明かしてはいけない秘密  埋もれた短編発掘その2
 人には誰でも秘密があるもの。いくら新婚ほやほやの妻に対しても、明かしてはいけない秘密もあるのです。今回は、そんな夫婦の間の秘密を描いた作品、ブレンダン・ドゥボワ『夜が冷たさをます時』(黒原敏行訳 早川書房 ミステリマガジン1989年3月号所収)です。
 大手新聞社の記者であるルイス・キャラハンは、デザイナーの美しい妻アニーと結婚し、順風満帆の新婚生活を始めたばかりでした。ボストン郊外に構えたアパートで、二人はふと何気ないゲームを思いつきます。それは、家族や友人にも隠していた秘密を打ち明けあおうという、〈告白ゲーム〉でした。子どものころの何気ない罪の告白などで、二人の絆はより強まったかのようでした。しかしアニーがふと洩らした言葉にルイスは緊張します。ルイスの母親からアニーが聞いたという秘密は、高校生のときに、通信簿を偽造したということでした。
 高校生のルイスは、将来に対して貪欲な野心家でした。しかし苦手な代数で、ひどい成績をとってしまったルイスは、親にばれるのを恐れ、通信簿を偽造することを思いつきます。深夜の学校に忍び込んだルイスはうまく偽造を成し遂げますが、ふと窓の外から聞こえる声に驚きます。それは用務員のフレアティでした。フレアティだけではありません。物盗りと思しい二人の若い男がフレアティにからんでいたのです。二人組は、フレアティを殴って立ち去ります。動かなくなったフレアティを見捨てて、ルイスは慌てて逃げ帰ります。フレアティは死に、その罪の意識は今でもルイスの胸をさいなんでいるのです。
 ルイスはこのことをアニーに打ち明けるべきかどうか、思い悩みます。

 「アニーの目には、愛情と気づかいがあった。その目は、彼女がすべてを知っていると信じている男に対して、向けられているのだ。でも、僕が、血を流して死にかけている人間をまえにして、通信簿の成績のためにただじっと見ていたと知ったら、妻はなんと思うだろう?」

 ルイスはついに決断します。ルイスはアニーに秘密を打ち明けたのか、それとも…。話して楽になりたい、しかし妻の愛情が失われることには耐えられない、ルイスの葛藤が強く伝わってきます。タイトル通り、夜の空気が冷たさをます時が訪れるのです。いくら親密な間柄でも、秘密を全て打ち明けることがいいことなのかどうか、著者の問いかけは、少しばかり読者に考えさせる時間を与えてくれるでしょう。

テーマ:感想文 - ジャンル:小説・文学

この記事に対するコメント
こんばんは
ランキングサイト見てたら記事が出ていたので、見にきました。BLOOG-RANKINGってゆうサイトでした。yahooで検索すれば出てくると思います(^^)また見にきますね~!
【2006/02/11 12:09】 URL | サリナ #- [ 編集]

どうも
コメントありがとうございます。ご趣味にあうかどうかわかりませんが、よろしく。
【2006/02/11 20:41】 URL | kazuou #- [ 編集]


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怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
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