしか《幻想文学大系》だったか《ドラキュラ叢書》あたりでも刊行候補に挙がっていました。
 アリス&・クロード・アスキューの名前は僕も初耳なのですが、タイトル通り心霊探偵もののようです。ブラックウッドの《ジョン・サイレンス》とか、あのあたりの作風なんでしょうか。
 一番うれしいのは、ホジスンの《ボーダーランド三部作》の全訳刊行です。『異次元を覗く家』は再刊のようですが、他の2作は本邦初訳! まさか翻訳が出るとは、感無量です。
 とりあえず、第1期は、割と知名度のある作家の未訳作品を揃えてきた…といった感じでしょうか。それでも、これ全部出すのはかなり冒険だと思いますが、以前の企画のラインナップよりは、まだ一般向けと言っていいと思います。

 以下は余談です。
 商業出版枠での刊行になったので、ネット書店で購入しようと思っていたのですが、発売日(5/12)から、ネット書店がどこも軒並み取扱い未定になっていました。取扱いになっているAmazonでも、刊行予定日からずっと在庫切れの表示になっています。
 結局、大手書店(ジュンク堂)で購入しました。ネットで購入するなら、版元のアトリエサード(http://athird.cart.fc2.com/)から直接注文するのが、今のところ確実なようですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント

あれ、出てましたか。ジュンク堂に走らなければ。
予告どおり刊行されたことを、まずは慶賀すべきでしょうか(笑)
叢書の方も、最悪でもハワードは発刊されるでしょうから、楽しみです。
【2015/05/17 09:49】 URL | 迷跡 #- [ 編集]

>迷跡さん
おおむね満足できる仕上がりでした。

本誌がまだ軌道に乗る前に、「叢書」刊行予告を出してしまっても大丈夫なのかと心配になりますが、ラインナップは魅力的ですね。とりあえず、ハワード一冊だけで打ち切りにならないことを祈ります。
シリーズが好評だったら、以前の企画にもあった未紹介作家の作品集なども出すのでしょうか。
【2015/05/17 13:00】 URL | kazuou #- [ 編集]


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男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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